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リンパ節腫脹のアプローチその①(よくある紹介例)

リンパ節腫脹も比較的よくある紹介の復習をしてみました。

【模擬症例①】
27歳男性。来院の2日前から38度台の発熱と咽頭痛、頸部の違和感を自覚するようになった。近くのA医院を受診して風邪の診断で解熱鎮痛薬と抗生物質の投与を受けた。COVID-19抗原検査は陰性であった。

その後、症状は改善せず、両側頚部の腫脹が持続した。初診から1週間後に同じ医院を受診した。血液検査を受け、炎症の数字が上がっていると説明を受けた。開業医では原因が分からないために大きな病院を受診することを勧められ、総合病院を受診した。


【模擬症例②】
69歳女性。約1カ月前から37度~38度の発熱が出たり、改善したりを繰り返している。倦怠感もあり、最近は食欲も低下して夫や娘に痩せてきたことを指摘された。体重は3カ月前の健康診断で56㎏あったが、現在は52㎏になっている。近所の内科を受診して、頸部・腋窩のリンパ節腫脹と肝腫大を指摘された。また血液検査で肝機能障害とLDHの上昇、貧血も指摘され、近所の総合病院の受診を勧めれた。


★診療のポイント
悪性腫瘍を疑うべき患者背景を理解しよう
代表的鑑別(よくある疾患、見逃したくない疾患)を理解しよう
リンパ節生検・針生検の意義、適応を理解しよう

●悪性腫瘍のリスク因子
①40歳以上
②6週間以上のリンパ節腫脹
③全身(2カ所以上のリンパ節腫脹)
④男性
⑤12週間経過しても元の状態に改善しない
⑥鎖骨上窩リンパ節腫脹
⑦全身症状(発熱、盗汗、体重減少、肝脾腫)
⑧白人

●リンパ節腫脹の代表的な鑑別
①悪性腫瘍
②感染症
③自己免疫性疾患
④その他
⑤医原性

Am Fam Physician. 2016;94(11):896-903より

●リンパ節生検について
昨今ではPET-CTを事前に評価できる施設が増えてきたため、これを参考にすることが多くなった。FDG-PET検査でSUV(standardized uptake value)maxのリンパ節生検が良いかもしれない。

部位だけの優先順位は鎖骨上窩>頚部>滑車>腋窩>鼠経リンパ節になる。中には、腹腔内や縦郭・肺門リンパ節以外は有意なリンパ節腫脹がないこともある。

リンパ節生検の提出検査項目、標本の作製は各専門科と病理診断部との打ち合わせが必要になる。

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