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整枝剪定を早く終えるためにはすべきこととは(4)~剪定の型を覚えよう①「頂芽優勢」~

植物生理という思考の型について、前回までの記事でその必要性を伝えてきました。
植物生理の詳細については先の記事で紹介した教科書や動画などに譲り、今回はその「思考の型」に基づいて編み出された「技術の型」、その中でも特に標題に沿って「剪定の型」を紹介します。

「技術(剪定)の型」の考え方

剪定の型についても植物生理からのアプローチで解説はできますが、どうしても難しくなりがちです。
植物の挙動全てを詳細に解説しようとしたら、生化学や遺伝子のレベルまで深掘りせねばならず、それはもう生産者ではなく研究者の仕事です。
現場の生産者が知っておくべきは、ちょっと踏み込んだ理屈の部分までで大丈夫です。

車の運転で例えるなら一般のドライバーは、
・アクセルを足で踏んだら速度が上がる、離せば落ちる
・ブレーキを踏んでも速度は落ちる
・速度を上げるor落とすときはどういうタイミングかシチュエーションか
といった教習所で習う知識と技術だけでも、普通に運転するなら十分ですよね。
いわば「車の運転の知識と技術のパッケージ」=「運転の型」です。

シリンダーヘッドの排気弁と吸気弁の開閉とか、ベーパーロック現象やフェード現象がどうとか、そこで起きている諸々の化学変化等の知識は、開発者とか整備士とかレーサー等のその道のプロが知っていればいいことで、移動手段として運転している人には特に必要ありません。

もちろん深い部分まで知っていたほうが視野が広がるとは思います。
ただ、よほど好きでもない限り、最初から深堀りすると理解が追いきません。
さらに強要でもされてみようものなら、逆に興味・関心を失ってしまいます。


まずはざっくりと「○○をすれば××」になるという型で覚えていいと思いますさ。
「芽の位置を高くすれば、新梢が勢いよく伸びる」みたいな。
その型の名前を「頂芽優勢」という、でいいと思います。
背景にあるオーキシンうんぬんの話はひとまず置いておきましょう。
重ねてですが、理解を深めるために大切な学びではありますが、とりあえずはスルーで大丈夫です。
とにかく「伸ばしたい枝は高くする」、先ず最初はこれで大丈夫です。

その型のとおりにナシが生長したら、背景にある論理(植物生理)を学んでみてもいいでしょう。
そのほうがストンと腹落ちする人もいると思います。

また車の話になりますが、普通に運転ができるようになったら、もっと技術を上げたいと思ったり、車自体のシステムをより知りたいと考える人もあらわれると思います。
先ずは格好(型)からでも全然大丈夫でしょう。
しかし我々生産者は農作物の生産を生業にしているプロです。

農作物の生産でいうと、普通に運転をしているのが家庭菜園やガーデニングなどアマチュア、いわゆる趣味の園芸のレベルです。
残念ながら表面的な知識と行動だけでは、いずれ限界が来ます。
トラブルが起きた際の対応も難しいです。
本質的な問題を論理的に追求しなければいけません。

自動車業を生業にしているプロがそうであるように、我々農業者もお金を儲けて、自分や家族が食べていくためには、より深い知識と理解が必要になってくるのです。
剪定の型の背景にはそれを裏打ちする植物生理の型(理論)があります。
実践と理論の両輪を回すことで血肉になります。
どちらが先かは人によると思います。
前回までの記事が「しゃらくせえ」と思った人は、実践から入るタイプなのかもしれません。
実際やってみて効果を感じた上で理論を学んでみてください。
きっと捉え方が変わってくるはずです。

今回以降の記事では、超端的な技術の型を何個か紹介します。
型も色々ありますが、先ずは「骨格枝づくり」に使える型です。
主枝を中心に書いていますが、亜主枝管理も準じます。
とりあえずこれを実践すればまあまあ格好はつきますし、生育も理論に伴うでしょう。
重ねてですが、血肉にするためには追っての勉強と実践をおこなうことを忘れずにお願いします。

「頂芽優勢」を生かす

というわけで、直ぐに実践できて効果が出やすい技術の型を幾つか紹介しましょう。
まずは頂芽優勢
「地面から高い位置にある芽は低い位置にある芽より優先され勢いよく伸びて育つ」というルールと思ってください。
勢いよくとは長く太くということです。
理由はわからずとも「枝の先端は高くしろ」と言われている諸兄は多いのではないでしょうか。
高くすることで養水分が多く引き上げられる(流れ込む)ためで、植物ホルモンが関係しているのですが、そのあたりは書籍等に任せます。
今回はとにかく「高い位置にある芽はよく伸びる」「養水分を引き上げる」と覚えてください。
こういうものだと覚えてください。
それが型です。

樹体を作る上では、まず骨格の主枝を伸ばしていきますよね。
だから主枝の先端を樹上で一番高く配置(誘引)してください。
主枝が棚面にあるならば、棚から40cm以上が目安です。

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亜主枝や側枝や予備枝の先端はそれより低くしてください(40cm未満)。
反対に言えば、強くしたくない枝は先端を低くすればいいのです。

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基本的に主幹から近い(根から近い)基部付近の枝は強くなりがちです。
基部で強い枝がたくさん発生すると、養水分がそちらに行ってしまって、先端に行き届かなくなる場合があります。
そうならないように、基部の枝たちは高さを取らずに、発生位置からなるべく水平に誘引してやりましょう。
主枝先端方面は高く、基部方面は低く。
こうして各枝の強弱をつけていきます。
(もちろん他にも強弱をつける方法はありますが、複雑になるのでここでは割愛します)

先端を勢いよく伸ばしたい場合が先端を高く、基部方面は低く。
競合する他の枝の頂芽優勢を抑え、伸ばしたい部分の頂芽優勢を際立たせるのです。

いかがでしたでしょうか。
次回は側枝の切り返しの型について解説したいと思います。
どうぞお楽しみに。

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