後遺症が残った過失10の交通事故に遭った話⑥ 「くそぅ、訴えてやる!」と悪役みたいなセリフを吐きたくなった現場検証

こんばんは。見てくださった方、ありがとうございます。

先日「世界ふしぎ発見!」がレギュラー放送最終回を迎えましたね。
実は私、海外旅行中にまさに番組ロケ中だった草野仁氏に会って、一緒に写真を撮ってもらったことがあるんです。とても丁寧でムキムキでいい方でした。ムキムキでした。
この件については運が良かったので自慢させてください。へへへ。
番組は毎週土曜ではなくなってしまったけど、これからも番組も草野さんも応援しています。
この場をお借りしちゃってすみません。ありがとうございました。

それでは、前回の続きです。
入院を終えて、
訴訟を本格的に考え出した警察での一日を主にお送りしたいと思います。

全体的に悶々としているだけの回なので、とばしていただいても大丈夫です。
訴訟関係の詳しいネタは出てきます。


私は2か月の入院生活を終え、その年では卒業できなくなった専門学校への手続きなど色々あったので、
また事故に遭った県のアパートに戻ってきました。

アパート近くで通える整形外科と眼科を探し、
来年分の学費をどうするかを加害車の保険会社と話し合い、
あわよくば訴訟のための弁護士を見つけ、
警察に出頭ならぬ供述をとられに向かう、
という病み上がりの自分を鞭打つ大量のタスクが課せられていました。

しかもこのすべてが今後の自分の人生を左右しそうです。
誰かを頼るとプレッシャーを感じさせてしまいそうなので、
こういう嫌なことは孤独に頑張ることにしました。

とりあえずそれ以外で気楽な専門学校へのあいさつと相談と、
車に跳ねられたから任期満了を直前に辞めた元バイト先へのあいさつを問題なく終えました。

バイト先では、
バイト仲間が私の事故の数日後、バイト中に眼に枝が刺さり失明するかどうかの大けがをして入院中と聞き、びっくりしたと同時に、
『事故に遭わずにバイトを続けていたらその怪我をしていたのは私だったかもなぁ。なんだか申し訳ないような。むしろこのバイト先が眼の神に恨まれているのだろうか?』
と、とんでもなく失礼なことを、岡本太郎が手に書いた眼の写真を思い出しながら思いました。
(タローマン、面白かったです。)
眼の怪我仲間のバイト仲間は、夏のバイト中、熱中症で死にそうになるみんなにコンビニとかの冷蔵庫にあるあのかき氷(袋)を配ってくれる、優しくて頼りになる人でした。
彼は無事に搬送先の病院で眼科の先生に出会えたようです。心配は尽きないものの、それだけは安心しました。

次に、やることリストの中ではまだ頑張れそうな、訴訟のための弁護士を探し始めました。
ネットで探していて一番わかりやすく経験豊富そうだった他県の弁護士事務所に連絡すると、すぐ返信を下さったので後日相談に向かいました。

この事務所名がカタカナで、意味は当初イタリア語の「乾杯!」だと思っていましたが、
今調べたらフランス語の「救済」という意味のある挨拶言葉でした。
ちょっと軽い名前だなとずっと思っていました、弁護士さんに失礼でした。
助けてもらえそうなありがたい名前のままに、
私は金銭的にも精神的にもこの事務所のみなさんに一生を左右するレベルの救済を受けました。

弁護士さんから、ほぼ間違いなく後遺障害等級が発行される怪我であり、過失割合は自分0:相手100か多少妥協して少し自分にも過失があるくらい、通常なら何が補償されて何が補償されないか、などを詳しく説明して頂きました。
私も弁護士さん方も、かなり私に不利な条件を出してきたら示談もしくは訴訟を考えましょう、と話し合い、その場は終わりました。
この時点ではまだ弁護士さんと契約は結ばず、様子見のままでした。

そして最後に弁護士さんは、
「警察調書はかなり重要です。「警察調書は正しい」というスタンスで訴訟は進むことが多いので、警察での発言、特に調書の内容はしっかり、嘘のないよう気を付けてください。
そして加害者がどう言っていたとしても、警察が何を促してきたとしても、自分の意見を貫いてください。おかしいと思ったら絶対に調書を認めてはいけません。」
とアドバイスをくれました。

弁護士事務所の皆様はとても人柄もよく紳士淑女で、
私はとても心強くありがたく、前向きに頑張れそうな気になりました。

残るは嫌なことだけです。
次は、弁護士さんから聞いたことを覚えているうちに警察に行くことにしました。
弁護士さんの言を聞く限り、事故直後を警察が見ておらず加害者のみから話を聞いている私のような状況だと、この時点で警察が加害者に肩入れしている場合が多いようです。かなり難敵そうです。

事故現場がアパートから遠いので事故担当警察署も遠く、
自転車なら1時間以上、電車とバスを駆使しても1時間、という面倒すぎる距離でした。
ちなみに、「眼をぐるぐるする」という形成外科の医師イチオシの治療案でも一切改善しなかった眼は、結局、眼を上やら下やらにちょっと向けると世界が2重に見える魔法がかかったままでした。
(言い忘れていましたが、ギアス(ちまなこ)は入院後1か月程度で消えました。)
『1時間も自転車に乗ったらまた事故に遭いそう』と思ったので公共交通を利用し、迷いながら警察署の受付に疲弊した状態でたどり着きました。

案の定というか、警察から事故現場の想定状況を聞く限り、『私が自転車で車に飛び込んだ』と思っている様子です。

私は嘘をつかないように気を付けながら、2か月前のことを思い出しつつ状況を話しました。
警察はやたら、
「加害者の方は、~と言っていました。あなたが言っているのは間違いなく本当ですか?」
と、仕事がら仕方ないのかも知れませんが、不愉快な返しをしてきます。
徐々にこの担当の中肉中背(確か)の警察官が「喪黒福造」に見えてきました。

加害者は、警察には自分に有利そうな話しかしていません。
お見舞いか何かで直接会って話した時と言っていることが違います。

加害者は警察に、
「自転車に乗った人が目の前に飛び出してきた。びっくりした。急で避けられなかった。」
「すぐに救助に向かった。」
と話しているようでした。

加害者が私に話したのは、
「いろいろあって疲れていた。ぼーっとして前をちゃんと見ていなかった。気づいたら当たっていた。そのあとびっくりしてしばらく動けなかった。すみません。」
的なことです。
私もその時は、
『まぁ人生に一度はそういう時もあるかもしれないし、許せないこともない、かもしれないですねぇ。しかし!その一度が人を殺しかけることもある。』
と古畑任三郎口調で思いましたが、この仕打ちです。
ひょっとして脳内で古畑任三郎化していたことがバレていて、ふざけた私に腹が立ったのでしょうか。
 
話を戻すと、
加害者の談は、
ぼーっとして前を見ていなかったが事故時に我に返り、急に自転車の私が目の前に登場したような気分になっている、という意味ではどちらも間違っていません。が、
言葉尻を言い換えてくれたおかげで私は目の前の警察に”飛び出し魔”に認定されかけています。

この加害者は保険会社にも、警察に言ったのと同じことを言ったんでしょう。だから私は結構最初から保険会社のSに「当たり屋」扱いされていたわけです。
この時はさすがに『見ておれ!訴えてやる!!』と思いました。

そして現場検証に連れ出されました。
現場に行くのは恐怖でしかないですが、ありがたいことに、猛烈に腹が立っていたのが勝ちました。

警察は現場でもしっかり加害者の肩を持っています。
私が「横断歩道上で加害車を向こうの交差点付近に見かけてから、事故に遭うまでは2~3秒くらいだと思います。」と言ったら、
細い方の警官が「いや、そんなに速くないでしょう。そしたら時速45キロくらい出てますよ?ここの制限は30キロですから。」と、
制限速度を理由に私の意見を却下しようとしてきます。「加害者は30キロも出ていなかった、としていますよ」と。
『いやいや、ここが制限速度30キロだからそういう言い訳してるんでしょうよ。だって45キロって言ったら免停になるかもしれないじゃないですか。』と加害者にご立腹中の私は思いました。

私はずっと気になっていたことを聞きました。「加害者は私を撥ねるまでそのままの勢いでブレーキも踏まなかったと思うのですが、ブレーキ痕は残っていましたか?」と。
警察は返しました。「ブレーキ痕はありませんでした。随分経ってから現地を確認したのでブレーキ痕が残っていたけど消えただけかもしれませんし、ブレーキはかけたでしょう。最近の車だと自動ブレーキが発動すると痕ものこりませんよ。」
私はその言葉が単純に気になりました。
「ブレーキがかかって30キロ以下になった状態で衝突したということですか?それなら交差点からここまでもっと速度は出ていたのでは。加害者の車は自動ブレーキがが搭載されていたんですか?」
と尋ねました。
その細い警察は答えました。
「わかりません。もう「人を撥ねたのがショックでこんな車に乗りたくないから廃車にする」と言って廃車になっているので詳しくはわかりません。」と。
『そんなわけあるかいっ!購入履歴とか調べればいくらでもわかるだろ!』と内心思いましたが、
なんだか、私に警察が反抗し、私も反論する、というだけの無駄な応酬となってきたのでもう会話をやめようと思いました。

そして、加害者が廃車にした言い分にも気持ちが引っ掛かりました。彼女が例えばハイエースに乗っていたら大丈夫だったのでしょうか。いや、それだと私は絶対死んでいます。
加害者の思想は若干スピリチュアルです。
むしろあの軽くらいの車だったから“被害者大けがの事故”ですんだ可能性すらあります。
「僕(私)はまだ走りたい・・・」と思いながら潰されていく車を想像して泣きそうになりました。私は想像力が豊かなのです。
できれば部品だけでも誰かに乗り継いでもらって、今度の所有者のところでは幸せな人生を送ってもらいたいところです。
私からすると車があまりにも可哀そうなので、車の霊に「車に乗ると静電気で髪がぼさぼさになる呪い」でもかけられてしまえ!と願いました。そう、私もスピリチュアルです。

そしてほんの少し警察に対して思いました。
『それ、加害者にとって都合が悪い痕跡が残っていたから、警察に調べられて「調書で聞いた内容と一致しませんね」と言われる前に証拠隠滅したんじゃないの』と。

すみません、まだ脱線しました。

そういえば弁護士さんが「警察は調書の書き直しを嫌がる傾向があります」と言われていたのを思い出しました。
とりあえず加害者側の意見のみで書き上げた調書を私の意見を入れて書き換えるのが面倒で、とりあえず加害者の肩を持っているのかもしれません。


そして、喪黒福造に見えてしまっている方の警察が言いました。
「まぁ、青信号が短い向こうの交差点から慌ててこちらの道に入ってきたとして、右折侵入なのでスピードも出やすいですし、あなたも結構な距離跳ね飛ばされてますから、スピードはかなり出ていたでしょう。
あなたを視認してブレーキを踏んだと同時くらいにあなたがぶつかって、ボンネットに乗り上げて、ブレーキが一番効いたあたりで反動で振り落とされた、というのが流れとしては考えられますがね。
ここは渋滞時の抜け道として利用されていてスピードを出す車も多いですし。事故多いんだよなぁ。」

警察はそこが落としどころだと思ったのでしょう。
しかも、このマシンガントークは市民のための総合病院に来た人だな、と今さら私は気付きました。
私の指差し写真を撮って現場は終了し、
我々は署に戻って調書を仕上げる作業に入りました。

調書では、記憶にある部分以外は明言しないことにしようと頑張りました。
結局のところ調書は加害者が言ったことからぼんやり修正した内容に仕上がりました。

ドライブレコーダーのある現代ではことはもっと単純明快なのでしょう。いいことです。
記憶を正しく保つのは難しいから「絶対」は言いきれないものです。
この時、警察の方が直後に現場や事故車を調べたり目撃談を集めたりしてくれてたらなぁ、と正直思います。
ほぼ同時刻に近くで起きていた死亡事故の方が優先されていたんでしょう。警察官も人手不足なので仕方ないことです。

私に話を聞く前にすでに警察の中で違和感のない満足な仕上がりになってしまっていた調書です。
調書を読み上げ確認している際も、PC作業を任された方の細い警察官は合間合間の修正に不満げです。
『俺が完璧に仕上げた美しい調書がこいつの修正で気持ち悪い仕上がりになってしまう!』とでも思っているのかもしれません。
しかし、私は自分の治療費をどうにか勝ち取らないといけないので、私からすると事実無根、どこもかしこも証拠もなく加害者が有利な仕上がりになっている調書は認められません。

私は、自分が被害者なはずだけど加害者にやさしいこの世界は何なんだろうと思いました。
誰も私の心配はしてくれない。期待はしていなかったけど、そういえば警察官は「事故に遭われて大変でしたね。」すら言ってくれていません。
きっと私が、一人で、生きて動いて警察署に来たからです。

警察は、仕上げとばかりに私に尋ねました。
「最後に、被害者が加害者をどう思っているか、許せる気持ちか、それとも厳罰に処してほしいのかを聞いています。
許せそうですか?加害者の人も大変反省していましたよ。今後十分に気を付けると言っていました。それとも厳罰に処してほしい?どうでしょうか。」
「はぁ。加害者は「あの時はすごく疲れていた」と言っていたので厳罰に処してほしいと強く願いはしません。許せるかと言われれば、いつかは許さないといけないんだろうなと思います。恨み続けるのも疲れますから。」
私は、許せるとも言いたくなかったし、恨んでいないとも言いたくなかった。でも、厳罰に処してほしいとは思いません。曖昧な返しをしました。
「罪を憎んで、人を憎まず、ですね。立派な心掛けです。では、寛大に対処してほしいということで書いておきます。」
そのうんうんと頷きながら貼り付けたような微笑みを浮かべた警察の返しに、荒んでいた私の心はさらにささくれ立ちました。

もうこれ以上は書き換えたくないから調書の最後にサインしろ、という雰囲気でやんわり圧をかけられたあたりで、
気持ちが溢れ出してしまいました。
「私って被害者なんでしょうか。それとも加害者なんですか?私を撥ねた車の運転手の方が可哀そうってことなんでしょうか。
あの瞬間に横断歩道を渡った私がとにかく悪いんですか?自転車だったから悪いんですか?もし歩行者だったら可哀そうになったんでしょうか。
危険そうな交差点だったから念のために横断歩道のところを渡ったのに。一旦停止もしたし、左右確認しました。でも私が悪い雰囲気ですよね。どうしたらよかったんですか。」
警察の人に言っても仕方ないとわかっていたけど、つい口に出してしまいました。
私は道路交通法を守ったけど、「歩行者がいる可能性のある横断歩道では一旦停止」等を守っていないのは加害者です。

ついでに私は気づきました。保険会社のSの時と今回の件で、『自分はため込んで溢れるタイプなんだな』と。
なんと迷惑な奴なんでしょう。

でも『別に私に優しくしてくれたわけでもないし、もうこの人たちが困ってもいいや』と思いました。
私は涙を危うくのところでしわくちゃ顔で我慢し、その変顔のまま調書にサインし、
言いたいことも言ったし帰ろう、と席から立ち上がりかけました。

急に長々と感情的に話し始め、しかも泣きそうな声で盛り上がってトークの終焉を迎えた私に、
周囲で事務作業していた警察官がチラ見し始めました。特に女性警官がすっごく心配そうにしています。
喪黒福造(仮)が慌て始めました。
「君は歩いてきたって言ったね。帰りは送りましょう、駅まででいいですか?
泣きそうじゃないか。そのまま帰るのも心配だし、駅までの間に車の中で気持ちを落ち着かせるといいよ。今日は大変なところをありがとうございました。」
と、急な優しさを発揮し始めました。
結局声を荒げたもん勝ちの世の中だなと、声を荒げたのは自分なのですが思いつつ、
「いや、いいです。」
と断りました。
ありがたい申し出ですが、パトカーで駅まで護送されるのはちょっと嫌です。駅で鉢合わせた乗客に何を思われるか分かったものではありません。

しかし、周囲の、特に女性警官の心配の雰囲気を受け、何も言っていませんが周囲の目を考えた配慮までいただき、駅までハイエース的なビッグバンに乗せてもらいました。
駅では警察に「頑張って生きてたらいいこともあるよ。」と見送られました。

あまりにも疲弊した私は、この日から3日間くらいぐうたらして過ごしました。
病院なんて探せる気分ではありません。
私なりに頑張りましたが、それでも加害者の主張が強く出ているあの調書だと私は圧倒的不利です。
加害者寄りの警察調書、現場を見た知人が誰もいないことや事故当時入院できなかったという事実から、保険会社は加害者の主張(自転車が飛び出した)を貫けば勝てると思うでしょう。

あらゆることが裏目に出て自分に不利な状況を作り出した気がしてきました。
自力での解決は難しそうです。避けたかったけれど、弁護士さんに頼むしかなさそうです。

視界がぶれるだけでなく泣きそうになったせいでか目も痛み始めました。先のことを考えると死にたくなりました。
『あの時私が死んでいたら警察はもっとしっかり捜査してくれただろうか』
『いや、私が死んでいたら。さっきの調書のように加害者の主張だけ通って私が悪者になっただけかもしれない』
そんなことがぐるぐると頭を巡って、まともに寝られませんでした。

来年の学費もどうにかしなければ。生活費もかかる。怪我も全快していなくてバイトもできない。病院にも通わないといけない。
警察の言う通りに「頑張って生きる」ためには、もう仕方ない、お金を借りなければ。
と、病院を探す前に、お金を借りられる健全な機関を探すことになります。


今回はここまでです。
また長い回になりました。最後まで読んでくださった方がいれば、ありがとうございます。

警察とのやりとりが多く、面白味もなく私がわめいている回です。
自分で読み直し、一時は淡々と短くまとめて終わらせた方がいいかもと思いました。これは暗くなるだけの回です。
でも、思い直しました。
後遺障害認定が出る交通事故ってこういうものです、多分。
私は訴訟や治療の知識がなかったから色々失敗しました。私が悶々とした日々の話が誰かの役に立つかもしれませんし。
単純に警察でのやりとりに興味があって面白く読んでくれた方がいればそれもありがたいです。

それでは、次はお金を借りようと奮闘したり、整形外科や眼科に行ったりします。眼科では奇跡的な出会いもあります。

この当時の季節は冬、私の心も冬模様でした。
今は冬の終わりの季節ですね。みなさんが明るく楽しい春を迎えますように。
それでは、よい夜をお過ごしください。