社会問題と報道機関

いやあ、参りました。
浮世の義理で文章を書くことになったのですが、起承転結を綺麗に決めるのは難しくて困り果てております。
物の本によると「転の部分を先に決めてからアンチテーゼを起承で表す」「結の部分を決めてから批判したい対象を起承に持ってくる」など書かれていますが、どちらにせよ「転で突飛な話を持ってきて、結でふたつの話を上手く丸める」作業の必要があり、とても難易度の高い作業です。といいますか、センスのある転を思いつくだけでもちょーセンスが問われます。天声人語の「だがちょっと待って欲しい」文法が重宝される訳ですね。

そこで「プロの文章を参考に…」と、売文業界のトップである新聞を久々に読みました。紙媒体の新聞で事件以外の記事に目を通すのは随分と久しぶりです。職場で取っている新聞ですが、業務上必要な情報を探す目的もありますし、まあ良しとしましょう(勝手)。
しばらく振りに読むと「サステナブル」「トレーサビリティ」のような調べないと分からないカタカナ語や、「ひっ迫」「破たん」などの交ぜ書きが随分と増えており正直読みづらい。報道機関も商売ですから、そのような表記の方が読者に受けが良いってことなんでしょうが、「だ捕」(拿捕)、「いんこう科」(咽喉科)など漢字じゃないとサッと頭に入らない単語は漢字で統一して貰いたいです。

さて、そんな訳で久しぶりに紙の新聞を読んで紙面の世論調査が目に入り、考えるところがありました。
報道機関はしばしば世論調査をします。調査対象は主に政治や社会です。
たとえば、今ですと「岸田総理を支持するか」「統一教会への解散命令を支持するか」、東日本大震災の頃は「原発を廃止するか」「東電は賠償するべきか」のような調査が多かったと記憶しています。

まず、ひとつめ。
「岸田総理を支持するか」を設問した時に
1)支持する
2)支持しない
と選択肢を用意した場合と、
1)支持する
2)岸田総理は支持しないが自公政権は支持する
3)岸田総理は支持しなく野党への政権交代を支持する
4)支持しない
とでは、不支持率が大きく異なります。選択肢が多いのだから1選択肢あたりが少なくなるのは当然ですが、保守派でも岸田総理を支持しない人たちもまとめて支持しない(今回の例示では2の選択肢)に分類されてしまいます。
こうして、「岸田総理不支持率50%超え」の見出しが紙面を踊り、報道機関が本当に報道したい「だから政権交代が民意だ」に繋げる訳です。

次にふたつめ。
「原子力発電を廃止するか」を設問した時に、
1)廃止する
2)廃止せず利用を続ける
だと、どちらを選んだとしても問題の解決方が提示されていません。個人的には発電方法に情熱は無いので、安いエネルギーが確保されるのなら廃止も道のひとつだと思います。ですが、廃止するなら、穴埋めのエネルギーをどうするかが最大の問題となるはずです。再生可能エネルギーで補う、火力で補う、経済活動を縮小させる脱成長を主張する方もいましたね。反面、震災後10年以上が過ぎても未だに再生可能エネルギーを安定生産する方策はなく、エネルギー量も到底足りない。また火力依存はノンカーボンやSDGsに真っ向から反し地球温暖化への影響が大きい。経済活動の縮小についてはバカバカしいので触れなくて良いかな?

他方、利用を続けるなら、安全確保が最大の問題となります。
安全の結果を出したい電力会社とは別の組織で安全性の審査を行わせる。電力自由化を導入して、元気な新電力を多数の起業を促す政策を取る。反面、環境省の外局で総理大臣が任命権者なら別の組織とは言い難い(規制委)、新電力は会社の資産が非力な場合が多く安定経営の確保が難しい。
こんなところでしょうか。

いずれにしても、結果を実現する方策を全く無視しており、世論調査の意味を著しく損なっています。「繋ぎの方策が無いから反対」「繋ぎの方策があるから条件付き賛成」の見解の持ち主を黙殺したら、報道が行う意見の吸い上げとしてあまりに手落ち、国交省や厚労省の統計不正を糾弾する資格があるのか自ら襟を正して欲しい。
や、不正の糾弾は当然だとしても、最終的にYes or Noの2択になる意見ほど細かい実現策も併せて調査して、より細かい調査の公表により国民がより深くよりよい判断ができるよう報道して貰いたいものです。

と報道機関に期待するような見解を書きましたが、今や大手の新聞でもいわゆるネットの「バズり」、つまり「インプレッション数(表示回数)」「クリック数(文字通りクリックされた回数)」「コンバージョン数(資料請求や定期購読など直接的な成果数)」に右往左往しているのだとか。
ツイッターを見るとたしかに記事を読まないで反応する層って一定数いますから、扇情的な煽りを含んだ見出しが多用される訳です。

ですが、誰でも発信できる時代になり、デマを元にした誤報や、更にはフェイクニュースも激増しました。こういった状況だからこそ、オールドメディアの王たる新聞社には矜持を持って「よりよい判断材料の提供」に励んで頂きたい。
特に大手だから可能な「議題設定能力」はこれからのネット社会の双方性の議論にとても利すると思います。現状、この分野はヤフーニュースの独壇場ですが、こんな美味しいところをヤフコメに独占させるのは勿体ないですよ。

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