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amazarashiについて語りたい~ロストボーイズ~

今回取り上げるのはアルバム『七号線ロストボーイズ』に収録されている1曲。
気だるげな曲調から始まり、サビの疾走感に繋がる。
迷いの最中にある少年少女、かつてそうだった大人たちへ向けた歌。
もしくは、自分自身の中にある少年少女へ親しみを込めた歌。

いつもありがとうね。君の苦労や苦悩はいつしか報われたよ。
不意に出てきてはうらめしく見ている君を見て、私ははにかんでしまうくらいにはなりました。

この歌はもう少し渦中の歌かな。
今の私はどうにか、もう少し先にいて、つじつまを合わせることができたようです。

電車に乗りクラスメイトに使い古しのあいさつ
鈍行的な会話にはいつも運転手はいない
始まりにはいつも溜息が出ちゃうな
始業式や朝礼や 今日一日の目覚めとか

気怠さの象徴的なワードが並んでいる。
ここは今も変わらない。あまり意味を成さない同僚たちのスケジュールの読み上げを尻目に、今日も1日が始まる。
学生の頃よりはいくらか能動的な毎日になった。

少年は闇の中 金属バットやカッター
ナイフとかハサミでは切り裂けない夜がある
将来の話とか 神様も知らないこと
真夜中は短すぎる この世の謎暴くには

朝焼けに白む町 全速力で駆け抜け
夏と風を追い越して あの子に会いに行けたらな
夜は影を隠すけど 太陽が暴くから
僕の恥が地面に張り付いて
泣かないで ロストボーイ ロストボーイ

切り裂いてしまいたいのは夜だったろうか
それとも別の何かか。いずれにしても何を使ってもそれは叶わなかった。
身の回りにはわからないことが多すぎる。みんなはわかっているような気がして、自分だけ取り残されたように感じた。

疾走して何もかも置き去りにして、夏の象徴のような彼女に会えたなら。
泣いていないし、走り出してもいない。ただ歯を食いしばってうずくまる自分を、太陽が暴いていく。

人と違うような気がしてよく鏡を見てた
宇宙人や化け物じゃなくてよかった
でも言葉や思考を映す鏡なんてないから
安心できない 安心できない

言葉や思考は正常か。何度も書き出しては消して、書き出しては消して。
当時の個人作成のホームページなんて誰も見ないだろうにアップロードすることのなかった言葉は一体どれだけあったろうか。
今にして思えば、瑞々しくドロドロの感情でもったいないことをしたなと思う。
そこから得られることもあったろうな。

少年は闇の中 マルボロと車泥棒
不登校とオーバードーズ 入り組んだ夜がある
誰にも話せないこと 吐き出した濁ったもの
この世の終わりなんだ ごみ箱を漁られたら

朝焼けに白む町 訳もなく涙が出て
これを青春と呼ぶならめでたいやつもいたもんだ
夜は涙隠すけど 太陽が暴くから
僕の恥が地面に張り付いて
泣かないで ロストボーイ ロストボーイ

訳もない涙なんていつ以来流していないだろうか。あれはなんだったんだろう。
ずっとこれは何なのか考え続けてきて、とうとう答えを見つけることはできなかったようにも思う。
一般的にはホルモンの乱れ。第二次性徴に伴う感情の揺らぎ。あるいは中二病。モラトリアム。
自分だけの名前がほしかった。特別なものでないと嘘だ、と思っていた。それだけその苦しみに価値がほしかった。
涙が出るのは決まって夜で、決まって青春の只中で。
それはきっと、価値があるものだったよ。

少年は闇の中 十年経っても闇の中
襲われる「あの頃よかったよな」 振り解く「まだマシ今の方が」
自意識過剰なくせに 甚だ無鉄砲で気難しい
けどそいつに諭される時々 そんな夜未だにいくつもある

朝焼けに白む町 世界に憎まれたって
憎んでるのはこっちだと 金網をくぐり抜けて
大人は少年を隠すけど 真夜中が暴くから
ほらあの日の 少年が舌出して
泣かないで ロストボーイ ロストボーイ

世界に嫌われる前に嫌ってやろうとするamazarashiが好きです。
いつだって自分が主導権を握っていると言い聞かせないと、滑落してしまいそうなくらいギリギリなんだよね。

過去、大人はこんなセンチな気持ちにならない生き物だと思っていたし、そうなったら大人なんだと思っていた。
でも実際、今30代も折り返しに来ているけど、相変わらずこんな文章を書いているし、こんな歌詞(ええ歌詞やろがい!)に心を打たれる。
夜に訳もなく泣いてしまうことはさすがにないけど、酒を飲みながらひとりでその気持ちを肴にするくらいには中二心は残っている。

そんなもんですか?世間の大人はそんなもんじゃないかも。でも自分はそんなもんです。
そんな私も世間では大人にみられていて、仕事をして、一端に後輩の指導や大人数の大人の前で話して褒められることもあります。奥さんも子どももいます。

過去の自分がみたらきっと衝撃を受けるだろうな。残念だが、いつまでも心は揺らぐぞ。でもその受け止め方は変わるぞ。

この文章を見た今まさに少年少女の君たちはどう感じるでしょうか。
おじさんとamazarashiを語ってくれたら、その瑞々しさに泣いてしまうかもしれません。

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