声
小学生の時、結婚を機に退職する先生に向けて、クラスのひとりひとりがお祝いのメッセージを録音する機会があった。真面目にお祝いする子、ふざけすぎてほとんどが叫び声で終わった子。みんな自分の順番を待ちながら、緊張していてもどこか楽しかった。
そして、自分の番がきた。今となっては何を言ったのかすら覚えていない。でも、自分としては良くできたほうだと思っていた。
録音を終盤を迎えた頃、機器の不具合のせいか、上手く録音できていないことが分かった。どこまで、きちんと録音できているのか、細々と早戻しを行ないながら確認していった。ここまで大丈夫。ここも大丈夫。だんだん遡っていくお祝いのメッセージ。次に聞こえてきたのは、周りの雑音に埋もれるような低くてなんとも聞き取りにくい声だった。クラスメイトのひとりが、その声を聞いて叫ぶ。
うわっ悪魔の声じゃん。
つられて、他のクラスメイトも悲鳴を上げたり笑っていた。わたしは何もできなかった。
だって、この声はわたしだから。
周りには、わたしの声ってこんな風に聞こえてるんだ。じゃあ、なんでわたしが喋っても悪魔って言われないの。なんで。どうして。その後のことはまだ思い出せていない。思い出せたほうが良いのだろうか。
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