静かに消えた赤プリ

バブル経済を象徴する建築物だった「グランドプリンスホテル赤坂(略称赤プリ)」の解体は劇的だった。

高さ140mの威容を誇ったこの超高層ビルは、最新の解体技術によって、静かにそして美しく消えていった。アメリカなどでは爆薬を仕掛けておいて、一気に大崩壊させる。実にダイナミックなやりかたであるが、人口も建築物も密集した東京ではできない。

そこで開発されたのが、大成建設の「テコレップシステム」と呼ぶ工法だ。騒音や粉じんの拡散を抑えるのが特徴。超高層ビルの解体はこれまで、建物の内外にタワークレーンを立てて進めるケースが多かったが、まるで違った方法で解体してみせた。屋上界のスラブ(床板)中央部をクレーン台座として残し、四隅の柱にジャッキシステムを組み込んで1フロアごとに解体と下降を繰り返す工法である。赤坂見附交差点を見下ろしていた「赤プリ」が、静かに姿を消した。バブル経済期を象徴する建物が、上から徐々に縮んでいく様子は、当時を知る世代には哀愁すら漂う都市の新たなシーンとして感慨深いものがあった。

テコレップシステムでは、既存ビルの屋根を大型ジャッキで支えて蓋にして屋上階の外周に取り付けた防音パネルとともに建物上部をすっぽりと覆う。閉鎖空間で解体を進めた後、ジャッキで下げることを繰り返す。2層分の解体と屋根のジャッキダウンにかかる1サイクルの工期はおよそ10日だ。

新工法は解体工事の概念を「壊す」から「分解する」へ替える技術であり、工場での作業のように反復作業が可能かつ自動降下機能による高い安全性を 併せ持つ工法である。閉鎖空間の構築に既存部分を有効活用することで、仮設材を大幅に低減し、転用することでコストダウンが可能である。荒天、上空での 風、苦情による作業中断が無いため、建物高さが高く従来の工期が長いほど、工期短縮の効果が期待できる。

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