“Time Wants a Skeleton” by Ross Rocklynne (1941)

古典SFに取り立てて思い入れのない人間なのだが、たまに足元を確認する意味で読んだりすることがある。これもその1つ。

星間軍のトニー・クロウ中尉は犯罪者ブレイカーとその仲間を追う途中、アステロイドベルトの小惑星1004に不時着する。小惑星をさまよううち、彼はある洞窟の中で指輪をはめた骸骨を発見し、なぜかそれが人類が誕生する前から存在するものだと直感する。
ブレイカー一味を取り押さえることには成功したが彼らの船も壊れてしまい、小惑星で立ち往生したクロウのもとに、オーヴァーランド教授の船が現れる。教授はアステロイドベルトがかつて存在していた惑星の残骸であるという仮説を証明するための調査に訪れていたのだった。
ブレイカー一味を護送するために火星へ引き返す一行だったが、その道中クロウはあの骸骨がはめていた指輪をブレイカーが着けていることに気付く。クロウの話に興味を惹かれた教授たちは小惑星に引き返そうとするが、そこで船の新型機関が暴走し、船は見知らぬ惑星に着陸する。機関の暴走によって彼らは過去に飛ばされ、アステロイドベルトになる前の惑星に墜落してしまったのだった。
惑星が分解する前に何とか船を修理しようとするクロウたち。だが彼らの脳裏にはある不安がまとわりついていた——すなわち、あの骸骨は誰のものなのか?

冒頭、小惑星上で銃撃戦が始まるあたりでパルプ臭がすごくて読み進めるの止めようかと思ったが、その後の展開はなかなかのもの。アイデア自体は新鮮味はないし、話運びも強引なところが多いものの、誰が骸骨になるかの疑心暗鬼をめぐるサスペンスや、ラストのひねりなどは今読んでもそれなりに面白い。時間の復元性というのが話の前提にあるわけだが、登場人物たちが理論的にそういうことを理解しているわけでなく、むしろ指輪の呪いのような捉え方をしているところも、怪奇小説とSFとの過渡期的な見方ができて興味深い。

しかしそれより何より、あらすじを見た限り、J・P・ホーガンの有名長篇(ぼかすのは嫌いなのではっきりいってしまうと『星を継ぐもの』)と構成要素が似てない? というのが気になるところだ。1941年はホーガンが生まれた年なのでリアルタイムで読んだ可能性はないが、アシモフの黄金時代SFアンソロジーなどに含まれているので、どこかで触れているかもしれない。何の証拠もないが……。

ロス・ロクリン(1913~1988)はSFエンサイクロペディアによると、1935年に《アスタウンディング》誌でデビュー。アシモフやハインラインの先輩にあたるが、あっという間に追い抜かされてしまった。その後もコンスタントに作品を発表していたが、50年代後半にサイエントロジーにドハマリし、一旦は退場。その後60年代後半に復活し、ハーラン・エリスンのアンソロジーAgain, Dangerous Visionsに寄稿したりもしたが、以前より洗練されたSF界に追随できなかった、というのが一般的な認識のようだ。

この作品もグダグダしたアクションシーンが多いせいで中篇になっているが、もう少し引き締まっていたらよかったと思うこともあり、結局パルプ的な奔放さが身上だったのかもしれない。短いものだったら、もう少し読んでもいいかもしれない。


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