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bonobos LAST LIVE「bonobos. jp」@ BIGCAT

bonobosのライブに行ってきた。「LAST」とタイトルにある通り、20年余に及ぶ活動が終わってしまうという。私は「最後の舞台を見届けよう」というような気概を持ったファンなどでは決してなく、それどころか、ラジオで耳にした『永久彗星短歌水』に頭を殴られただけの即席にわかファンと言って差し支えのない、端的に言って、「思い出泥棒」そのものである。

「最後」だと言われたから足を運ぶことにしたという気持ちは否めず、正直なところ「早まったかもしれない」と思わないではなかったけれど、結果として、bonobosの音楽を直接体感できてよかった。本当によかったんだよ。それがもしかしたら、誰かが欲しかったかもしれないフロアの1マスを奪う行為だったとしても。

会場であるBIGCATは商業施設の4階に位置していて、開場を待つ人が大階段に沿って上から下までぐるりと列を成している。老若男女。長年のファンたちの交流、新参者らしき人に詳しい人が何やら解説をしている、若いけれどばっちりライブTを着ている、といった具合で、それらがバンドの歴史そのものに見えたりもした。スタッフの人が叫んでいる。「ロッカーの数が残り僅かとなっております!」「会場は暑くなります!登山みたいな格好の人がいつも倒れています!」「できるだけあらかじめ荷物を預けておいてください!」ライブハウスに来たみたいだぜ。テンション上がるなぁ~。

声を出すようなライブかどうかはともかくとして、歓声は制限されてないようだったので、周囲のリアクションがあるという意味でも少し懐かしい感じがした。ワンインチチャンネル的に言うと「純度の高い」人たちが割合を占めているようで、各々が好きに揺れて楽しんでいるのがどこか新鮮に映るところもあった。からだを動かすのが罪かと錯覚するくらい微動だにしないライブもあるからさ。

『.jp』を聴き込んでいたので、『永久彗星短歌水』が聴けたのは嬉しかったし、『YES』の後に『おかえり矮星ちゃん』が続くのが直感的に理解できたりもしたけれど、そんなことがどうでもよくなるくらい、鳴らされる音そのものが開幕から希望に満ちていて、理屈より先に感情が「パンッ」と炸裂して泣くかと思った。盗人猛々しさもなかなかに極まっている。

他と比べてというわけではないけれど、1曲の中での展開が多く、即興的に尺が伸びていく傾向にあり、その分個々のプレーに光が当たる瞬間がたくさんあった。ソロパートで歓声が上がる。ある意味円熟味が増している、という感じ、ライブを通して曲を聴いていく中で、『.jp』まで「到達してしまった」んだな、という実感めいたものもあったかもしれない。蔡さんは「この七人で」「鳴らしたい音を鳴らせている」と言い、「ここ十年くらいで一番調子が良い」と言うままにどこまでも自由で伸びやかだった。

『THANK YOU FOR THE MUSIC』が全国的な知名度を誇っている一方で、関西ではFM802でヘビーローテーションになっていた『あの言葉、あの光』で先駆けて知られていたらしく。FM802で知った私としては、思いがけずバンドのストーリーに合流した気分にもなった。

見たもの、聴いたものを「忘れてやらない」というマインドでいる今だからこそ、受け取れたのだということにして。これから(も)、bonobosを聴いていこうと思う。

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