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イヌ越しに見る私の父

田舎にある実家にはイヌがいる。
どっからどう見ても雑種の茶色いイヌ。

このイヌが私は大好きだ。

なんとも言えない哀愁漂う困り顔。
何故かめちゃくちゃ短い後ろ足。
首輪の位置がいつも定まらない長すぎる首。
口を閉じてもいつも出ている左の犬歯。

いつも家族が会話するちょうど間の位置に腰を下ろし、私達の顔を見上げるのである。

そして上目遣いで目を見つめ、無言で撫でろと手を招く。

イヌというのはなんて尊いのだ。


そんなかわいい私達の家族は保健所から譲り受けた。

夏の日、私は母と父と一緒に里親譲渡会にいった。
そこにはたくさんのかわいいイヌ達で溢れかえっていた。
白いふわふわした子犬や元気いっぱいの成犬、おじいちゃんのようにたたずむ老犬もいた。

私が色んなイヌ達を見ていると、父が目に入った。
父はずっと動かず同じオリに入った困った顔の2匹の子犬を見つめていた。

「困った顔しとるなぁ」

そう、父は困った人を見捨てられない義理人情にあつい優しい男なのである。
俺がなんとかしちゃる!これが父の口ぐせだ。

「この子にするか。」

小さい声で父は言った。元々イヌは先に死ぬからそんな悲しい思い耐えられんと譲渡会に行くのも渋っていた父だったが気が変わったらしい。そんな父の言葉に私と母も「そうやね、その子がいいね」と満場一致でそのイヌを譲り受けることにした。

母が名前を付けた。ソラ。
意味はよく分からなかったけど気に入っている。

ソラはなんとも怖がりでいつもびくびくしていた。
ソラのお母さんはあの場にいなかった。

父は寂しかったんかぁもう怖くないぞぉとソラに溺愛し始める。俺がなんとかちゃる!守っちゃる!と言っているみたいだった。

考えてみるといつもそうだった。
私を守るためならなんでもしてくれた。
これからもそうだろう。


私もそんな親になれるだろうか。


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