母と買い物

母は、昔から買い物が好きだ。

そして、今1番家族が困っていることでもある。

・高額化粧品(初回格安、2回目以降は高額)の契約を結び、支払いが滞り、請求書が次から次へと来る
・テレビショッピングの煽り文句に乗せられ、不要なものを購入する
・何度も同じものを購入する

幸い、母は定年退職するまでずっと定職に就いており、貯金もしっかりしてきたタイプの人間だ。
家族で相談して、母の買い物は母の口座から引き落とされることにしている。

でも、懸命に働いてきた母の口座残高が、
よくわからないネット広告製品のせいで
どんどん少なくなっていくのは悲しい。
本当にそんなことに使いたかったのだろうか。

先週だけで支払った額は約10万円。
開封もせずに家に溜まっていくダンボールの山。
父が会社ごとに分類分けして整理した請求書入れのクリアファイルは、いつのまにか膨れ上がってページが足りなくなっていた。

「お母さん買い物好きだったから、それを全部奪うのは抵抗がある」父はそう言って力なく笑った。


返品が間に合うものは可能な限り返品した。
確実に当分はいらないだろうと判断できる化粧品は、定期の解約を試みた。

有名テレビショッピングのJ社は「今後はご家族に確認してから注文を確定するようにしますね」と言ってくださり、心が救われた。

LINE広告から飛んだと思われる、無名の化粧品会社でも「今後DMなどが行かないよう、個人情報を削除しておきますね」と言ってくださった会社があった。

でもすべてではない。
認知症であることを伝えた上でも更なる営業を掛けてきたり、「最終送品(数ヶ月後)が終了した後でないと、解約は受けられない」と言って解約を断られた会社もあった。



母を買い物に連れて行った。

化粧品や家電、服、洗剤の類は家に十二分に溢れかえっている一方、母の使っている下着はここ何年も変えていなさそうなのが気になった。
Yahooショッピングの買い物かごには30件以上の品物が入っており、その中に下着も含まれていたので、ネットで買うより一緒に買い物できればと思った。

でも母は全然手に取らない。
「下着に1,000円は高いよ」と笑う。

先週だけで10万ネットショッピングしてる人がよく言う、と思ったが、どうやら母は本気でそう思っているようだった。
そういえば、記憶の中の母も、定価で買うことは滅多にせず、セール品ばかり手に取るひとだった。

3店舗回って、最後の店でセール品の下着を3枚だけ買った。多分「私が買ってあげるから」と言わなかったら、1枚も買わなかったと思う。

ネットショッピングやテレビショッピングは、毎日セールをやっていると言うか、安く見せる技術が長けているからつい購買意欲が掻き立てられるんだろうな、とぼんやり思った。
LINE広告から飛んで住所と電話番号を登録するだけ、電話するだけの簡単な購入フローも、引き下がる隙を与えない。

現代の進みすぎた購買心理研究と、それを大いに活用したネット通販・テレビショッピングを恨む他なかった。

きっと今日も、何かをスマホで購入しているんだろう。
母と楽しく買い物をするには、どうしたらいいだろうな、と今日も頭を悩ませている。


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