特集・ソロアイドル 3776プロデューサー・石田彰インタビュー
3776 プロデューサー・石田彰
Twitter 3776
――音楽関係のお仕事は、アイドルがはじめてですか?
まぁ、ぼちぼちですね。表だった仕事はあまりしてなかったです。
富士宮でTEAM MII※をプロデュースしたのが初仕事でいいと思います。
※ TEAM MII(チームエムツー)3776の前身グループ。静岡県富士宮市のご当地アイドルとして2012年に結成。井出ちよのもメンバーの一人だった。
――以前は人形劇をやられていたそうですが。
やってましたけど、音楽とは関係ないですね(笑)
――3776は、以前はグループアイドルでしたが、現在は井出ちよのさんのソロとなっています。TEAM MIIの時は、AKB48を意識されていたそうですが、ソロでやることは想定していなかったのですか。
そうですね。グループアイドルがいいなぁと思ってはじめたので、まさかソロをやるとは思いませんでした。もう、仕方なくって感じですかね(笑)。
ソロでやる時には、今までの楽曲じゃできないので、改めてソロ用に曲を作らないといけないなぁと思いました。
――グループ時代のシングル「私の世界遺産」に収録された曲や「序曲」といった曲に較べると、ソロになってからの3776の曲は確かに違いますね。音楽的な細かい差は、よくわからないのですが、歌詞から受ける印象が変わったように感じます。グループ時代はメンバー同士のかけあいを演劇的に描いていたように思うのですが、ソロになってからは、一人称の小説に近いといいますか。元々、石田さんの歌詞はストーリー性が強くて、それぞれの曲の背後に物語のようなものが見えるのですが、歌詞の書き方で変化した部分はあるのでしょうか?
あんまり意識はしていません。一人になったことで、結果的に本人らしさが「濃く」詞に影響するようになったかもしれませんが。
――ちよのさんにも伺ったのですが、石田さんとちよのさんとでは、どのような役割分担で出来上がっていると思いますか?
以前、グル―プの時の3776について「バンドっぽい」って言われたことがあったんですよ。それを言われて、「そうかも」って思って。バンドって、いっしょに作っている感じがするじゃないですか。だからバンドじゃないですか。バンドリーダーがプロデューサーで、ボーカリストがちよのという感じで。
――グループとソロ、両方手掛けてますが、表現における根本的な違いは何だと思いますか?
誰が見てもわかると思いますが、一人で全部やらないといけないってことが大きく違いますね。音は基本的に重ねられないから。息継ぎとかも考えないといけないし。グループだったら息継ぎがキツイから分担することもできますし。
――たとえばステージの使い方も一人の時とユニットの時ではフォーメーションがかわりますし。
ソロ曲とアンサンブルは違うなぁとしか、言いようがないですね。音楽的には、一つの音を出すのと二つの音を出すのは全然、違うものだと思います。一人だと絶対に和音にならないので。ステージでも、一人だとハーモニーがつくれない。そこがやっぱり違うかなぁと思います。
――石田さんは、運営も担当されていますが、ソロアイドルの運営をしていく上での良い点、難しい点を教えてください。
運営的には、ソロの方が回収しやすいですね。
三人だったら三人で分けないといけないですけど、一人の方がちゃんとお金が回ります。
グループは人数が多いとお金を回していくだけでも大変で。交通費も電車でいかなくても人数が多いと、車も二台三台と必要になりますし。人数が少ない方が、経費がかからないので、やりやすいです。
――運営って一人でできるものなのですか? 今日も石田さんが一人で物販をされていて、大変そうだなぁと思ったのですが。
そうですね。今のところは一人で。本当は誰かにやってほしいというところは、あるんですけど。
――アートワークも含めて、統一された世界観が素晴らしいなぁと、思います。
一人でやってるから、自然とそうなっちゃうんでしょうね。でも、逆にそれがいいのかもしれないです。いろんな人が関わってビシャッとなるより、一人でやってるから形は見えやすいですね。
――パンクしたりしませんか?
あ~。そのうちパンクするかもしれないですね。
――今ならまだ大丈夫ということですか?
ソロだから、ここまでうまく回せたのかもしれないですね。一人、説得すればいいので。だからラクってことはないですけど、グループの場合は意思を統一するだけで大変なので。
――客観的に見ていると、ちよのさんと石田さんの波長がすごく合っていると思うのですが、うまいパートーナーシップができる人と組めたから、続いているという感じでしょうか?
そうなんでしょうね。でも、ちよのは、わりと誰とでも合わせられると思いますよ。
「3.11」と「避難計画と防災グッズ」
――「3.11」のPVがずっと気になっていたのですが、どなたが作られたのですか?
あれは僕が作りました。とにかく予算も時間もなかったので、その中でできることをやったらあんな感じになりました。まぁ、もっともイメージを伝えられるシチュエーションと内容にしたんですけど。
――どのようなコンセプトで撮られたのですか?
内容については、やはりアイドルなので、女の子っぽさが出て、ドキッとするようなシーンを随所に入れることは意識しました。
撮影は、予算がないからスタッフは自分一人、手持ちの民生カメラだけでなんとかする、時間もないので一日で全部撮る、みたいな感じでした。
朝に撮ったドラマパートをお昼にざっと編集して、ライブパートの必要な部分を確認して、夕方にライブパートを撮る、みたいなスケジュールで、よくできたと思います。
テープやロープでなんとなく廃墟っぽくしたのも、早朝からよく一人で仕込んでやったなあ、って思います。作品の出来云々よりも、個人的に良い思い出になりました。
――曲自体もそうですが、PVの衝撃が凄すぎて、ちょっと引いてしまったんですよね。すごいものを見てしまったことに対してうまく咀嚼できなくて……。震災復興応援ソングを作りたいという意識は最初からあったのですか?「避難計画と防災グッズ」という曲もありますが。
でも、富士山ネタで色々探すと……探すってのも、変な言い方ですけど。結局、いつそうなるかわからないので。
共通点もあるので、じゃあ、曲のテーマに選ぼうっていう。
――3776が先にあって、という順番ですか?
富士山をテーマにした曲を作っていたら、自然にできた曲ですね。
――知らない人から見たらプロデューサーの暴走なのかなぁとも見えるのですが。
暴走はそんな……たまにはあるかもしれないですけど。この前のワンマン(※)の時の何曲かは、そういう要素もあったのかな。
一応、ただやりたい放題やっているわけじゃなくて、アイドルのフォーマットがあった上でのことなんですが、それがちょっと変わったことをやっているように見えるのかもしれません。だけど、その土台を外れることはやらないし、思いつかないですね。
※ この前のワンマン 2016.1.17に、O-nestで行われたセカンドワンマンライブ「3776ライブに行かない理由があるとすれば」のこと。未来から来た井出ちよのと偽3776が歌で戦うという演劇仕立てのライブを披露。ワンマンでありながら、昨年話題になったアルバム「3776を聴かない理由があるとすれば」の収録曲を3曲しかやらないという大胆なセットリストも話題となった。音源の配信とライブの模様を収めたブルーレイが発売されている。
ワンマンで披露された「僕だけのハッピーエンド」
――ローカルアイドルをやっていく上でのいいところと難しいところを教えてください。
ローカルアイドルは、続けていくこと自体が難しいなぁと思っていて。東京で活動されている人たちは石にかじりついてでも続けていくというプロ意識が強いですが、ローカルアイドルは気軽にできる分、気軽に辞めてしまって、それで人が少なくなっていくということが、あるんじゃないかと思います。
今後の目標
――3776は現在「Season♯3」と銘打ってますが、しばらくはソロの状態が続くのでしょうか?
次はどう、というのはまったくないですね。何もなかったら、とりあえずこのままで、次のことは考えてないですね。
――「Season♯4」はあるのでしょうか?
以前は研修生※を集めてやっていたのですが、そこは一回あきらめました。
※ 研修生 3776は当初、3770という研修生制度を設けていたが、2015年4月26日に終了。2015年5月2日から研修生の元メンバーがMi-II(TEAM Minanaro-II、ミートゥと読む)というアイドルグループに独立して活動中。TEAM MIIやグループ時代の3776の曲を歌っている。Mi-II公式ホームページ
――ソロで行けるところまで行くという感じですか?
本人にやる気があるならですね。ただ、3776の場合は、あまりソロアイドルをやっているという意識はないです。音の面でできることは違うけど、コンセプト的にはまだ、グループアイドルをやっている意識に近いですね。
――今やるべきことをやっている、ということですか?
そうですね。あまり先のことを考えてないです。
でも、いろんなローカルアイドルがいるからわからないですけど、自分の中のローカルアイドル観としては、持続できている時点で成功していると思ってるので。
自分の場合は、あんまり先を見るよりも、目の前のことを一生懸命やっているって感じですかね。
――ありがとうございました。
(2016.1.24 山梨県Studio天空馬にて収録)
ライブ動画はこちらで見ることができます。
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