猥褻マッチが警察の検挙マインドに火を付けた
自分の周辺を見回しただけでも、タバコを吸う人の数は減っています。減る一方と言えます。
厚生労働省の「最新たばこ情報」によると、習慣的に喫煙している者の割合を男女別にみると男性 27.1%、女性 7.6%でした(令和元年)。平成元年には男性55.3%、女性9.4%でしたから、特に男性で相当の減り方だとわかります。
かつて、働く男性はタバコを吸うのが当然でした。タバコには火をつけます。だから男たちの集まる店は、店名と住所や電話番号を印刷したマッチを用意するものでした。
喫茶店やバーなど、洒落たデザインのマッチがあったものです。
しかし、喫煙者の減少と電子タバコの普及(それ以前にライターの普及もありましたが)により、マッチを見かけることも少なくなりました。
今回のお話は、マッチがバリバリの現役だった昭和初期の新聞記事からです。
アイデア商品「猥マッチ」流行す!
「猥マッチに新判例/検挙された小料理店」という小さな見出しの記事が読売新聞に掲載されたのは、昭和2年(1927年)11月23日でした。
記事は、「最近市内のカフェー、小料理屋等に一部分を指で隠すと猥画となり(ママ)巧妙なペーパーを貼ったマッチが流行し出し警視庁保安課では頭を痛めていた」と始まります。
一部分を指で隠すと猥画となる?果たしてマッチにはどんな絵が描かれていたのか、まことに気になります。
記事を読み進めると、「今後此種のマッチペーパーを断然禁止することになり」、牛込神楽坂の小料理屋が「第一の槍玉」として検挙された、とあります。
「猥マッチ」の図柄はどうなっていたのか
肝心の「猥マッチ」がどういうものだったのか、記事の続きに少しヒントがありました。
お手柄の保安課が、「もし1枚の猥画を4分して1枚々々では猥褻とならない様にして売ったとしてもそれは猥褻図画である」とコメントしているのです。
もっとも、これでは猥画が4分割されているのだな、ということしかわかりません。
残念ながら、記事を先に進んでも、「此種の取締りは従来の法令にはなかったのであるが、これによって猥画取締上の新判例を作るだらうと思ふ」という鼻息荒い保安課のコメントで締められているだけで、どんな猥画が、どのように指で隠すと出てくるのか、といった本当に知りたいことはわからずじまいでした。
昭和の猥マッチは平成のピンクチラシか
よくよく考えてみると、まことにつまらない事件です。
何やらエロっぽい絵が指で押さえると出てくるように細工されたマッチを使えないようにした、というだけのことです。
昭和の終わりから平成の初期ごろ、電話ボックスに大量に張り巡らされていたピンクチラシの一掃作戦に、警察が一生懸命になっていたのを思い起こさせます。
猥マッチも、背後に反社会的勢力が存在し、その資金源になっていた……などという事情があったのかもしれませんね。記事には書いてありませんが。
猥マッチ、残念ながらマッチせず
こうなると、当時流行していたという猥マッチの実体を、どうしても知りたくなります。売値あるいはカフェー等の仕入れ価格がどの程度だったのか、お値段ハウマッチも知りたいポイントです。
そんな時、頼りになるのはGoogle先生でしょう。と、検索したところ、残念ながらマッチせず。さすがのGoogle先生も昭和初期の風俗には詳しくないようです。
猥マッチの謎をご存じでしたら、ご一報ください。では、また次回。
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