運も実力のうちとは言うけれど

ちょうど昨今のような、秋の足音が確実に感じられてくるような空気の時季が、いちばん好きだ。
日中はまだまだ容赦なく日光が照りつけ、蝉の勢いも衰えたものじゃない。ただ、その鳴き声も晩夏に多いとされるツクツクボウシがほとんどだし、あちこちに着実に秋の足音を感じる。

そのような大好きな時季にある、北海道マラソンに昨日、出場してきた。

北海道マラソン。
大都市型マラソンとして唯一の夏マラソンであることは勿論、MGC(マラソングランドチャンピオンシップ∶パリ五輪選考会に関わる)大会として、最高位であるG1と位置づけられていた。

そうした大会で、私は「入賞」することを目標に掲げた。そうした格の高い大会で入賞するって格好いいからである(語彙力)。


結果として 2時間46分44秒 7 位入賞

と、目標の入賞を達成することができた。

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ただ見る人が見れば分かるように、記録からも順位が棚ぼたであることは明らかである。自分でも思う。

だがしかし、である。今回の入賞は本当にただの「棚ぼた」だろうか。

「運も実力のうち」とは良く言ったもので、自分ごときのレベルのランナーが言うのは至極おこがましいのだが、今回「入賞」という「運」を手繰り寄せられた要因について、考えてみようと思う。


北海道マラソンに向けた練習であるが、実は何一つ上手く行かなかった。

事の発端は今年2月の膝の怪我で、ようやく癒えたのが6月、今度は7月頭に臀部を故障した。

普通の実業団であれば出場させて貰えないだろうが、まだ自分に北海道を諦めるという選択肢はなく、ギリギリのラインで練習を積み重ねた。NARA-X様様である。


2週間前の短期合宿で、臀部の痛みがほぼ癒え、ようやく目処が立ったように思えたが、翌週から体調が一変、ドン底へ。あら?

一週間前のペース走で4′00/kmがラクに走れず、4日前の短いペース走はいつもより落とした3′40/kmでも駄目。この地点で万事休すか、と思われた。

そこで思い出したのが、「言霊」である。

言霊とは、言葉が持っているとされる神秘的な霊力のことで、発言した言葉通りの結果が得られる、とされている。「目標は口に出さないと叶わない!」という人も多いだろう。

私がイメージするのは、その目標よりももう少し「日常的かつ具体的に落とし込んだ」ものである。

今回に限っては、状態の悪さに対してひどくナイーブな気持ちになっていたので、

「絶対に入賞する!」「何分何秒で何キロを通過する!」「○○選手に勝つ!」といったことではなく

「笑顔でゴールする」「風が気持ちいいなと思いながら走る」「42.195km移動する」といった言葉を口にするようにしていた。

前者と後者とで何が違うのかというと、前者が不確定性が高く脆い、力みが必要なのに対して、後者はシンプルにリラックスして考えやすい点にある。


勝負事で大切なのは平常心であると良く言うが本当にそのとおりで、

極度の緊張下で、シンプルに物事を考えられるどうかが一番のポイントなのではないだろうか。


また、「〜したい」などと希望的観測ではなく、「〜する」と断定的に言うことで、脳がより実行対象として処理しやすいのではないかとも思う。


今回、レース直前まで調子は上がらなかったが、とにかくシンプル発言を繰り返し、レース中も最後までその思考だった。とにかく前だけを向いて走り続けられた。

序盤からやっぱり体は動かなかったし、後半も失速しタイムは何一つ褒められたものではないが、上記の思考に至らなければ途中で止めていただろうし、現状を受け入れてその中で最善を尽くすことのできた結果としての、「棚ぼた」の7位だったと思う。

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準備からきちんと積み上げていくのが当然のこと。

それでも上手く行かなかったときに、上手くいかないまま終わるのか、その状況での100%近い力を発揮できるのかだけでも違いはある。


逃げずに、出場することができて本当に良かったと思う。


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