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所有不明土地の解消に向けた民法・不動産登記法等の改正、相続土地国庫帰属法の制定⑨

今回は、形骸化した登記の抹消⼿続の簡略化の続き(後半)、抵当権等担保権の抹消登記について書きます。

被担保債権の弁済が完了しているにもかかわらず、抵当権等の登記が抹消されず、そのまま放置されている不動産が少なからずあります。

担保権の設定登記がされてから相当長い年月を経ている場合、抵当権者である法人がすでに解散して所在がわからなくなった結果、抵当権抹消登記手続が困難となり、不動産の円滑な取引を阻害しています。


改正前不動産登記法での担保権抹消登記の問題

改正前不動産登記法にも、担保権抹消登記の登記権利者が、登記義務者と共同して登記の抹消を申請することができない場合に、単独申請ができるパターンの規定がいくつかありました。

① 登記義務者が抹消登記手続きに協力しない場合に判決によって登記権利者のみで単独申請(63条1項)
② 抵当権が抵当権者の死亡により消滅した時(69条)
③ 登記義務者の所在不明により登記の抹消の共同申請ができない場合に、公示催告の申立てをしたうえで除権決定を得たとき(70条1項2項)
④ 登記義務者の所在不明により登記の抹消の共同申請ができない場合に、「債権証書」及び「債権並びに最後の2年分の定期金の受取証書」があるとき(70条3項前段)
⑤ 登記義務者の所在不明により登記抹消の共同申請ができない場合に、債権の弁済期より20年を経過し、かつその期間の経過した後、債権、利息及び債務の不履行により生じた損害の全額に相当する金銭の供託をしたとき(70条3項後段)

③から⑤は、登記義務者の「所在が知れない」と認められる場合との限定されているため、登記権利者の手続的・費用的負担が大きく抵当権等の登記が放置される結果となりやすかった。
また、いわゆる休眠担保権*1の債権額は、昔の貨幣価値なので額が小さく供託要件を満たしやすかったが、貨幣価値が⼤きく変動しない現代においては供託要件を満たすことが困難な例が⽣ずることが予想される。

そこで、放置されている抵当権等の登記をより簡便に、⼀定の要件の下で登記権利者のみで登記の抹消を可能とする仕組みが必要とされた。

*1 現在も抹消登記されておらず、明治・大正・昭和初期に設定された古い抵当権等のこと

新たな仕組み

解散した法⼈の抵当権等に関する登記について清算⼈の所在が判明しないために抹消の申請をすることができない場合において、法⼈の解散後30年が経過し、かつ、被担保債権の弁済期から30年を経過したときは、供託等をしなくとも、登記権利者が単独でその登記の抹消を申請することができるようになった(新法70条の2)。

① 公的書類等で法人の清算人の所在を調査しても所在が判明しなかった(現地調査までは不要)。
② 担保権者たる法人が解散して30年経過している。
③ 被担保債権の弁済期到来から30年経過している。

このような場合には、登記権利者のみで抵当権等の抹消登記の申請ができるようになった。

次回は、DV被害者等の保護のための登記事項証明書等の記載事項の特例について書きます。

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