【凧は飛ばない】

　昨日、ポケモンGOのモンスターを集めるために静岡県沼津市の千本浜に行った。昼下がりの時間帯で、風もなく、穏やかな天気だった。雲も少なく、駿河湾を一望することができ、雪を被った冬の装いの富士山を見ることができた。新年が明けて間もない三連休ということもあってか大勢の観光客が浜沿いの海岸を歩いていた。
　海岸の堤防に座って海を眺めていると、犬を連れて散歩にきていた地元出身の年配のふたりが会話をしているのが聴こえてきた。
「正月と言えば、昔はこの浜にもたくさんの子供が凧揚げに遊びに来たもんだ。けれど、今は誰も凧揚げをしなくなった。ゲームが増えたりして、子供の遊びの形も変わったね。空に凧があがった景色が懐かしい。」
　堤防に腰掛けて聞き耳を立てていたのだか、手元のスマホに目をやったあとなぜか少しだけ気恥ずかしくなった。スマホをズボンのポケットにしまい、改めて駿河湾の雄大な景色を眺めてみた。
　景色は変わらないように見えるが、そこに暮らす人たちの生活風景は少しずつ変わっているのだ。コロナ禍、ウクライナ戦争、物価高。これから僕たちはどこへ行くのか。凧が空を飛ばなくなった新年に想いを馳せてみた。