多科合同カンファレンス
今まで他施設と合同カンファレンスをすることはありました。
しかし自施設で、複数科で外傷カンファレンスをすることは今までありませんでした。
今回は
「次来る症例に対し、更に良い診療ができるように」をテーマに、カンファレンスを行いました。
集まってくれたのは救急科、放射線科、整形外科、集中治療科、外科。
症例は若年者、バイク対車。
救急隊の情報では低血圧を認めました。
来院時FAST陽性で、Open book型の骨盤骨折、右大腿骨骨折を認めました。
循環動態が不安定であり、かつ下腹部打撲痕もあり、腸管損傷の可能性が高いこともあり、CTを撮像せず手術室に向かいました。
開腹手術、創外固定、IVRの順に治療をし、ICUに入室しました。
シンプルに書くならばこのようになります。
しかし実際の診療となると、こうはいきません。
患者さんの状態が落ち着くまでには、
紆余曲折があるものです。
ただそれを前向きに捉え、次回に活かすことが、我々がすべきことです。
我々の施設では救急科が中心で話を進めますが、
すべて自分たちで完結することはありません。
各診療科とDiscussionの上、治療方針を決め、またどの順番で手技を行うかを決めています。
これが機能すれば各科のプロが治療することで良好な治療結果を得ることができます。
ただし上手く機能しない場合、例えばリーダーシップが発揮されなければ、責任の押し付け合いなどになってしまいかねません。
そうならないよう、各科とコミュニケーションを取り、また治療について普段から話し合うことが必要です。
今回は
・リスクヘッジとなるようなシステムの構築
・手術はどこで、どの順番で行うか
・では患者さんの状況が違った場合、どうするか(シミュレーション)
をメインに話しました。
Decisionをすることで学ぶことも多いです。
ミスから学ぶものも多いという考え方もあります。
ただシステムは、
患者さんはもちろん、後期研修医を守るためのものでもあるべきだと思っています。
他の診療科の場合、
Aという疾患にはBという治療、のように一対一対応でよい場合もあります。
しかし外傷診療はそうではありません。
時間的にも心理的にも余裕がないことが多い重症外傷診療を、少しでもストレス少なく行えるような土壌作りを行いました。
次に
手術や検査の順番というのは、施設ごとにベストが違います。
幸いなことに当院は手術室へのアクセスやIVRへのアクセスは非常に良いです。手術室にIVRが施行できる部屋もあるため、あとはどう活かすか、という話になります。
今回はIVRに先立ち創外固定を行いました。
創外固定先行のメリットは、骨性および静脈性出血に効果的で、また骨盤の安定性が早期に得られます。
逆に創外固定を先行するデメリットは、動脈性出血のコントロールが遅れる、また創外固定がIVRの手技や視野を考えると邪魔であったり、またIVR中にCTを撮像すると創外固定がピカピカ光って、体腔内の状態がわかりにくい事です。
では当院ではどの順番で行うのがよいか。
本症例であればどうだったか。
別のシチュエーションで腹腔内出血がなければどうか(これは私の経験に基づき、骨盤骨折からの静脈性出血が超多量であることが予想された場合、どうするか、という問いの投げかけです)。
などなど。
30分を予定しておりましたが、予想以上に意見が出て、カンファレンスは50分にも及びました。
各科の考え方が分かったり、また各々違う施設出身ということもあり、前施設ではどうだったか、などの経験をシェアすることができました。
そして外傷診療の戦略も各々深まったと感じました。
今後も一例一例を大切に、
前に進みたいと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?