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Subxiphoid Pericardial Window

初めてCardiovascular and Thoracic surgery teamの手術に参加してきました。
診断はChronic Pericarditis due to tubercurosisで、
術式はSubxiphoid Pericardial Windowです。

外傷において、Subxiphoid Pericardial Windowは心嚢液貯留に対する手術です。
診断的、また治療目的でもあるSubxiphoid Pericardial Window。
日本でも、このコンケン外傷チームでも経験がなく、経験してみたい手技でした。

コンケンでは、過去に心不全が既往にある患者さんの胸部外傷に対し、
救急外来にてエコーガイド下ドレナージを行ったことがある程度でした。
*漿液性であり血液成分なく、心不全の影響で心嚢液が貯留していた症例でした。

鋭的損傷の場合、多くは心損傷を疑う下記所見があり手術に向かうことが多かったので、Subxiphoid Pericardial Windowを鋭的損傷に対しても行ったことがありませんでした。

心損傷を疑う所見とは何があるでしょうか。
Beckの三徴、閉塞性ショックの有無も重要なのですが、

コンケンで習った事として、 
最初から開胸手術の適応は、
あくまで「心損傷を疑うかどうか」です。

それが
・受傷機転
 ・エコー所見
  ・McCornell sign
   ・Hypokinesis of RV wall
   ・Hyperkinesis of apex
 ・壁欠損
になります。


以下は手術手順および参考になったこと

・マーキングペンのマークのみだと消えやすいので、絹糸で痕を付けておく
・剣状突起から頭尾2横指に切開 止血しながら剣状突起へ
・腹直筋筋膜前鞘も切開
・剣状突起は縦割り 出血多いので止血しながら
・横隔膜の繊維が左右に走っているのが見える
・横隔膜頭側にあるPericardial fatを電気メスにて切ると、Pericardiumが見える
・メスにて突き刺すのではなく、薄く何回かスライスし切開
・色が変わったように見えれば心嚢腔目前 ペアンで開く
*慢性患者ではドレナージは小孔を開け少量ずつ
 →一気にドレナージすると肺浮腫になるリスクあり
 *急激なpreload増加に左室壁が耐えられずstroke volumeが下がり、また この影響や急激な変化に対応できぬ高い血管抵抗が影響するようです。
・ドレナージ後、慢性患者に対しては孔大きく開く
・人肌のぬるま湯で心嚢腔を洗い、出血がないかを確認
 *冷たいと不整脈をきたします。
・ドレーンは28Fr 先端は尾側背側に 
 *太いドレーンは慢性だからか、もしくは心外科だから?
  外傷チームではもっと細いドレーンを使用しました。
 *ドレーンが心臓に当たり、不整脈起こす可能性あり
・創部の尾側にくるように留置

自施設での適応を考えますと、
・心損傷を疑うも手術室に入るまで時間が少々かかり、ただ血圧が下がってきて心停止が懸念される状態
 *一度心停止起こすと、mortality rateはぐっと上がると言われています。
 *施設のlimitationとして、median sternotomyがすぐにできない場合はLeft anterolateral thoracotomyでcardiac tamponadeの解除を優先するべき場合もあるかと思います。

・エコーで描出しにくく、エコー下ドレーン留置が難しい状況での診断的手技

こんな場合は適応があるかなと思いました。

今回は初めてSubxiphoid Pericardial Windowの手術に参加したため、
心損傷を疑う状態や、
手技のまとめ、
また自施設での適応を考え、
まとめてみました。

これ違うんじゃないのとか、
こんな経験しましたとか
コメント頂ければ嬉しいです。

*間違った記載があった場合、速やかに修正します。

次回は心損傷の自分の経験を記事にしたいと思います。

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