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彼は配達員だった。勤続3年目の社員だ。名前は後藤という。 ピンポーン...... 10秒...... ピンポーン...... 5秒......7秒......いないのかな...... 「ちょっとお兄さん!郵便屋さん!」 振り向くと、数メートル先、開いたエントランスの自動ドアの向こうで花柄のマスクをした女性が彼に向かって「ダメダメ」と手を振っていた。 「ここの住人はね、みんな荷物は受け取らないから。置き配でいいの!ソーシャルディスタンス!」 彼が返事をする間