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【飲食店 日本とイギリスの給与形態の違いとは?】

皆様、ごきげんよう。安部直柔(アベ ナオナリ)です。
現在ロンドンでバーテンダーをしています。
バーテンダーを始めたきっかけは、『海外で暮らし、仕事をして、自分の知らない国でチャレンジしてみたい』という思いからスタートしました。

ここではそんな私のロンドン挑戦への記録やロンドンでの生活、自身のことなどを発信をする媒体として、noteへの投稿を始めました。


前回の投稿で『大公開/ロンドン バーテンダーの給与明細』について綴ったので是非そちらも読んでみてください。

今回は『飲食店 日本とイギリスの給与形態の違いとは?』について

給与形態の仕組み

イギリスの飲食店は時給以外にも、2つの収入がある。これはおそらく、飲食業界だけに限ったことだと思う。
前回投稿を見た人に気づいたの人もいるかもしれない。それは、給与明細の解説に見慣れないものがあった。

Tips Lyaness =カード払いでのチップのみ

Tronc Lyaness = サービスチャージ

これが何なのか解説していこう。
まず、

Tips Lyaness =カード払いでのチップのみ

皆さんご存知だと思うが、欧米諸国ではサービスを受けた側が、行った側に『ありがとうの気持ちを込めて』チップを払う文化がある。

ただ現代は、もう2023年だ。日本ではまだ現金主義という人や店があるが、イギリスでは現金を使わずにカード払いだけで、暮らしていける。
そう、チップを現金じゃなく、カードで払えるようになっている。

例をあげよう。

実際に私が飲食店に行った際にお会計が、£36- だったとしよう。通常ならそれだけを払うが、サービスしてくれた人にチップを£4- 払いたいとする。現金ならそのまま渡せば良いが、現金がないときに、カードの支払い額を£40- にして払うことができる。
実際の写真を見ると分かりやすいと思う。

Wine Bar SAGER + WILED にて

そうすると会計後に、会計システムと連動して自動的に、飲食代£36-、チップ£4-とレシートに記載される。
今回行ったお店では『その記載は出ない』と言われたが、私が勤めた飲食店では記載がでていた。

絶対ではないが、チップを払う文化が欧米諸国にはあるので、良いサービスをすれば対価としてチップをもらえる。本当に素晴らしい文化だ。
そして、カードチップの月合計額を働いてるスタッフ数で割り、給与として反映されるかたちになる。ちなみに現金でチップを払う方もいるので、それも同様に月合計額を働いてるスタッフ数で割り、現金支給される。これは給与明細には含まれない。

続いて、

Tronc Lyaness = サービスチャージ

これは飲食店にもよるが、一般的にレストランやバーで飲食をした際に顧客が注文した商品の合計に対して、12.5〜20%のサービスチャージをお店側が設定している。(%はお店に寄って違う。もちろんサービスチャージを取ってない飲食店もある)
サービスチャージは、お店側がチップの変わりに貰ってるものとして捉えてもらって良いと思う。日本でも、サービスチャージを取っている飲食店はたくさんある。

じゃあ何が違うか?

サービスチャージの行き先だ。
基本的に日本だとサービスチャージはお店側の利益にしかなってない。従業員の懐に届いてる例を聞いたことがない。
イギリスでは、このサービスチャージを従業員に分配する仕組みがある。
その分配する仕組みの名前が『Tronc』という。
Troncのシステムや分配方法がどうなっているのかについては、複雑なので割愛するが気になる方は調べてみると理解できると思う。
サービスチャージはお店の利益ではなく、働いてる従業員が受け取る利益という考え方が、イギリスにはある。おそらく欧米諸国全体に言えることだと思う。

ちなみに、チップとサービスチャージの収入は所得税が免除される。

時給以外にこの2つの収入があるから、ロンドンで1番下の役職でも、東京でのバーテンダー下積み時代に比べて、給与が高いということになる。
これが日本と同様に時給だけだと、月の手取りは£1,500-程度となってしまう。給与明細を見ていただければ分かるが、私は時給£9.5-だった。
ガクブルな時給だ。

結果、チップとサービスチャージの収入がなければ、バーテンダーの下積み時代と変わらないのだ。
これがイギリスでの飲食店従事者の給与のカラクリである。

本当にありがとう。チップ&サービスチャージ。

あっ、言い忘れてたがサービスチャージは売上に連動する。チップは月によって違うが現金とカード両方合わせると平均£200-くらい。
さらにちょっと複雑なのがチップもサービスチャージも出勤日数と連動してるので、病気で休んだりすると貰える金額が少なくなる。

有給休暇の仕組み

序盤に書いたが、私は正社員だが給与形態が時給制だった。ただ、正社員なので有給休暇が付与されていた。そこで日本とイギリスの有給休暇の違いを考察しよう。

日本

*勤務開始から6ヶ月後に付与(年次10日)
*勤務年数に応じて年次日数増加(勤続6年半で年次20日まで)
*未消化分の年繰り越し可(最大40日。ただし、取得年の有給休暇の繰り越し時効2年)
*退職時に未消化分を給与変換可
*退職時に有給休暇の権利リセット

イギリス

*勤務開始から13週で権利発生(週の就労日×5.6日(最長28日)の年次有給休暇)
*勤務年数に応じた日数増加無し(勤務年数に関係なく年28日まで)
*未消化分の年繰り越し不可
*退職時に未消化分を給与変換可
*転職時に有給休暇取得権利の引き継ぎ可
(例えば、1月1日から勤務した職場を6月30日に退職、7月1日に転職先での勤務開始した際に有給休暇の取得権利はそのまま引き継がれる。これは国民健康保険の番号で有給休暇を管理してるから可能)

要約するに、イギリスは毎年28日間(国の公休日も含まれる場合がある)の有給休暇が付与される。使わなければその年の有給休暇は消失する。だから基本的に皆んな取得率が100%になる。
対する日本は、繰り越し制度があったり、繰越の未消化分も含め退職時に給与に変換できたりするので取得率が低くなりがち。
正直なところ、取得率は制度より労働に対しての考え方や文化が違うと行った方がいいだろう。

ちゃんと休もう日本人!捨て去れ悪き習慣!

と心の中で叫んでいる。

ロンドンで働いてから見える日本の働き方

私は日本が好きだ。海外に憧れたことで、イギリスに住んでいるが、日本は本当に素晴らしい国だと思う。まあ悪い部分もあるが、それを差し引いても良い部分のほうが多いだろう。感じることは人それぞれ違うが、私はそう感じている。
海外の人達と仕事をして気づいたことは、日本人は真面目だし、周りに気を配れ、責任感のある人達が多い。だからこそ、『自分が休んでしまったら周りに迷惑をかけてしまう』そういったマインドになりがちだ。少なからず、私もそうだった。
ただイギリスに来て感じたのは、そんなマインドの人はほとんどいない。休んでも、同僚や会社がカバーすることが当たり前だから。
私も仮に自分がお店を始めたら、自分含め従業員の有給休暇取得率100%を目指したい。それが経営する側の責務だし、そういう環境を整えることで良いものを生み出すことに繋がるはずだろう。

為替レートで日本円にすると?

さあ、お待たせしました。お待たせしすぎたかもしれません。長々と説明して参りましたが、実際に当時のレートで換算すると日本円でいくら?と気になるところでしょう。

当時のレート(2022/6/30付)
TTB £1- → ¥161-
£2,202.63- → ¥354,623-


悲しいかな、東京で最後にマネージャーをした時よりも、ロンドンで1番下の役職のほうが、円に換算したら高かった。当時もこの計算を行ったが、悲しみと心苦しを覚えた。
残念ながら、今の日本は円安が進み、インフレが加速しているようだ。
皆んなの給与は上がってるかい?
帰国するのが不安だ。


若い子たちが、ワーキングホリデーを利用して出稼ぎ感覚で海外に行くのも無理はない。日本人で英語や現地の言語が喋れて、海外の文化に慣れれば。確実にどの国でも重宝される人材になれる。今後さらに海外へ出稼ぎに出る人が増えそうだ。
でもそんな人達も日本にいつか戻って、学んだ英智を次の世代に伝え、日本の発展に繋げてほしい。


次回『 ロンドン トップレストランで、バーテンダーをやってみた』

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