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藤井風カバー動画に見る音楽世界 by ワタシ解釈

風さんのカバー動画、
2010年1月の YouTube 投稿に始まり
上京した後も
渋谷公会堂でのライブの前の2019年10月まで
お兄さん主催のSolakaze 名義のものを含めると
200本近くある。

取り上げた曲の種類が、半端なく、広い。
昭和歌謡からポップス、洋楽、R&B…

私は No Music, No Life を標榜しながら
歌謡曲やJ-Pop、R&Bはほとんど聞いてこなかった。
恋愛ソングは歌詞が苦手だし
ハマるほど好きなメロディにも出会わなかったから。

それが、風さんのおかげで
聞いていなかったジャンルの曲も、なかなかいいね、となり、
もしかしたら R&B や Lo-fi HipHop も好きかも、うん、好き
という変わり様。

でも、YouTubeにオリジナルを聞きにいくと、
風さんアレンジの方がはるかに好きだったりする。

要するに、風さんが一番、てことなのだけれど、
何が違うのか、考えてみた。

カバーとは、オリジナルの再現ではなく、模倣でもなく、
パフォーマーの解釈による新しい世界の表現なんだ。

我が夫などは、オリジナルでなくては価値がないとまで思っているが、
クラシック音楽の世界では作曲家による演奏なんて、ほとんどない。
ベートーベンが弾くエリーゼのために、なんてないのだから。
また、同じベートーベンの第5交響曲(だったと思う)でも、指揮者によって
「火のような」とか「水のような」と例えられた演奏もあるらしい。
歴然たるパフォーマーの解釈。
ポップスの世界ではカバーが評価される歴史がまだ短く、
オリジナルのパフォーマーの声や容姿が欠かせない重要な要素だから
カバー曲文化が私のところまで浸透していないのかも。
そんな私が、こんなに聞きごたえのあるものとは思っていなかった。

では、風さんによるカバーの何が好きなのか。

音楽の専門的なことはわからない。
なので、私の感覚の話に過ぎないのだが、
まず、ピアノの超絶技巧。
バンドや吹奏楽団など、複数のプレーヤーが演奏するアンサンブルを
1人でやってる!
しかも、そのすごさが感じられないほど、軽々と!
1曲のピアノソロアレンジにどのくらいの時間がかかるのか、
その工夫と労力について知る由もないが、
カバー動画では、大変さを微塵も表に出さない。
風さんは10代の頃からプロ意識の塊だった。

プロ意識と言えば、
小道具や演出もサービス精神の表れだ。
アダルトちびまる子さんや Rehab などのウィッグや舟唄の徳利のような小道具があるものもあれば、
有り余る富のように小道具も演出もなく、それどころか撮影しているスマホが床に落ちても演奏を続けるものもあり、
またさらに、本能では小道具を忘れたことに気づく失敗編で種明かしをしてくれるものもあり、
いつも、みんなが喜ぶ方法を考えて、実行して、成功しているんだと感心する。

さらにアレンジ力。
2013年3月(風さん15歳)のU.F.O.~あの夏へはピンクレディ(作曲者:都倉俊一)と久石譲を合体させ、
2019年10月の Sorry ではジャスティン・ビーバーのオリジナルをR&Bに変え、途中にラップの曲(BUDDHA BAND の人間発電所)を混ぜている。
また、2018年6月の Hotel California ではギターをピアノにアレンジしている。
言うまでもないが、ポルタメント(ある音から次の音に変わる間の音程が徐々に変わる演奏法)のできるギターと鍵盤によって音程が固定されているピアノの違いを踏まえてのことだ。
曲調のアレンジも、2018年4月の Shake It Off をジャズテイストのR&Bに変えたり、2019年6月の Bad Guy を長調に変えたりしている。
あけおめ配信とねそべり配信で Fly Me to the Moon を演奏してくれたが、2つ違うアレンジで、
まさしく縦横無尽に音楽を操っている。
自分の声のキーに転調するのは当然だろうけれど
2019年5月の Shape of You みたいに、メロディーはそのままでコードを変えている、なんて
私にはもう未知の世界。
正直なところ、オリジナルより風さんバージョンの方が音楽的に豊かな感じがする。
エド・シーランのファンの方、お気に障ったらごめんなさい。
ただ、音楽の料理法って、色々あるな、という話。

そして何よりも私は、風さんの声が好き。
カバー動画の世界では、2017年8月の Look What You Made Me Do (Taylor Swift) の初歌以来、
「ずっと歌う人になりたいと思ってた」(引用:Artist on the Rise by YouTube, 2020)の言葉の通り、
歌声を聞かせてくれている。
響く低音、伸びる高音、
歌の世界によって
Close to You のささやくような歌声から
Beautiful や、映画に勝る Audition のドラマチックに歌い上げる声まで、
Alfie のかわいい歌い方から Stronger Than Me のちょっとふてくされたような歌い方まで、
多様な表現力で、丁寧かつ明確に、曲の世界観を歌っている。

そう、丁寧に。そして明確に。
私が聞いて思った限りではあるが、
オリジナルの世界を踏まえた上で
さらに風さんの世界になっている。
例えば、Lizzo の Good As Hell
オリジナルは、とても元気のいいお姉ちゃんが女友達を励ましてる感じだけど
風さんバージョンは、元気はいいんだけど、優しさがプラスされている。
そう、全部、優しくて、リスナーへの視線が上からでも下からでもない。

寄り添ってくれている。
感じがする。

オリジナルを聞いて、さらに風さんアレンジが好きになる理由は
そこかな。

最後に付け加えたいのが、詩の翻訳。
これがまた曲にぴったり。
翻訳のセンスまであるなんて。

長々と書き連ねたので、まとめておきたい。
風さんのカバー曲動画から見える風さんの才能とは
・ 超絶技巧のピアノ演奏力
・ プロになる前からプロ意識での演出
・ アレンジ力
・ 歌声
・ オリジナルへのリスペクトと共にリスナーに寄り添う世界観。

今、改めて、風さんの音楽の力に圧倒されている。

ここに挙げた YouTube の他にも、ぜひ読者ご自身で
お気に入りをみつけてほしい。


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