見出し画像

"Free" Live の世界 ~藤井風

7万人収容できる日産スタジアム
その芝生の真ん中に
グランドピアノ1台

こんなこと、風さんとチーム風以外、誰が考えるだろう。

野外を設定した最初から、
チームは雨の場合のことも考えていたはず。
ということで、少々の雨なら開催するだろうと当てにはしていた。

実際、少々の雨、なんかじゃなかった。
でも、テントもなかった。
ピアノの上にはアクリル板があったが、鍵盤と風さんには雨が。
雨でもこれでやろうって、他に誰が考えるだろう。

雨に濡れながら、「恵みの雨」という風さん。
そんなこと、他の誰が言えるだろう。
でも、雨でよかった。
風さんの髪の雨粒がきらきらしていたし、
鍵盤を拭きに来てくれたいつメンさんの大地さんたちに、にっこりしてアイコンタクト。
そんな気配りの人柄も見えて、よかった。
風邪引かないでね、と祈るのみ。

ライブという点で言えば、予想を超えるすばらしさだった。
ピアノはヤマハの最高級のコンサート用グランドピアノ。
マイキングは、直前の YouTube でミュージックスラッシュの代表谷田氏が語っていたとおり、
最高の音を届けてくれる技術。
そんなハード面を十二分に活かす風さんのピアノと歌声。
きらりではボツになったローファイのイントロ付きだったり、
もうええわの2番がラップになっていたり、
死ぬのがいいわのイントロが武道館でもやったピアノソロだったり、
ライブならではのアレンジがすばらしく、楽しく、
ピアノってこんなに素晴らしい世界を描き出すんだって、感動した。
それに、
風さん、絶対歌が上手になってる。
ずっずさんがスタッフダイアリーで「盤石の仕上がり」と書いていたのは
このことだったんだ。
エムスラの代表が「声量の安定感、はんばない」と言っていたのは
このことだったんだ。

本当にすばらしいライブだった。
無観客でも、スタジアムいっぱいの観客がいるかのように
ピアノから離れて四方に歩いて行ったり走って行ったり、
びしょ濡れの芝生に寝ころんだり、
私たちをお昼寝に誘ったり。
そんなパフォーマンスには、目の前にいない観客にも楽しんでもらいたいという
風さんの基本姿勢が表れている。
その観客は、世界。
MC がまず英語、続いて岡山弁というのも、世界が見えている証だ。
余談だが、風さん、英語も上手になっている気がする。

そして、「Free」が意味する明確なメッセージをみんなが受け取った。
唯一のカバー曲、マイケル・ジャクソンの Heal the World はコロナ禍の世界を癒したいという強いメッセージだろう。
(残念ながら、権利の関係とかで、アーカイブには収録されていない。)
MC で語った数々の言葉も、そのメッセージを帯びている。
たとえば
★空っぽの観客席を指して、「これが今のありのままの現状を表していま 
 す」を踏まえて、
★寝そべって「疲れてませんか?」と言うから、それはこっちのセリフじゃ
 ろと思ったら
★「今は疲れることや窮屈なことがいっぱいあるけど、みんな、休んでええ
 んやで」
そして
★「起こることには全て意味があるから、理由があるから、怖がらずに、び
 びらずに、行きましょうや」
 「俺ら兄弟、うちら姉妹」

観客がいないから、
他の音がしないから、
シンプルに言葉が入ってきたのかもしれない。

そう、これは Help Ever Hurt Never 精神を世界に広めるための荘厳な儀式だったのかもしれない。

無観客、雨、演奏、メッセージ、全てにおいて、このライブは伝説になるに違いない。

さあ、アーカイブをご覧あれ。
https://www.youtube.com/watch?v=4VUKDx0wfwY&t=1034s


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?