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風の詩

風の詩藤井風さんはきらりアフタートーク(YouTube)の中で
わしは詩を先に書いたことはないです
と述べている。
また
メロディに呼ばれることばを探して
でも意味のあることばを吐きたい

とも。

響きが大切
とも。

2021年9月の FM 802 の番組でも
DJ 落合健太郎氏の質問に答えて
同じことを語っていた。

メロディに呼ばれる、意味のあることば、これが風さんの一丁目一番地だろう。

その点から風さんの詩を見ると分かることがある
…気がする。


風さんの頭の中では常に「音」が鳴っているのではないかな。
風さんのオノマトペ、独特。
バイクの実技が「ぶんぶんぶんぶん」だったり
お姉ちゃんからのラインが「ぺんぺんぺんぺん」鳴ったり、
みんなからのコミュニティやチャットへの書き込みから
目についたものを「ぱぱぱぱー」と書き留めたり

NHK の Music Special では
何なんw ではワシということばのスピード感が必要だった
と述べてもいる。

「音」と「ことば」が
密接につながっているんだろうな。

だから、独特の「韻」が生まれる。

たとえば
罪の香りのサビ
   おっと 罪の香り
   抜き足差し足忍び足
   おっと 罪の香り
   逆らい難い嫌な匂い
   おっと 罪の香り
   気づいた時にはまだ早い
   ちょっと もうヤメたり
   全部消えて無くなる前に
ここでは「イ」の音で終わるフレーズが重ねられている。
(ぴんと来ない方は、各行の終わりを伸ばして言ってみると、「い」になっているのがお分かりいただけると思う。)

へでもねーよでは
   かと思いきや急展開
   自分次第で別世界
   作り変えられるみたい
   信じたい
   神様、力をちょうだい
   一人じゃ何も出来ない
   確かなものにしがみついていたい
各行の終わりは「アイ」という発音。
しかも、日本語の2拍の「アイ」ではなく、英語の二重母音 [ai] のような音。
(ぴんと来ない方は、ぜひ、音源に合わせて歌ってみて。)

日本語の歌でこんなに韻を踏むことができるんだって驚く。

しかも、音の遊びだけでなく、説得力のある意味を持つことばで。

前述の FM 802 の番組でも
母音を意識したり、この音で合わせたいと思ったりして
その上で意味のあることばを

と語っていた。


また、風さんの詩には、対になることばや相反する意味のことばが重ねてあることが多い。
帰ろうには、それがたくさんある。
   あなたは夕日に溶けて  わたしは夜明けに消えて
   あなたは灯ともして  わたしは光もともめて
   さわやかな風と帰ろう  やさしく降る雨と帰ろう

さよならべいべにも。
   煩わしいから 何も包まずにおくわ
   紛らわしいから まっすぐなことばにするわ
   気恥ずかしいから 置き手紙だけで許してな
のように。

罪の香りでは
   怠惰、理性、エゴ、欲望
という人間の罪が重ねられていく。

このようにことばを重ねたり対比させたりすることで、
余韻が生まれる。
自分の立ち位置を明確にできたり、客観的に見たりできて、
奥行が生まれる。


だから、
Mo-Eh-Yo は「燃えよ」であり「もうええよ」である。
私にとっては「萌えよ」でもある。

このような音と意味の融合を
無駄な曲は作りたくない(NHK、Music Special より)
という心意気で私たちに与えてくれる藤井風。

音とことばの天才、藤井風。
この天才を見て、聴くことができる幸せよ。

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