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シネマの記憶002 LESS IS MORE
昨日「モリのいる場所」を渋谷ユーロスペースで観てきた。最初に云っておくと、スクリーンに映し出される世界に、ストーリーらしきものがあるのかないのか、いや、たしかにあるのだけれど、特筆すべきことはほとんどない。それにもかかわらず、モリすなわち熊谷守一(クマガイモリカズ)の晩年の世界観がよく伝わってくる作品であった。
住まい兼アトリエを取り巻く小さな庭には、広大な宇宙がある。おそらく守一はそう感じ、あるいは考えて、晩年の30年間、ほとんどその小さな庭=広大な宇宙から外へ出ることがなかったのだろう。おそらく外へ出る必要も感じなかったに違いない。
そんなヘンクツ(?)な守一をこよなく愛し演じているのが山崎努。そして妻の秀子を演じているのが樹木希林。彼らを取り巻く俳優たちも、いい味を出しているのだが、なにせ山崎努の演技が素晴らしく、そして樹木希林という女優の全身から滲み出す存在感に強く惹きつけられた。彼女の凄みある演技にあらためて感じ入り、いつのまにか私は、樹木希林の姿をずっと追っていた。
今回のお題は「LESS IS MORE」としたが、映画を観終わった帰りの電車の中で、ふと浮かんできた言葉である。じっくり観察した虫やら植物やらのデッサンから、余計なものを捨て去りきってシンプルの極地まで到達すると、そこにじつに豊穣な世界が現出する。守一はそう考えていたに違いない。そんなニュアンスを込めてみた。
→映画「モリのいる場所」予告編はこちら
→熊谷守一美術館のウェブサイトはこちら
*画像出典:http://mori-movie.com
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