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シネマの記憶009 発熱する魂

 昼はハリウッドのスタント・ドライバー。夜は強盗犯の逃走を請け負うドライバー。昼と夜が「ドライブ」という行為でリンクしている。どちらにも感情が入る余地はない(ように見える)。

 そのクールで孤独な男を演じているのは、ライアン・ゴズリングというカナダ出身の俳優。ラ・ラ・ランドで知っている人は多いと思うけれど、カッコいいのだ、こいつが。

 この男、なぜかいつも口に楊枝をくわえている。どういう暗示だろう?と思いつつスクリーンを見ていて浮かんだイメージは、木枯し紋次郎。「あっしには関わりのねえこって」などとは言わないけれど、そんな雰囲気を醸し出しつつ、やっぱり関わって行く。

 つまりクールで孤独な魂が、あることをきっかけに変貌することになるわけだ。ライアン・ゴズリング演じるドライバーの場合、それは同じアパートに住む母子との出会いだった。

 クールで孤独な魂は少しづつ発熱していく。

 孤独な魂が孤独であるうちは保たれていたバランスが、その出会いを契機にゆっくり崩れ始める。いつのまにか口の楊枝も消える。そして昼の重力が増すごとに、夜の重力も増して来る。

 やがて彼女の夫が刑務所から出所してくる。その夫の背後には、大きな闇が広がっている。闇は次第に成長し、孤独なドライバーを飲み込んで行く。

 激しい暴力のシーンがある。たっぷりと血が流れる。

 若く美しい母親役を演じているのはキャリー・マリガン。「17歳の肖像」「私を離さないで」と観ているけれど、だんだんチャーミングになって行くね、彼女は。あ、違うな、「プライドと偏見」にも出演してたようなので、その時から観ていることになる。

 監督はデンマーク生まれのニコラス・ウィンディング・レフン。この作品でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞している。

画像出典:映画.com
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