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ワルプルギス前夜(イブ)最終話

ワルプルギス・イブ
最終話
「EVE」

神保町古書センター内
オカルト、心理学、宗教全般を扱う専門古書店「蛭子堂」
仁絵は50代の美しい美魔女店主


彼女の目的はエメラルドタブレットを手に入れること
エメラルドタブレットとは
中世の時代の言い伝えの魔導書

正確にはタブレット(板)
書板である。

つまり石板や、木板に書かれた本である。

何故、古代の遺跡の多くは石板なのか?

それは学術的に答えが出ている。

レコード(記録)は
紙が条件を揃えても1000年から1500年しか耐久性がなく腐ってしまう。
石板は3000年から5000年耐久するからである。
実はハードディスクは耐久性が30年から50年である。

だから最近のデジタル作品は後世に残らない可能性の方が高いのである。

ソニー・ピクチャーズは
デジタル映画のマスターフィルム物理保存に尽力している。

かつての劣化したフィルムをデジタル化
デジタルで作ったものをフィルム化しているのである。保存にはフィルムのほうが耐久性があるからだ。

レコードは100年もつが

CDは30年で経年劣化してしまう。
プラスチックとデータが保存されている金属フィルムを貼り付ける接着剤の耐久年数がすぎると
剥がれて
そこに酸素が入り酸化して金属が腐るからである。


磁気テープも磁気ディスクも
磁気で電気信号を転写しているのだが
ハードデイスクも光ディスクも基本は
金属に電気信号を小さい窪みにして焼き付けている構造。

「微細な電気」で小さい傷をつけて焼いている本なのだ。


その電気は目に見えぬほど小さい「電位」である。



データは
クラウドで保存されても改変され続け、オリジナルを失う可能性の方が高い。
隔離保存していないデータはいずれ生成AIと一体化してしまうだろう。

「物による物理的な保存」

古代のそれが石碑
石像なのだ。

石碑というのは後世に残す手段として最適で
コスパが良いものであるのだ。

葬送のフリーレンというメガヒット漫画でも
勇者ヒンメルが、長く生きる最愛のエルフのために
絵画、銅像、石碑、石像を

思い出の記録として残す旅をしている。

エメラルドタブレットは
エメラルドという硬度が
ダイヤモンドに及ばないものの
鉱石では硬いという
物質に刻まれたという記述がある。
山のような大きさ


中世のエメラルドタブレット

読者家である
仁絵にはエメラルドに文字が刻まれたのは嘘である。
とわかっていた。

エメラルドは硬さの割に粘度が足りなく
割れやすいのだ。

ダイヤモンドも硬いが圧力に弱く
簡単に粉砕されてしまう。

山のような大きさも、エメラルドも比喩表現である。
タブレット、あるいは本であるということすら比喩である。と
仁絵は考えていた。

仁絵「だから、、、エメラルドタブレットの正体は、、、、『あれ』のはず。

ただそんな事があるのかしら、、、
もしあるとしたら私の使う魔法どころじゃない、、、
人類の未知の、、、」

仁絵はエメラルドタブレットのおおよその正体を掴んでいた。
ただ、ミッシングリンク(失われた輪)がまだある。

そんな事が人類にできるのか?

レジの整理をしていると
1通の封筒が机にあった。

WALPURIGS NACHT

「ワルプルギスの夜」とドイツ語で書かれている。

封をあけると内容は
日本の中野で数十年ぶりに日本の魔女達の集まりがあるお知らせだ。

4/30から5/1まで

その日は確か、、、、そしてその日は来た。

麻布の
日赤医療センターの中の小児科に本を届ける日だ。
ゴールデンウイーク中も
難病を抱える子供達とご両親、医療関係者は病院にいる。

看護婦
「いつも助かります。仁絵さん。
素敵な絵本や、
難病に苦しむご両親を救う
メンタルケアの本の参考になる本。」

仁絵
「役に立つなら古書も喜びます。」笑顔

この病院は
難病の新生児、小児が日本中から集まる

仁絵も子供を失っている。
現代医療でも命を救うのは不可能だった。
生後二週間での心臓胸開手術は
新生児の記録的な意味で貴重な手術となり


手術は成功した。
しかし
彼女の娘は生まれてわずかで体力がなく亡くなった。

しかしその後同じ病気の心臓病手術の手本となり
沢山の命を救うことになった。

自分の子供の命が
その後の命のバトンを繋いだのだと仁絵は言い聞かせつつ。

まだ、時間を戻したい気持ちをほんの少しだけ抱えていた。

本棚に入れ替えで本を並べていると
自分の差し入れていない本が、、、

他にも本の差し入れをする方がいるのだろう。
偽科学、偽宗教の本も混ざっている。

辛い現実に
可能性、夢を与えるために
いわゆる「オカルト」や「占い」は
心の支えとして必要かもしれない。

「水の記憶」
「幸せを呼ぶ法則」
「お金持ちになる方法」
「古代レムリア文明、縄文時代のパワーが蘇る」

、、、、、、

「子宮の声を聞け!」
「子宮でイケメン占い」

「龍神が見える方法」
「誰にでもチャネリングができる本」
「フリーエネルギーでもうお金には困らない」

、、、、、、


仁絵
「、、、、、詐欺臭がする本ばかりだけど
私が嫌でも、ここの本の選定をするわけにはいかないし、、、
取り除くわけにもいかないか、、、、」

本の入れ替えを終わると
看護婦長の井崎さんに挨拶し
小児病棟ID認証のカードを使いエレベーターをおり
ロビーに

近代的なこの病院内には
ターリーズコーヒーが入っている。

ブレンドのホットを頼み席に座ると

聞き慣れた声が聞こえてきた。

アンドー
「マジっすか?この水?知能があるんすか?」


「ええ、純度が高い水なんでお高いですけど
健康にお金使わないと。
毎月10リットルから配送無料です。」


アンドーが入院服でコーヒーを飲みながら
また詐欺師に高額商品を売り付けられていた。

定番のシーンを見るような安心感。

のび太がいじめられてドラえもんに
泣きつくような。

カツオが、波平の言いつけを守らず
怒られるような。

戦隊ヒーローが
どんなにやられても
俺たちにはな仲間がいる!と立ち上がるような

そんな硬い展開を今日もしているアンドーに感動していた。


「よく考えてください。
この世界は水で溢れているんです。
空気も水分でしょ?海も水分
大気から海まで全て水分。
僕たちの体もです。
その水には知性があり
我々をコントロールしています。
不純物がない純度100%の水ですから
神様のエネルギーもダイレクトで届きますよ!」


アンドー
「水が、、、、俺達の正体!?」


「さすがアンドーさんその通りです!!」

話を聞いてやれやれとタバコを吸おうと仁絵がした時
ああ、、、ここ病院だった。敷地内での喫煙はできない。

100円ライターを出して火をつけ。ニヤリと笑う。

仁絵
「アンドーさん?入院ですか?」

アンドー
「ヒ、仁絵さん!!!!ぐ。偶然すね。
入院す。入院す。ストレスで胃と腸が壊れて。」

仁絵
「ストレス?」

アンドー
「はい、、、担当のパワハラ漫画家達が、、、もう全然日本語通じなくて。」

「どんな事されたの?」

聞き出すともうそれはそれは大変な内容だったので箇条書きで


  • 差し入れ弁当が嫌いだと差し戻し

  • スケジュールを間違えたのは作家なのに逆ギレ

  • 話を編集者に作らせる

  • 原稿遅れているのにSNS、とゲーム、ギャンブル

  • 読者とレスバトル、業務秘密内容SNSでバラす

  • 同業者を事実無根で誹謗中傷、注意したら無視し出す

  • 日本語の使い方が違うので指摘したら無視し出す

  • 女性アシスタントをレイプし訴訟問題へ

  • 男性アシスタントに暴行で訴訟問題へ

  • あれは俺の漫画のパクリだからやめさせろと他人の作品に圧力

  • 変な宗教に入ってて勧誘される

  • 朝からお酒飲んでる

  • 契約書読めてなくて、違法行為ばかり

  • 漫画家が編集者や、デザイナー、印刷所の人に小間使い扱いな発言

  • 各所に平謝り

等等
自分がされただけではなく
先輩編集者達がされてきたことも全部話してくれた。

アンドー
「あいつら気狂いっすよ!」

本音を吐き出すアンドー。

これが
対漫画家と編集者の軋轢の正体である。

韓国人がああしたこうした。
日本人にああされたこうされた。

でいがみ合うのだ。
自分がされたことと、されてないことが融合してしまう。

本来は実際にされた人と関係者だけが怒っていい。

私達の祖先がした事がどこまで私達の責任か?同様に

他人の漫画家がした事
他人の編集者がした事は一般論化してはいけないのだ。

ただ
そういう人種という記録(レコード)だけは共有されてしまうので
憎しみ、ヘイトだけは継承されてしまう。

仁絵「大変だったわね、全部同情する。
作家はみんな異常者達なのよ。そんなの作品読めばわかるじゃない。
でも、、、編集者さんも
基礎知識だけは身につけてね?」

パチッという音が鳴る。


アンドー「いたっ!!!」


驚くアンドー

脇腹に百円ライターの着火装置を外したもので電気ショックを与えられた。

アンドー
「それ!電気ビリビリじゃないすか!ガチャガチャでよくあった!
小学校の頃前の席のやつにやって、授業中驚かしたことあります。
なつかしいな!」

授業中に前の席の子に
電気ショックをする碌でもない少年時代だった事を
ナチュラルに話すアンドー。

基本的にアンドーは裏表がない良い人間なのだ。
反面、判断力や思慮が圧倒的に足りない。


仁絵

「純度100%の知性の水。興味あります。
お話ししていただけます?」

男に視線を向ける。


男、新しいカモが来たとニヤリと笑い商品説明を始める。

「純度が高い水ほど、神の領域に近くになります。
水道水のカルキや、不純物を取り除いた水になります。
ストレス性の胃腸炎には絶対いいです。」

仁絵「不純物?ミネラルは不純物にあたりますか?」

男「ミネラルもほとんど入らない純水。その名も商品名『純粋』
1L9800円です。」

純粋のロゴ「純烈」のパクリのデザインだった。

にっこりと笑い「購入します」即決で一万円を払う仁絵。
お釣りはいらないので
ちょっとお手伝いしてください。と2人を待たせる。

ターリーズから水道水をもらってきて
その横に「純粋」

仁絵
「アンドーさん手の平ををテーブルに置いて」

アンドー「はい。」

水道水の水をテーブルに垂らす。
手のひらに水がつたう。

仁絵「ここの水のところに電気ビリビリすると手のひらどうなる?」
アンドー「電気ビリビリします。」

仁絵容赦無くカチッとテーブルの水に電気ビリビリする。

アンドー「、、、?あれ?痛くない。」
仁絵「これくらいの電位では小さくて伝わらないの。じゃこれはどう?」

カチッ

アンドー「ぎゃあああ、いったああ!!!!」

「、、、そ、それは?」

仁絵「眉毛を整えるシェーバーのカミソリを外したやつ。単三電池」

「これくらいの電位があれば水分の
カルキやミネラル、ナトリウムを使って電気が移動する。」

アンドー「電気て水を伝うんじゃないんですか?」
仁絵「小学生にはそう教える。けど事実じゃない、本当は」

「水分中の鉱物分子を通じて電気が移動する。

雷は空気中のチリや埃の摩擦で生じるの。

だから火山の噴火では
噴煙の中に雷が発生する。
水の中にある塵にプラスマイナスが発生するからリニアモーターカーみたいに直流する。」


だから、、、と付け加え

「純度100パーセントの水なら電気は通らない。そんな純水あるとは思えないけどミネラルや不純物がなければ電気は通りにくいことは確かだから、、、、」

「この水持っていただける?」


男に買った水を持たせる仁絵

男「な、何をする、、、つもりですか?」

アイフォンの充電器
サンダーボルトコネクタの部分を引きちぎるとコードが出てきた。

そのままターリーズカフェのテーブルにあるスマホ電源に
充電器をさす。

「この100Vの電流が流れているコードを
今貴方が持っているペットボトルに入れるとどうなる?」


仁絵がいやらしく笑う。


「し、、、失礼します。お買い上げありがとうございました!!!!!」

水は電気を通さない。
むしろ散らせる。
水で感電するのは、その水分の中の鉱物(ミネラル)のせいなのだ。

そして人が必要なのは「体を移動可能な流動的なミネラル」で
その移動方法として「水分が必要」なのだ。

血液が代表的なものそのもの。血液は鉄である。
それを身体中に瞬時に移動させるために
水という交通手段を使うのである。
鉄が客であり。運転手だ。
それがナトリウムの場合もあれば、糖の場合もある。

体に運ぶ、無害、無機質なものそれが水である。

アンドー
「じゃあ、、水が知性があるってのは」

仁絵
「科学的にも真実的にも100%あり得ない。」


人の記憶を記録するなど知性があるとすれば答えは一つ。

  • 磁気テープは何を使い音やデータを記録するか?

  • ハードディスクやCDは何で金属に傷をつけているか?

  • 水の中を移動するものは何か?(ミネラルとは鉱物のこと)

  • 脳が思考する時出すのは「何信号か?」

  • 筋肉が動く時出るのは何信号か?

  • 嘘をつくと出る反応は何か?

  • 地球のコアは流体金属である、回転すると発生するのは何か?

  • 地球内にも宇宙空間にも共通で存在する人間が知っているエネルギーの一つは何か?

  • 意識とはニューロンの「何」ネットワークのことか?


答えは「電気、電磁気」である。

宇宙や生命の正体は水ではなく

電気そのもの。


そもそも全知全能の神ゼウスは雷の神である。


そして微細な電気から
大きな電気まで
どこから生まれたのか謎に包まれており。

生命が生まれるときに入る電源

電気のスイッチの位置
やる気スイッチの位置も未だわからないのである。



地球のコアの金属流体が回転することで磁気シールドが発生し。
太陽の有害な放射線から守っている地球の奇跡も
全部電気の力。

仁絵
「EV アースね。EV EARTH。エヴァース、、、 EVE」

アンドー
「じゃあ、、フリーエネルギーとかありえるんすね、、、もう経済的困窮は地球にはないすね。」

せっかくいい事言ったのに
この人に話しても無駄だな。と思い時計を見ると3時をさしていた。

!!!

ワルプルギスの夜の集いが始まってしまう。

急いで駐車場に停めていた赤いポルシェに乗る
エンジンボタンを押す。

ハンドルの円を魔法陣代わりに
呪文を唱える仁絵。

麻布の交差点から青山墓地を抜け四谷に至るまで
進行方向信号は全て青になっていた。

前方にウーバーイーツの自転車が
トラックの左折に巻き込まれそうになっている。

指をくるっと回し息を吹きかけると
ウーバーイーツの自転車は内輪差に巻き込まれずに内側の歩道に吹き飛んだ。


多くの人にとってのちょっとした奇跡が

魔法使い達の手によって生み出されているのだと知ったら
きっと天地はひっくりかえるだろう。

青信号で新宿まで来たとこで渋滞だ。

新宿の渋滞だけは流石に魔法では解消できなかった。


渋滞中BGMにメガデスのトルネードオブソウルをかける

OZの魔法使いのヒロインドロシーは竜巻(トルネード)で魔法の世界に飛ばされる。
エメラルドシティにドロシーは向かうのだ。
緑の魔女。GREEN QUEEN。

エメラルドタブレットの事を
これから会う他の魔女達に聞いてみたいと
仁絵は考えていた。

指をリズムに合わせて掌に
緑の光を生じさせる仁絵

・エメラルドタブレット。
・山のような大きさ。
・書板。

もう答えはわかっていた。


そうエメラルドタブレットとは

それはオーロラのことである。


https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%A9


錬金術師の祖と言われるエルメス・トリスギスメス

その名は3倍に等しいほど偉いヘルメスという意味

ヘルメスの文献の多くには
東洋の魔導士と西洋の魔導士が交流していたと記録がある。

3倍とは
東洋と、西洋、、、「三体」が一体化したという比喩の可能性がある。
3つ目の文明とは?中東?

その空想にふけりながら
今日、中野に集まるという
日本の魔女達に会いに「ワルプルギスの夜」に向かう。

まだ日は暮れていない
ポルシェをオープンにし
アクセルを軽く踏み込む。
一気に加速し飛ぶように青梅街道を走る。

黄昏時の空を横目で見て
呟く

「いずれ、、、娘には会える」

空に記憶があると
世界中に古代から伝わっている。

アーカーシャは
サンスクリット語で「空」



あとがき

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