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「オランダのトランプ」ことウィルダ―氏が圧勝、極右・自由党躍進で移民制限は必至

オランダ総選挙は予想外の結果に!極右政党PVVが大勝利


オランダやばい…!

昨夜、出先から家に帰ってきてテレビをつけて見た選挙結果に、私は思わずこう言ってしまいました。いやはや、誰がこの展開を予想したでしょうか!

私たちは、オランダ最大の政党になりました!オランダはオランダ人の手に戻り、難民の津波は制限される!

下院150議席中、35議席を獲得して最大政党となった自由党(PVV)のヘールト・ウィルダ―氏は、勝利の演説でこう叫びました。同党はオランダにおけるイスラム学校、コーラン、モスクの禁止といった極右政策で有名ですが、今回の選挙戦ではちょっと口調をマイルドに転換。「移民制限」と「保険制度改革」に争点を絞り、イスラム政策については「今は冷蔵庫に寝かせておいてもいい」と発言をしたので、これまで同党を敬遠していた右派の人たちを一気に惹きつけたようでした。

右派政党の「VVD」「民主フォーラム(FvD)」「JA21」などからPVVに票が集まった

一方、2位の左派連合「緑の党・労働党(GroenLinks-PvdA)」も前回の17から議席数を伸ばしたものの、25議席にとどまりました。極右政党に圧勝され、ピシャッと平手打ちを食ったような形になりました。

GL-PvdAのリーダー、フランス・ティマーマンス氏はこの結果を受けて、支持者に向けて熱く語りかけました。「皆さん、少しの間、お互いを抱きしめてください。(中略)…オランダでは、みんな平等です!あなたが誰の側に立ったか、あなたの両親が、あなたの祖父母がどこにいたかに関わらず、あなたはここ(オランダ)に属している。そして、戦争の起こった地域に住み、暴力や戦争から逃れたい人には、GL-PvdAの政治では、オランダは受け入れると言いたい。それは決して変わらないことです。(中略)……われわれが民主主義を守るときが来た!」

選挙結果を受けて、感情を高ぶらせながら熱く語るティマーマンス氏

彼の演説は力強く、感情的で、みんなの心を動かすものでした。

「しかし、なぜこういう情熱的な演説がが選挙戦で見られなかったんでしょうかね」「今さらもう遅すぎる!

テレビのコメンテーターなどはきっと左派が多いのでしょう。みんなこの選挙結果に動揺を隠せないような感じで、口々にこのようなコメントをしていました。

オランダ人は新しい政治を求めている

今回の選挙のもう1人の勝利者は、ピーター・オムジヒト氏です。彼が立ち上げた新党「新社会契約党(NSC)」は20議席を獲得。新党結成からまだ3カ月しか経っていないことを考えると、これは驚異的な数字です。

オムジヒト氏の選挙結果を解説する新聞記事「Het Parool」より

前回の記事で書きましたが、彼は前政権の児童手当事件を鋭く凶弾した「正義の味方」として新星のように現れ、首相の権限が強くなりすぎた古い政治をぶっ壊す存在として国民の支持を集めました。

一方で、前回の最大政党だったVVDは24議席で3位に転落。前回から10議席減るという痛い結果に終わりました。結果分析によると、多くの票がPVVに流れたそうです。このほか、前回の政権を担っていた中道右派のキリスト教民主党(CDA)、中道左派の民主66(D66)、キリスト教連盟(CU)もそれぞれ惨敗。特にCDAは過去に40議席以上を獲得するメジャー政党だったのに、今回の総選挙ではわずか5議席に……。支持者がオムジヒト氏のNSCや農民市民運動党(BBB)に流れ、10議席も減らす結果となってしまいました。

「有権者の声を十分に聴けなかった」と、VVDの党首ディラン・イェシルゴズ氏

この結果が示しているのは、既存政権にうんざりしたオランダ人が新しい政治を求めているということ。極右政党が勝利したことは残念ですが、3世代経っても政治が変わらない我が国の現状思うに、新党の躍進などは羨ましい気もします……。

右派政権か、幅広い中道か?

さて、地殻変動が起きてしまったオランダの政治。これからどうなるのか?
まず、みんなが気になっているのは、どの政党が組み合わさって連立政権ができあがるのかということ。さすが多様性の国、オランダにあっては、今回の選挙も26政党が参加し、16政党が議席を獲得。最大政党でも35議席なので、最低でも3政党が集まらないと過半数の議席を獲得することができません

世論調査によると、連立政権で「右派」を求める人は39%、「左派」と「中道」はそれぞれ22%、23%だった

第1党となったPVVの最大のテーマは「移民の受け入れを制限すること」。そのため、VVD、NSC、BBBとの相性はいいと見られています。PVVは保険制度で「最低自己負担額をなくす」など、左寄りの政策を掲げており、この点でもNSCとは共通点がある。しかし、NSCもVVDも選挙前に「ウィルダ―氏とは同じ政権内に入りたくない」と表明しているので、党内でどう話し合って折り合いをつけるのかは興味深いところです。

もしも、どこもPVVと組みたくないということになったら……第2位となった左派GL-PvdAがVVD、NSC、D66あたりと、「左右かなり幅広い中道」を形成するという見方も出ていますが、これはきついんじゃないかなあ…。専門家などの間でも「右派政権でまとまる」との予想が多いようです。

それから、どうなる?

PVVを中心とした右派政権が成立すれば、これまで外国にオープンで寛容だったオランダは、内向きになってしまう可能性があります。ウィルダ―氏の勝利で、EU離脱説も飛び交います。

オランダみたいな小国が内向きに閉じることは得策とは思えませんが、いずれにしても移民の受け入れはかなり制限されるようになるでしょう。知的労働者なんかは優先されるかもしれませんが、難民、低所得労働者、留学生などには厳しい状況になりそう。

ウィルダ―氏の勝利が1面をにぎわす本日のの新聞

オランダに住む外国人の私にも影響は及びかねません。思わず、今の居留証の期限をチェックしてしまいましたが、来年7月に切れる……やばい。無事に更新できるでしょうか……?

世界中で物価が上がり、戦争で難民が溢れ、ポピュリズムやナショナリズムが台頭する現在。オランダもその例外でないことに少なからずショックを受けておりますが、今後の状況を冷静に見つめていきたいと思っています。


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