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私の喫茶店体験の原点

喫茶店は、私にとって特別な場所だ。

今から20年ほど前、新卒で社会人を2年経験してから、私は人間関係とか働き方に嫌気が差し、フリーターとして喫茶店で働き始めた。
確か、1日10時間は働いていた気がする。
休憩時間は、お昼の賄いを食べている時間だけ。
だいたい15分ぐらいで終わらせて、次々と順番にホールスタッフで交代して食べていく。
それもカウンターで、お客さんの隣にちょこんと座って。
当時はそんなもんかと思っていたけれど、色んな意味で緩かったなぁ。
今はそんな無茶な働き方はできそうにないけど、当時20代前半の私は若さで乗り切っていた。
それでも、2Lぐらいの業務用の重たいドリップポットを右手で持って大量の珈琲を淹れ続けていたら、右肩が凝りまくって大変だった。
若いのに鍼治療に通ったぐらいだ。
ブレンド珈琲お代わり自由のお店だったので、一度にたくさんの量の珈琲を日々淹れていた。

忙しいお店で、平日のランチどきは相席が普通、土日なんかは行列がほとんど途絶えないようなお店だった。
常連さんも多く、○○さんはブレンド熱め、パンはよく焼き(よく焼いたもの)、○○さんは1杯目のブレンドはブラック、2杯目はミルク付きで、といった風に、お客さんごとの好みのオーダーを全部覚えた。

今思うと過酷といえる労働だったけれど、当時は本当に楽しかった。
なぜあんなに楽しかったんだろうか、と今でも思う。
珈琲を淹れたり、サンドイッチを作ったり、お客さんとお話しするのも楽しかった。
閉店後に、残り物のパンやスープで夜の賄いをいただきながら、バイト仲間とおしゃべりするのもちょっとした楽しみだった。

私にとっての喫茶店体験の原点は、従業員側ではあったけれど間違いなくあのお店だ。
珈琲豆は自家焙煎、パンもお店で焼いていて、何を食べても美味しかった。
アウトローな人たちも受け入れられていて、特攻服を着るような方々もいらしていたけれど、店の中では普通のお客さんだった。
あの賑わいや活気、それでいてホッとする雰囲気は今でも鮮明に覚えている。
そこでの経験は、確実に私の人生の血肉となった。

喫茶店、カフェごとに、そのお店でしか味わえない「味」がある。
食べ物や飲み物の味だけではない、インテリアや店全体を包む空気感、人のあたたかさ、居心地の良さ、等々。
そういったものを体験したくて、私は喫茶店やカフェを訪れるのかもしれない。



ということで、マガジン『カフェ思案』の連載をぼちぼち始めようと思います。
私がカフェや喫茶店について思うこと、色んなお店に行った記録等を書いていきたいと思っています。

マイペースに不定期で更新しますが、読んでいただけたら嬉しいです。

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