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日本の保険流通業界の展望について(私見) 2019年 前編 1~5

日本における保険流通において、将来に渡って大きく変わりそうな道筋出てきたのを実感している。自分がお世話になっている業界のトレンドをまとめて行くことは今のメンバーや後進のためにも役立つと思うのであくまで私見であるが力を入れて記述していきたい。

目次

1.保険会社が代理店を設立、買収、併合するトレンドはなくならない
2.商社もビジネスとして保険を狙う?
3.銀行や証券、信販も金融機関はFD、人口の絡みから保険をもっと深掘りする
4.自社の顧客データを元にもっともカジュアルでニーズが顕在化している保険から攻めてくる事業会社
5.保険会社は優良な代理店には手厚い支援をし、自社の専属には鞭をうち、自社で顧客の接点を持ちソフトランディングを狙う
6.独立系の保険代理店はどうすべきか 保険会社から迫られる取り潰しor合併 〜生き残るには最大限の守りを固めることが最優先〜
7.顧客に支持されるチャネルこそ生き残る 顧客が求めている価値を提供できるかどうか
8.選ばれる人は選ぶ人 自分の価値を最大化する投資をし、実行し続けよう
9.副業か複業か福業か、顧客に最大の価値提供をできる人になれば保険は売れていく 今成功している人たちから感じるもの
10.テクノロジーを味方につけて営業を活性化しよう サバイブするために最低限やるべきこと


1.保険会社が代理店を設立、買収するトレンドはなくならない

年始早々に以下のPRがきてびっくりした。直販3000人以上のコンサルタントを抱えているマニュライフが乗合代理店を設立したというもの。代理店を直資本でもつのはこれで何社目だろう。マニュライフは乗合代理店委託数も相当ある中で自分でもやるとのこと。やはり直販から代理店にいく人間が絶えなかったのだろうか。

ちなみに自社で直接的に代理店を設立したのは

オリックス生命が2012年にオリックス保険コンサルティングが記憶に新しい。

プルデンシャル生命は過去の買収などで以下の代理店を。

日本生命はその当時最大手であった訪問型の保険代理店を買収している。

そのほかにもショップとして2法人を買収している。

2015年にはライフサロンを買収

2017年にはほけんの110番を。

その他第一生命、住友生命も保険ショップや訪問型の代理店をチャンスがあるとどんどん購入している。

東京海上についても直接の代理店を2002年から開始しているが直近で200名を超える陣容になっている。

顧客が自分の保険商品は複数の保険会社の商品から自分で比較検討して選択したいという流れが不可逆になった、というのを保険会社の上層の方々がしっかりと理解しているからだ。自社の顧客をこれ以上流出させないための現実的な顧客囲い込み戦略の一つとして実行している。

当然付随して他の保険会社の商品戦略やキャンペーン、経営支援策から募集人に対する教育やプロモーションなどがリアルタイムに把握できるようになる。

また優秀な保険営業の活動やノウハウが採取できる可能性もあるので投資対象としてはリーズナブル。日本生命のM&Aのご予算は1.5兆

こうなってくると、自社に乗合代理店がないこと自体が経営の意思決定の制度やスピードを落とす可能性が出てくるので、ゆくゆくは全保険会社が動く可能性が高い。


2.商社もビジネスとして保険を狙う?

これは誤解を招くかかもしれないが、すでに商社はものすごい金額の保険量を取り扱っているし、積極的に保険代理店を買収している。

例えば三菱商事の子会社である三菱商事インシュアランス株式会社では201億の収入保障保険料を取り扱っている。(損保18社、生保11社、社員139名)手数料率が損保のみで20%だとしても手数料で約40億以上
一人当たりの生産性でいうと年間2800万以上。とんでもないレベルである。

様々な転職系のサイトから引っ張ってくると450万くらいが年収の平均なよう。派遣も多そうなので利益は相当額出ているはずだ。

そういった中で伊藤忠商事はほけんの窓口への出資比率を上げている。2017年3月のIRでは34.5%だった出資比率。現状はどうなっているかわからないが、IRから予測するに業績は絶好調で増資している可能性は十分ありえる。(配当金もたっぷり)

保険の窓口のIR

伊藤忠についてはさらには積極的に保険会社とコラボを行おうとしている。朝日生命と過去に代理店を立ち上げている他、日本生命とはチャネルと製品開発を一体で行おうとしている。まさに垂直統合で保険流通における面を一気に取ろうとしている。先の日本生命とのM&Aとの動きを合算して鑑みてみれば

・LPP=1000人
・保険110番+ライフサロン=300人
・保険の窓口グループ=4000人
となり、代理店のアクティブな営業マンのうちの5パーセント程度に一気に販売をできることが可能なチャネルを持っていることになる。

もともと伊藤忠は保険会社の設立に興味があったとされているが、流通だけで十分儲かるじゃないか、と舵をきっていても全くおかしくない。

これ以外にも丸紅や双日、豊田通商なども参加に保険事業部は相当な取り扱いがあり、虎視眈々とビジネスの機会を狙っている。

商社の既存の取引先の法人保険を強化したり、第三分野を真剣に取り組むだけで間違いなくとてつもない販売量になる。現在は特に何かを抜本的に変えなければならないということはないが、来るべきタイミングが来たら、一気に攻め入ってくる可能性もある。もしここにコンサルティング力のある販売部隊が加わり、リードセールスをかけて行くと業績はとんでもないことになりそう。


3.銀行や証券、信販も金融機関はFD、人口減少、歴史的な低金利など複数の要因の絡みから保険をもっと深掘りする

空前絶後の低金利。三菱UFJ銀行を始め実質業務純益が丁重な金融機関はいかに窓口での金融商品の販売を通じて利益をあげるかを画策している。

地銀はもとより野村證券も相当な保険の販売手数料を得ている。
変調があるな、と感じているのは彼らかが今までの一時払の円建て終身保険、外貨保険ではなく、平準払いの医療保険なども積極的に販売するようになって来ているのである。

福岡の地銀である西日本シティ銀行は専用の窓口まで作っているし

SBIも静岡の清水銀行とともに、銀行で資産、保険の相談を、と協業で攻め入っている。

アジアを見てみれば銀行が最大の代理店になっており、ヨーロッパやアメリカ、その他のエリアでも”バンカシュアランス”が最大のチャネルであり、かつ様々な取り扱い商品を合わせて提供できることから最大、最高の満足度を提供していることからもこの流れは無視ができない。

今後、低金利はしばらく続く中、貸出先がない銀行が本気で手数料ビジネス、かつ自行の顧客に真剣に長い目でアプローチし続けることができるようになるとこれはものすごい脅威になる。

一方で銀行にもまだまだ弱い部分はあり、それを補完していくパートナーが必要になるであろう。

プルデンシャル生命はそういった中、フルコンサルできるが見込み客の発見が厳しいというフルコミの営業マンを銀行に出向させ脅威的な数値をいまだに継続的に出しているよう。

子会社のPGF生命で自分の知り合いも働いているが、とてつもなく仕事がしやすいという。銀行がまだまだ持っている与信の高さとアセットの使い方次第では保険営業における可能性はまだまだ広がるはずだ。例えば相続、贈与やリバースモゲージなど、まだまだやれることはありそう。


4.自社の顧客データを元にもっともカジュアルでニーズが顕在化している保険から攻めてくる事業会社


自社の顧客の利便性をあげるために、保険代理店や少額短期保険を始めるところも増えて来た。いかに既存のお客様に満足してもらえるか、というところから着想しているので、事業単体で黒字化を狙っていないのがポイント。既存の事業者は脅威に感じるであろう。

まずはLINEだ。

なんとタダで保険がもらえる。こちらは損保ジャパンとのコラボ企画だが1ヶ月で今まで攻めあぐねていた若い世代を中心に500万件以上のリードを獲得している。

当然ここからアップセルなどの課題が出てくるわけだが、テクノロジーを使い、限界費用が0に近い形で一気にリーチ数を確保できた点は今までにない歴史的なチャネルの転換ポイントだ。


またメインの事業で障害者を支援しているLITALICOは、障害者のお子様をもつご両親からお金も含めた相談が多かったことから福祉✖️ファイナンス領域のサービスを開始。いわゆる顧客に寄り添うサービスを求められる中で既存のタイアップなどは試みるものの、納得できる品質のプランナーを抱えることができず、だったら自分たちの理想を貫き通す、という今までなかった代理店の開業方法である。

社員の教育においても似たような課題を持っているお客様が多いことから反復効果による習熟が早く、より的確なアドバイスかつ心に寄り添うサービスができるようになるのはとても価値が高いように思える。


東急不動産も今まででは保険会社に丸投げする代理店、というポジショニングから、少子高齢化を見据えながら沿線顧客におけるブランド価値を最大限活用することにより、少額短期保険における信頼のデメリットを乗り越えられるとし自社でリスクをとり保険領域に参入している。何より全て自前でやっているわけではなく、ホワイトラベルでシステムは外注しながら、スピーディーに参入し、すぐにトライアルしてみる、というのは今までの大手デベロッパーでは考えられないスピード感。

今後保険についてはカジュアルに立ち上げができる仕組みが増え、様々な業界の新規参入が増えてくるであろう。そこでしか入れない、対象にならない保険やサービスをタッチポイントに、既存の保険の領域まで手を出される可能性もあり、既存の事業者にとっては大きな脅威だ。


5.既存の専属には鞭をうち統合による効率化を進める。

損保もその特性から高齢化した代理店を次々と地域の直接し本代理店の元に合併させていっている。

損保は収入保険料が年換算で2~3億レベルにならない代理店は上記の直資本の代理店にどんどん吸収させるような施策に動いており、代理店の経営者は言われるがまま合流させられているところがここ数年うなぎのぼりの様子。損保についてはひたすら問答無用にロールアップされている。


同様に直販チャネルが主力だった大手生保でもじわじわ王道で攻めてきている。

いままでやらなかった王者の日本生命は一気にM&Aで商品から流通まで一気に押さえた格好だ。

代理店チャネル用に新会社も設立。

記述にはショップ型、と言ってはいるものの、すでにいろんな有力代理店にもお声がかかっていることを鑑みると代理店流通チャネルにおけるリテールの戦略商品をどんどん投入して、先に販売し、絶大なシェアをとった法人向けの商品”プラチナフェニックス”に加え、リテールのシェアもとって行く戦略。王道。

ちなみに第一生命はネオファースト、住友生命はメディケアですでにこの市場には参入済み。ガチンコの戦いになりそう。

日本生命、第一生命も住友生命も自社で代理店を買収しており、代理店のチャネル別においてもそれぞれ株主として、流通まで押さえに行っている。

日本生命の流通チャネル

訪問型


ちょっと時間がないのでこの辺でおしまい。



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