Paints-Undoの意義

「好意的に捉えるの流石に無理過ぎる」(こういう感じの見解が割と見られる)

別にこれ、技術者は無理矢理擁護してるわけじゃないんだよねぇ。普通に新しい切り口でこれは面白くなりそうだぞと思ってごく自然に賞賛しているのだ。普通にこの先の展望がある技術だからね。評価出来る人間ならそう思うだろう。

この絵の塗り方が知りたい、となったときに、ぱぱっと手順を出してくれるツールがあったらめっちゃ便利でしょ。平たくいうと、無料で使えるタイムラプスお絵描き講座があらゆるイラスト対象に量産できたらすごいよね、っていう。

完成品から工程を推定してると捉えた場合、その推定は正しいの? っていう疑問はあるだろう。しかしここで言う正しさの論点には二種類あり得て、本当にその人がその手順で描いた、という正しさと、その手順でなら人の手でも同じものを描ける、という正しさ。一般に必要とされるのは前者ではなく後者だろうね。それが実現可能なものに発展するかどうかが注目すべきポイントなのだ。

別に本物と同じ手順でなくてもいいのよ。人の手で再現可能でさえあれば。なんだっけ、ギャラリーフェイクで、書道家の作品を再現するためになんかアクロバットなことをして全然本物と違うやりかたで実現するやつあったよね。他の人がやってだいたい同じ結果が出るなら別に方法は変えたって有意義なんだよ

お風呂で体を洗う時に手から洗うか足から洗うかなんてのは別にどっちでもいいんだよね、最終的に自分の力で全身が洗えてればいいんだから。一方で、洗車の機械みたいな洗い方は人力で出来ないから確かに異質なんだわ(ところでそういうエロ趣味いいよね……)

手順をより単純な単位に機械的に分解再構成する」のは、個人の特殊技能を感性に頼らず誰でも再現可能な「技術」に高める為の大きな一歩なんだよ。そもそもたかがなりすまし行為なんぞに使うには手間かけすぎなんだよこれ。

ノイズから絵を炙り出す方法は人間に再現できない、つまり作業工程は参考にならず出力しか使えないけど、ブラシストロークとかに分解された手順なら一個一個追えば人にもできるかもしれんのよ。人間の作業工程学習用として使えるのをまず最初に期待している。そこまでのものに到達してるとまではまだ分かんないから言わないけども。イラスト生成AIを次の段階に進めるかもしれない画期的な進歩だよ。

四色問題を解いた人は、(色々賢く絞り込んだ上で最後に残った)人の手で調べきれない膨大なパターン数をコンピュータに総当たりで調べさせたのね。四色定理は正しい。これは争いがない共通認識だが、しかし機械の総当たりが証明と言えるのかには議論があった。僕は証明と言えると思うが、美しくないという意見には同意できる。何が美しくないかというと、つまり機械の総当たりは人が真似できないしより細かい工程に分けて他の応用を考えにくい。人の手で出来るエレガントなやり方をしてくれれば、そこは真似られるし応用もあるかもしれんのだ。だから証明されてからももっと上手いやり方があるんじゃないかと数学者は色々挑戦してるみたいだし、これはそれに似た試みだと思うよ。人に可能なブラシストロークへの分解。こういうセンスオブワンダーを「驚き屋」と粗雑にまとめるのは悲しいね。

絵描きのお絵描き講座ってのはどうもこう、ここをパッとしてグッみたいなのが多い印象で、そこを機械で分解して論理的に纏め直したタイムラプス講座がどんな絵にも作れて事実その通りやれば再現出来るのであれば、こちらとしてはありがたい。たとえばプログラミングってのは編み物なんだよ。編み方が複雑だけど、一つ一つのオペレーションは誰でも分かるし、その通りにやれば誰でも出来る。絵描きは違うよな。木切れから仁王を掘り出したらできあがりですみたいな世界に見える。そういう世界はそれでいいと思うけど、プログラミングや編み物のように絵が描けるなら僕はそのやり方を学びたいね。「余人が真似できない天才プログラマ」みたいなのはあんまりいいことじゃないのよ。まあ存在してしまうけども。誰でも出来るやり方に分解してその通りに凡人が隊伍を組んで行進しましょうってのが技術という考え方なのだ。

最初のラフというか、どう描こうか描きながら考えてるところはあんまり興味ないのね、そういうのは3Dデッサン人形でも使えばいいことなので。線画の起こし方とか、線画からどういう風にブラシを使って色が塗りあがっていくのかの工程を人が真似出来る形で構築してくれたら嬉しいなあ。

あとまあ、他の使い道として、絵をブラシストロークの束に分解できたとしたらそのブラシストロークを後で編集してタッチを変えたり出来るかもしれんよね? プロンプトを通してではなく直接特定タイミングの筆使いを場所を指定して細かくスライダーとかベジエとかで操作できたら、もっと柔軟にいじりやすくなるぞ。

非破壊型の編集をしてヒストリに操作を積み上げるタイプのツールは、そのヒストリに後から手を入れて調整できるんだよ。そこまでできるようになったら今の比じゃないほど便利になるぞ。まあそこまではまだ夢の話だけど。3Dで言うとhoudiniみたいな応用ができないかな、というような話。


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