デジタル教科書と教科書 つづきのつづき

 前回まで現状のデジタル教科書は「教科書」ではない,その意味は無料でもらえる教科書ではないということを書きました.で,このデジタル教科書は無料にはならないんでしょうか?

 指導者用デジタル教科書は先生が使うものなので無料になるという方向性はまず考えられません.前に紹介したとおり無償処置法の対象は児童・生徒ですからね.でも,学習者用デジタル教科書は,少なくとも,今,学習者用デジタル教科書について考えている人たちは,学習者用デジタル教科書は紙の教科書と共に,もしくは代わりに,児童・生徒にとって主たる教材として使われることを期待しています.ですので,それが有償となると・・・.

 指導者用デジタル教科書はだいたい1教科1学年6万円くらいです.開発コストを指導者用と学習者用でいっしょにすることはできませんが,乱暴に同じだとして計算してみると,たとえば4教科で24万円,これを1学年60人として割って1人4千円ですね.月400円.指導者用もいっしょに売れることになるのでもっと安くなっていくでしょうし,教材費として出せない額ではないようにも思いますね.

 しかし,発行法第一条では,

この法律は、現在の経済事情にかんがみ、教科書の需要供給の調整をはかり、発行を迅速確実にし、適正な価格を維持して、学校教育の目的達成を容易ならしめることを目的とする。

となっています.もし学習者用デジタル教科書が紙の教科書と同等に扱われるようになった際には・・・扱われるようにしていくためには,学習者用デジタル教科書も無料,「教科書」にしていく必要があるかと思います.

 学習者用デジタル教科書が「教科書」になるために一番の問題はですね,たぶん国のお金です.学習者用デジタル教科書が児童・生徒全員に行き渡ることになったとしても,紙の教科書は,少なくともしばらくはなくなりません.となると,国はこれまでの紙の教科書に加えて,デジタル教科書も購入して配らなければならないんですね.教育にはなかなかお金をかけない現在の日本で,これが可能かどうか.さてさてどうなっていくのでしょうか.

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