デジタル教科書の姿

 学習者用デジタル教科書には様々な期待がかかっています.動画や特別支援用などリッチなコンテンツを児童・生徒に提供できる,児童・生徒の学習履歴をとることができる,教科書を何冊も持たなくて済む(笑)などなど.でも,あまりいろいろなものを詰め込むとある問題が発生します.それは,そう,前回話題にした開発コストです.開発コストが上がると,あたりまえですが価格が上がります.そうすると国が買い上げることができなくなってしまうんですね.無料で配布できなくなってしまうと.

 こうならないためにはどうするか.単純なものにすればよいのです.とにかくいろいろなものをくっつけない,めちゃくちゃ単純なものにすればいいんです.そうですね,紙の教科書をすべて画像にしたものをまとめたものにすれば,ほとんど開発コストはかからないでしょう.

 しか〜し,こんなデジタル教科書はいらないです.教科書を何冊も持たなくて済むとか,何度でも教科書上に書き込みができるなどのメリットは生じるでしょうが,それだけのために児童・生徒全員に端末を配布する?購入させる?のには理由がつかないと思います.やはり,その次のなにかがあることが必要だと思います.

 その次のなにかとは,最初に戻ってしまいますが,理解を助けるための動画やシミュレーション,インタラクティブなコンテンツが含まれていたり,特別な教科書を購入することなく特別支援用のコンテンツが利用できたり,学習履歴が記録されて,学校の学習が家庭で確認できたり,家庭学習を教師が確認できたり,学習の進度によって提供するコンテンツを変えたり・・・そんなことができるのがデジタル教科書のメリットなのかと思います.

 では,開発コストとのトレードオフをどうするか.たとえば,国が払ってくれる価格で作れる最低限のコンテンツにするしかないと思います.それを無料で配布する.そして,よりリッチなデジタル教科書にする部品を後から追加できるようにしておくのがよいと思っています.その部品は,教科書出版社が採択数を上げるために無償で配布してもよいし,もちろん付加教材として販売してもよい.また,まったく別の教材会社が追加教材として販売するのもよいでしょう.

 「あれ? 無償で配布する部品なら最初から入れておけばいいのでは?」と思った人はするどい.確かにそうですね.でも,こんな選択肢をわざわざ書いたのは・・・次回にしましょう.

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