デジタル教科書と教科書 つづき

 “発行法における”教科書のわかりやすい例が小学校や中学校の教科書でしょう.小学校や中学校の教科書は,ぶっちゃけて言えば無料でもらえていたのを知っていましたか? 新学年が始まるとドサッと教科書が配布されるときのワクワク感は今でも覚えています.あの教科書,親がお金を払って買っていたわけではないんです.

 これは,義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律(通称,無償処置法)によるものなんですね.この法の第三条には

国は、毎年度、義務教育諸学校の児童及び生徒が各学年の課程において使用する教科用図書で第十三条、第十四条及び第十六条の規定により採択されたものを購入し、義務教育諸学校の設置者に無償で給付するものとする。

とあり,さらに第五条には

義務教育諸学校の設置者は、第三条の規定により国から無償で給付された教科用図書を、それぞれ当該学校の校長を通じて児童又は生徒に給与するものとする。

と書いてあるんですね.つまるところ,児童・生徒は無償で教科書を国からもらえることになるんです.

 そして,この第三条に書かれている“採択されたもの”が今の話の肝心なところなんです.採択に関する法律は面倒なのできちんと追いかけませんが,一つだけ第十六条五項を見てみます.ここには

採択は、教科書の発行に関する臨時措置法 (昭和二十三年法律第百三十二号。以下「臨時措置法」という。)第六条第一項 の規定により文部科学大臣から送付される目録に登載された教科用図書のうちから行わなければならない。

と書いてあります.そして,この目録というものはなにかと追いかけると,発行法第四条で

発行者は、毎年、文部科学大臣の指示する時期に、発行しようとする教科書の書目を、文部科学大臣に届け出なければならない。

とあって,これを文部科学大臣がまとめたものなんですね.で,ここにある教科書はあくまで発行法における教科書ですので,要は無料でもらえる教科書こそ,発行法における教科書の正体ということになります.今後,この意味を重要であるときには「教科書」と書くことにします.

 あぁ,長かった.ということで,前回書いたように現状のデジタル教科書は発行法における教科書ではないので,無料ではもらえない教科書ということになるんですね.続きは次回〜

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