デジタル教科書をコピーする

 プロ野球も開幕して1ヶ月過ぎました.LIONSは調子がいいんだかわるいんだかよくわからない今日この頃.いやぁ時間が開いてしまいました.三つ子の魂百までとはよく言うもので,三日坊主の性格wはこの歳になっても変わりません.さて,もう少し著作権がらみの話を続けたいと思います.前回は,教科書を作る側の話でしたが,今回は教科書を使う側の話から始まります.

 デジタル教科書を使用するときと著作権の関係でよく話題になるのが教科書のコピーですね.授業では教科書や資料集をコピーして切り貼りしたり,写し取ったりする活動がよく行われます.また,先生が教科書の一部を利用した自作プリントを作って配ることもあるかと思います.これらの行為は,著作権法第三十五条の学校における複製等によって著作権が制限されるため,法的に認められています.あ,ここで“制限”というのは,著作権,つまり文化的な創作物を保護するための著作権を持っている者に認められた権利,を制限するということで,たとえば著作権者は他人が無断で勝手にコピーすることを禁止する権利を持っていますが,これが制限されるので,他人が断り無く複製してよいという意味になります.

 学習環境がディジタル化すると,上記のような活動が非常に楽に多彩にできるようになり,たとえばノート作りにも教科書の素材をどんどん活用するなど,いろいろな可能性が広がってきます.しかし,一方で問題も生じてきます.切り貼りして作成した成果物は次の授業で使うこともあるため,どこかに保存しておく必要があります.共用パソコンを使う現状の学校環境では,データの保存は,サーバ上に用意された個人フォルダに保存する形になりますが,このサーバに保存することが,三十五条が定めている“授業の過程”に当たらないというとんでもない解釈がなされているためできないのです.残念です.ん〜っと,え〜っと,一人一台になれば問題はなくなるのでしょうかね?

 ではどうしたらよいでしょうか.もう一つ許諾なしで著作物を使う方法が著作権法第三十二条で定められている“引用”です.引用のための規則に従った方法を用いれば著作物を許諾なしで使用することができます.小学校や中学校での調べ学習では,先の三十五条の適用を優先しているのか,一般的には引用を用いるところを,その手続をふまずに使い放題にさせているようにも感じます.これが大学生のコピペレポートの元凶なのではないかとも言われていますので,児童・生徒に著作物を利用する際には,三十五条適用ではなく引用を用いさせるようにするべきかと思います.ですので,デジタル教科書からの切り貼りをする場合もきちんと引用させるよう指導すればよいのではないかと思います.

 ただ,これですべて解決というわけにもいきません.前回書いたように,現状はデジタル教科書に他人の著作物を掲載する際は,出版社が一つ一つ許諾をとっています.この許諾を取る際,ディジタルデータは何度コピーをしても品質が落ちないため,引用という著作権法で認められた方法であっても,コピーされることを著作者が嫌がる可能性があるのです.そのために,使用料が高くなったり,許諾がとれなかったりということが起きてしまうんですね.このようなことが起こらないように出版社はどうするか? 最悪のシナリオはコピーできないデジタル教科書を作ってしまうということです.困った困った困った.

 ディジタル化のメリットもあり,かつ素材の著作者にも喜んでもらえるような仕組みってどんな感じなんでしょうね.眠くなったので,また今度考えてみたいと思います.

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