デジタル教科書と著作権

 本職?の方の研究会などに出ていて止まっていましたが,著作権について話をする機会があったので,メモがてら久しぶりに書いてみます.

 つい先日,デジタル教材に関するあまりよくないニュースが流れました.一人一台を実施している先進的な地域において,教材のライセンスが1年契約であったため,この春に一旦アンインストールしなくてはいけなくなった.春休みにその教材を使った勉強ができないばかりか,この1年間に書き込んだものは消えてしまうというものです.うーん,春休みなんて勉強しないよ! 問題集なんて見直しなんかしないさ! ってことなら問題はないですね.でも・・・,これ教科書ではなかったんですよね? その点,正確に把握できていないのですが,もし教科書だったら,デジタルのメリットを活かして,ノート代わりにいろいろ書き込みを行っている可能性がありますよね.それが消えてしまうのは大問題です.

 なんで1年契約にしたのでしょう? 1年分しか予算がなかった.あ,年度決算の予算枠であったため複数年契約が結べなかったというのも考えられます.想像ばかり書いても仕方ないのかもしれませんが,著作権の可能性も考えられます.教材に含まれる著作物の処理(著作者との契約)が1年間しか結べなかったということです.この結べなかった原因も,著作権使用料が払いきれなかったというお金の話なのかもしれません.

 さて,デジタル教科書を考えるとき,この著作権のことを忘れることはできません.教科書には様々な教科書発行者以外の著作物が含まれています.著作物を利用する場合は,著作権処理が必要です.ここで,またまた,法律が出てきます.(紙の)「教科書」では,著作権法第三十三条第一項に

公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書(略)に掲載することができる。

とあります.そう掲載できるんです.「教科書」には,著作者に許可を求めなくても著作物を掲載できるんです.ただ,第二項には

前項の規定により著作物を教科用図書に掲載する者は、その旨を著作者に通知するとともに、同項の規定の趣旨、著作物の種類及び用途、通常の使用料の額その他の事情を考慮して文化庁長官が毎年定める額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

とあり,通知は必要で,さらにお金も払う必要があります.ただ,金額は個別に交渉する必要がなく,文化庁長官が定めてくれるんですね.これはかなり楽なことです.まぁ,日本を未来を支える子どもを育てるための教科書です.これぐらいの優遇処置はあってもよいでしょう.

 ところが,デジタル教科書は「教科書」ではありませんので,この条文にはかかりません.そのため,デジタル教科書を紙の教科書と同じ内容にするためには,一つ一つ著作権処理をして,使用料を払わないといけないのです.冷や汗です.また,許可がとれないこともあります.デジタル教科書でたまに開けないページがあるのは,許可が取れなかった著作物が含まれるページなんですね.困ります.

 そして,たぶん,おそらく,デジタル教科書をずっと使ってよいものにすると,その分使用料が高くなるため,現在のデジタル教科書では,使用期限を設け,使用できるのは対応する「教科書」が利用されている間だけとしているのだと思います.そうなんです.一番最初の回にも書きましたが,今使っている小学校用の指導者用デジタル教科書,何十万,何百万もかけて購入したデジタル教科書,この3月末で利用できなくなるんです.デジタル教科書の素材を使った教材も,来年度以降は使ってはいけないはずです.これ,本当に困りますよね.いや,もう使いたくなくなるレベルかもしれません.

 ちょっと長くなりすぎました.この辺で一旦,閉じたいと思います.続きは次回.

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