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量子的クオリア仮説:量子認知から量子知覚へ

以下は、結構専門的です。

我々が書いた仮説論文 "量子的クオリア仮説:量子認知から量子知覚へ” が、Frontiers in Psychologyにアクセプトされた! https://osf.io/preprints/psyarxiv/9m5yp

by 土谷、ブルーザ、山田、西郷、ポトス著。

この論文を書くプロセスでは、本当にたくさんのことを学んだ。最終的にアクセプトされ、嬉しいし、ホッとしている。

この論文では、クオリアの数学的構造とそれに関連する心理的プロセスをよりよく理解するために、量子論の数理構造を紹介している。

一般には、クオリアは「空間の点」(もしくは点たち)というモデルで説明される。が、これにはいつも不満があった!(直感的で便利なのは認めるが...)

論文では、このモデルを超えるいくつかのアイデアを紹介している。
たとえば、量子論における「状態」と区別される「observables = 原理的に観測可能な物理量」という概念は、この論文の中で最も重要なアイデアの一つ。

これは、注意や意識(=クオリア)をめぐる問題に関連する様々な問題と合致すると思う。 面白いと思ってもらえると嬉しい!

「observables」=クオリア、「状態」=感覚入力+注意と考えることで、クオリアのある組み合わせが同時に体験できない一方で、他の組み合わせが可能であることを正確にモデル化できるようになるはずだ。将来的には「量子測定器」の理論を使うことができる。

これらの全部をまとめて「量子的クオリア(QQ)仮説」と名付けた。これにもいろいろな思惑がある。。。QQは経験的にさまざまな方法で検証することができる。セクション4で実証実験のレシピを書いた。そのいくつかは私たちの研究室で進行中!

実は、量子論を学べば学ぶほど、意識と脳の問題を解決するために「量子」を提案する人々に共感するようになってきている。

しかし、私の考えでは、より重要なのは「量子論の数学的構造」である。ミクロな「量子現象」ではない。

意思決定における量子認知はかなり成功している。「量子測定器」理論の導入のおかげで、今後、さらに量子認知は発展するだろう。量子認知はが使っているのは量子論の数学だけだ。 量子脳からの貢献はない。

「古典的」なモデルでは、クオリアは「モノ」のようなものだと仮定している。空間の中の点だ。これは、クオリアが原理的に、影響を与えることなしに「測定」できることを前提としている。

QQは、測定がクオリアに影響を与えることを「デフォルトで」仮定している。(ただし、古典的な状況、つまり全く測定の影響がない状況が起きてもよいし、多分そういう状況はある。量子論は古典論を含むことに注意)。注意や感覚入力(や他の文脈)によって、observables=クオリアは異なる測定結果をもたらしうる。

しかし、これは測定以前にクオリアが存在しないと言うのとは違う。私は測定以前にも、クオリアは存在すると思う。測定前にクオリアがどのようなものであったかを推定するには、適切な方法が必要だ(量子計器理論でこれは可能だ!)。

ただし、こういうと、測定とは一体何か? を明らかにする必要がでてくる。今のところ、測定とはクオリアを報告する、クオリアに注意を向ける、程度のことだと思っておいて良い。計測をどのように定義するかを書く必要がある。そして、今後数年のうちに、科学的根拠を伴ったQQの概念を詳しく説明する論文をいくつか発表する必要がある。

QQはうまくいけばIITのような定量的理論になるだろう。QQはクオリアと注意の関係を対象にしている。
IITのような、意識の因果構造理論は、QQのような、クオリアについての、動的で実験検証可能な理論と組み合わされる必要がある。QQは、クオリアに関連する実験データに定量的な説明を与えることを目的としている。そういうものと組み合わされないと、クオリアの問題についてIITを実証的に検証することはできないのでは?!

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