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2021年8月の記事一覧

食堂かたつむり

小川糸さんの、私にとって3冊目の本。 登場人物がとってもポップです! 物語のトーンは、これまでの糸さんのストーリーにあるように、静かで内省的ですが、家財道具一切合切をもって消えた、同棲していたインド人の元恋人、るりこ御殿のおかん、白馬に乗ったネオコン、お妾さん、手作り酵母パンが朝食のエルメスという豚が この物語に鮮やかな色をぶちまけてくれます。 主人公は、食堂かたつむりのオーナーシェフとしてすべてを仕切っています。事前にお客様とミーティングをしてから、自分なりに得た情報

「ライオンのおやつ」と「つるかめ助産院」

小川糸さんのこの2冊を続けて読みました。 最初に読んだのは「ライオンのおやつ」。小川糸さんが、「死ぬのが怖くなくなる物語を書こうと思った」と言われていた彼女のインタビュー記事を見てすぐにキンドルで購入したのです。どんなお話なんだろう? 初めて読む彼女の本は、普段は忘れているけれど、いつもここにあるものに気づかせてくれる、瑞々しい描写があちこちに散らばっていました。浅瀬の海辺を、足の裏に砂粒を感じながらゆっくりと歩くように、ストーリーを追うだけでなく、その描写の数々が織りな