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くち-ごも・る

口篭る。返答に窮したり、言いづらい事情があったりして、言うのをためらう。また、途中で言うのをやめる。(コトバンクより)


口篭る人 というのは、たいていの場合誰かに、あるいは何かに配慮している、ように思います。話し下手。コミュ障。一般的にあまり良く言われない性質かもしれませんが、臆病な人が言葉を選ぶのを待っている時間が、とても好きです。

言葉を選んでいる人を見ると安心します。それがわたしのためではなくても。これは言葉が特別というわけではなくて、自分が大切にしているものを、同じように大切にしている人を見て、ほっとする気持ち、だと思っています。わたしが育てた花を「綺麗だね」と言ってくれる人を、好ましく思うように。

誰かが大切にしているものが、他の誰かにとっても同じように大切だとは限りません。お気に入りのおもちゃを壊されたり、好きなアーティストの曲を貶されたり、楽しみにしていた約束をあっさり破られたり。悲しいけれどよくあることです。言葉もとくべつ扱いはされなくて、ほかのすべてと同じように、大切にする人もいれば、そうでもない人もいます。

何かを大切にすること、しないこと。誰でも、抱えられるものには限りがあって、世界のぜんぶの中から、大切なものだけを選んでいます。

だけど、この世界のあらゆるひとつひとつは、それを大切にする人のために存在しています。わたしにとってどうでもいいものであっても、わたし以外の誰かにとって大切なもので、それはわたしのためではなくて、それを大切にする人のためにあるものです。

だから言葉を大切にするべきだとか、ぜんぶを大切にするべきだとか言いたいわけではなくて、やっぱり大切なものは自分でしっかり選ばなくちゃね、と思います。だけど、何を大切にするのもしないのも自由な中で、誰かにとって大切なものを、自分にとってもそうであるように思えたら、きっと素敵なことだと思います。たとえばそれが言葉ではなくても。



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