拝啓キムナムジュン様、"Young Forever"を考える日曜日の夜です(BTS 2024 FESTAに寄せて)

BTSの好きなアルバムはなんですか、と聞かれたらWINGSと言いたい。シングルもOutro: Wings、ツアーも土曜のバンバンコンで放送されていたWINGSツアーが好き。


BTSに限らず、アーティストが困難にぶっかってもがいた傷跡そのものが作品になっているようなのが好きだ。己の殻を破るべく挑戦することで生まれる緊張感と、己を深く理解しようとして浮かんでくる高貴さが一つのストーリーになっているような作品は、聴き手に「時の流れ」を感じさせる強さを持つことが多いから、好き。

時の流れ。
私たちが感じられる時の流れは多分2つ。
生まれてから死ぬまで年々+1されていく直線的時間は絶望を、1分1日1週間1年…と巡る円環時間は希望をもたらす、と思う。


我々の人生は基本定期的なルーティン(円環)上で展開する。これ実はめちゃくちゃ救いで、仕事なり家事なり単調な繰り返しに没頭できることが、刻々と減っていく残り時間から気を逸らさせてくれるとよく思う。
ところがどっこい今週の私みたいにゆっくりできる土日の後、月曜がとにかく憂鬱なのは、仕事が嫌だからとかではない。おそらく「円環時間が連なった自分の直線時間」をなんとなく認識するからだ。あと何回自由な土日があって、その中で何ができて何を残せるのか。特にWINGSみたいな芸術に触れた週末の日曜日。もう、泣きたくなる。


WINGSで言えば、「Boy meets evil」から始まり、内省的なメンバーのソロ曲が最年少による「BEGIN」→最年長の「AWAKE」へと直線的に物語化されている。少年が大人になる不可逆な時間の流れが明確に突きつけられる上、最後に添えられるのが「Young forever」というメッセージ。青春の終わりをWINGSで表現しながら、"Forever, we are young"と歌う。ぶっちゃけ私は敢えてすべてをもやの中に手放すようなこのアルバムのエンディングをいまだに理解しきれていない。proofのFor youthもかな。

そして昨年のFESTAで発表されたTake Twoにこんな部分があることを本日やっと知る。いつも楽しみに読ませていただいているnoaさまの記事より。

僕らは共にその歌を歌う時
若さを感じたことなどない

Take Two

記事内にもあるように、上記箇所はまさにファンが共に大合唱したYoung Foreverを指していそうで。若さを信じて、というより、"今この瞬間も自分の残り時間が減っている" 戸惑いを歌っていると、やっぱり今でもそう聞こえる。

だからこそこれからのBTSはチャプター2 (第二章)ではなく、Take Two (ニ回目) と表現したいのかもしれない。もう一度繰り返すだけだよ、もう一度、これまで歩いてきたように信じて歩こうという慰めを感じる。YoungもForeverもないじゃん、もういいじゃん、と私は静かに笑い飛ばしたくなった。


WINGSにはSpring dayという季節=円環時間を思う歌もある。一見悲しい別れの歌だが、Young Foreverと言葉にするよりはるかに希望にも思える。その代わり厳しい冬を己の足で歩き切らないといけないというのがセットだが。

この冬→春の構図は別の表現で言うところの砂漠→海に近いと私は思っていて、さらにちなみにいうと港町で生まれ育ち、週末は海で・平日は山手の学校で過ごしていた私からするとかなりしっくりくる比喩である。


最後にOutro: WINGS、この違和感あるくらい爽やかで前向きな曲が好きだ。物語の「外伝的位置付け」なこの曲は主人公の内部になく、もはやこの主人公がいなくなった後の世界の、もっともっと大きな時間の流れで語られる話。
なぜこの曲がアルバムに必要かというと、たぶんこの不自然な程に完璧に美しい後日談的ストーリーが、次にこの世界で歩む誰かの道標になるから。


人間1人の直線的時間は誰が別の人に影響を及ぼすと言う意味でまた円環的で、それもまた救いなんだよな。WINGSやその他のアルバムの様に、だれかのもがいた傷跡がびっくりするくらい美しく、いまの私の原動力になっている。私自身と同じように、少しでも誰かに何か影響を与えるアウトプットを残したくて。

…大きく捉えたらね。うん、大袈裟に言えば。

多分今日寝て明日起きたらまた会社の中の、小さな円環時間の中で業務に追われているだけだと思うよ。いつもと同じ電車に乗って。
でも人生の引力を見失わないために時々こうやって時の流れを思い絶望的な日曜を過ごすこともたまには悪くない。


今年もFESTAがやってきました。
(そしてジンくんが帰ってきます!)

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