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天国

部屋に花を一輪、飾った。
窓を開けた。
暖かい光と、心地よい風が私を瞬時に包み込んだ。
それだけだった。
たったそれだけだった。
それだけで、私は満たされた。
今、この世で一番幸福な存在として選ばれたのだ。
幸福な存在のまま、私は空まで走って行きたかった。

貴方がこの部屋に入った時、きっとこの幸福を受け入れてくれる。信じている。だから私はその花を飾ったのだ。
「それを私だと思って愛でるといい。」

そうして、私は先ほど飾った花を横目に、空中をふわふわと軽やかに駆けた。

その瞬間、ふいに歌を口ずさんだ、その歌は何という歌だったか、とうとう最期まで思い出せなかった。

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