批評再生塾とは、なんでしょう?

五反田の地で東浩紀さんが行っている『genroncafe』。そこでは夜な夜な色んな人々が登壇して語り合っていて、その内容を多くの人々がその場所やニコニコ動画の生配信で聴いています。そしてその場所では学校もあって、その中の1つとして佐々木敦さんによる『批評再生塾』が行われています。その中で私は『批評再生塾』の第1期に受講生として、第3期に聴講生として参加しました。それらをどう思ったのかを書いてみたいと思います。

受講生の立場として思うのは「批評再生塾とは批評を体験する場所である」ということ。批評を教えてくれる場所ではありません。スケジュールを見てもらうと分かると思うのですが、まず講師から課題が与えられて、その課題を2週間で完成させて、講師の考える批評を聴いて、提出された課題のうち上位3による質疑応答が行われるというのが1回の授業内容になります。私は佐々木さんのやっていた『批評家養成ギブス』にも参加していましたが、そちらは講師の考える批評とは何かを聴いて、講師から課題が与えられて、その課題を2週間で完成させて、提出された課題に対して講師の模範解答を示しつつ質疑応答するというものでした。(2回で1つの授業だったのです)。言葉にすると順番が変わっただけのように見えるんですが、これが全然違います。それは課題に取り組む時にどうしたら良いのかの方法があるかどうかです。『批評家養成ギブス』は、講師から手渡された武器をどのように振れば良いのかを練習するというものだとすれば、『批評再生塾』は今の自分が持っているものから、どのような武器を選択し、どのような戦い方をするのかを考え、実践していくもの。そしてその行為は自分の限界や長所や欠点に向かい合うことでもあったりします。また『批評再生塾』にはランキングがありますので、選考者である佐々木さんという他者にどのように伝えるのかを考える必要もでてきます。なので課題のことだけではなく、自分や他者のことまで考えなければならないのです。さらにはそのような課題を取り組む時間を作り、その中である程度の精度のあるものを書く計画性も求められています。きついです。とてもきついです。でもそのきつさを乗り越えた時、自分がかなりの成長をしていることを実感できるはず。私は一度も登壇することはなかったけれどすべての課題に自分なりに真剣に取り組んだので、成長したなぁと自信を持って言えますので。そしてその成長は批評に留まらない実生活にも現れています。第2期の開塾の言葉で佐々木さんは

「批評」は役に立つ。それなりに長い時間、これだけを武器にやってきた私が言うのだから、満更信じるに値しないわけではないと思う。いや、これもさすがに大仰かもしれないが、しかしこれはほんとうに、事実というか実感なのだ。

と書いていますが、その通りですね。批評家になりたいとは思わないけれど、色んなことを本気で考えて成長したいという方にもオススメです。

聴講生の立場として思うのは「批評再生塾とは批評を体験する場所である」ということ。受講生として思うことと同じ言葉ですが、その「体験」の内容が違うのです。受講生は講師や佐々木さんや他の受講生、そして各課題の上位3名はニコ生でコメントをする視聴者と強制的に関わらなければなりませんが、聴講生はそのような関わりを持つことができません。『批評再生塾』という同じ空間と時間を共有するけれど、認識されない、幽霊のような存在とも言えるのです。そしてその幽霊のような存在が唯一できるのは、「みる」ことだけだったりします。で、この「みる」ということがなかなかの「体験」なのです。『ひらめき☆マンガ教室』の聴講生の一人が「ひらめき☆マンガ教室は、受講生にとってはマンガの描き方を学ぶ場所だが、聴講生にとってはマンガの読み方を学ぶ場所だ」という感じのことをツイートしてました。『批評再生塾』にも同じような事が言えます。では何を「みる」のかというと、受講生たちが自分自身を晒しながら批評に取り組んでいる姿をです。それを間近で「みる」ことで、批評的なものの見方を学ぶことができると思うのです。1回目の教室に集まった受講生と聴講生の批評力はそんなに差はないはず。でも受講生は課題を書き上げ、講義で佐々木さんと講師の話を聞いて、自分なりの批評を形作っていくので、聴講生との差はどんどん開いていくことになります。聴講生は受講生との差を「みる」ことで、自分と同じような立場だった存在が何をしてどのように成長していったのか、また自分が同じ立場だったどのようなことをしたのかなどを色々考えることになります。そしてこの色々考えることは批評そのものであり、それを繰り返すことで批評的に「みる」力が磨かれていくのです。なので、書くまではいかないけれど批評ってどんなものかを学びたい方にもオススメです。

『批評再生塾』は批評を体験するにはとても良い場所なので、興味のある方はぜひに。そして実際に『批評再生塾』に通うことにした方々は、そこに『批評再生塾』をおおいに「利用」してください。「利用」するというと悪いことのように思われますが、「利用」するという言葉の裏には「信頼」があります。そして「効率的」に「自分ではできない」ことを行うために他者の力に頼ることでもあります。「利用」という言葉が強いようでしたら「手助けしてもらう」でも良いです。「利用」することで自分一人ではできないことができるようになるかもしれません。「批評はひとりでやるもんじゃない」の理由の一つはここにあると思います。
あと、これは私見なのですが、受講生は「批評再生塾の受講生」となることで注目度が上がります。その肩書きも「利用」する事ができます。その肩書きを「利用」してプレゼンスを高めていくことは東さんが批評家に求めている能力の一つでもあるとは思うんですよね。第3期も色々外部での活動がありまして、色んなところでプレゼンスを発してきました。それらは第3期生によるロカストが活躍していくための土台になるんじゃないかなぁと思います。通うことにした皆様も『批評再生塾』を「利用」して成長しちゃいましょう。4期も聴講生として参加する私も色々「利用」して更なる成長をしたいと思います。そして成長して『批評再生塾」に「利用」されるような存在になれたらいいなぁと思います。参加する皆様もそれを目指していただければ、「批評はついに再生する」んじゃないかなぁと思うのです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?