見出し画像

共産党及び立憲民主党の討論 2024年5月17日参議院本会議

議長
日程第5、民法等の一部を改正する法律案、内閣提出、衆議院送付を議題といたします。まず、委員長の報告を求めます。法務委員長佐々木さやかくん。

参・法務委員長 佐々木さやか
ただいま議題となりました法律案につきまして、法務委員会における審査の経過と結果をご報告申し上げます。
本法律案は、子の権利利益を保護する観点から、子の養育についての父母の責務に関する規定の新設、 父母が離婚した場合にその双方を親権者と定めることができるようにする等の親権に関する規定の整備、子の監護に要する費用の支払いを確保するための制度の拡充、家事審判等の手続きにおける父または母と子との交流の試行に関する規定の新設等の措置を講じようとするものであります。
なお、衆議院において、子の監護に必要な事項の定めに関する広報啓発、親権者の定め方等の国民への周知、施行後5年を目途とする父母の離婚後の子の養育にかかる制度及び支援施策のあり方等の検討等を附則に追加する修正が行われております。
委員会におきましては、8名の参考人から意見を聴取するとともに、子の利益の具体的内容とその確保、DV等のおそれのある事案において適切に親権者を定めることの必要性、共同親権のもとで単独で親権行使ができる具体的な類型、養育費確保の方策、離婚後共同親権導入が子に与える影響、家庭裁判所の人的・物的体制の整備及び職員の専門性の向上の必要性等について、質疑が行われましたが、その詳細は会議録によってご承知願います。
質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して山添委員より本法律案に反対、立憲民主社民を代表して牧山理事より本法律案に賛成する旨の意見がそれぞれ述べられました。
討論を終局し、採決の結果、本法律案は多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。 なお、本法律案に対し附帯決議が付されております。以上、ご報告申し上げます。

議長
本案に対し、討論の通告がございます。
順次発言を許します。山添拓くん。

山添議員
日本共産党を代表し、民法等一部改定案に反対の討論を行います。
子どもの気持ちを伝える場所がない状態でこの話が進んでいる。子どものために作られると専門家は言うが、スタート地点が違うような気がする。今週月曜日のテレビ番組でMCが発したコメントは、本法案の本質をついています。
DVや虐待から逃れ、安心・安全な生活を取り戻そうと必死で生きる人々、行政や司法、 医療や教育、福祉の現場から悲鳴のような怒りの声が上がっています。国会は、その声を封じてしまってはならないのではありませんか。(拍手)
本法案の最大の問題は、離婚する父母が合意していなくても、裁判所が離婚後の共同親権を定めうる点にあります。夫婦関係が破綻しても、父母の間で子の養育だけは協力して責任を果たそうという関係性があり、 親権の共同行使が真摯に合意され、それが子の利益に叶うケースはありうるでしょう。
しかし、 真摯な合意がないのに親権の共同行使を強いれば、別居している親による干渉・支配が復活・継続する手段となり、結果として子の権利や福祉が損なわれてしまう危険が否定できません。(複数のそうだの声)
法務大臣は、本法案は父母間の合意を促していくための仕組みと言い、 どうしても合意ができない場合は単独で行くと答弁しています。問題は、条文がそうなっていないことにあります。(複数のそうだの声)
ポストセパレーションアビューズ、別居・離婚後のDV、虐待、嫌がらせが深刻です。
ちょっと待って共同親権プロジェクトが今月行った調査に、3日で1000人が回答し、別居、離婚経験者の 58%が離婚後の虐待に遭い、その7割以上が子の面前でも被害を経験していました。
元家庭裁判所調査官の熊上崇参考人は、本法案が成立すれば、共同にするか単独にするか、監護者をどちらにするか、監護の文章をどうするか、日常行為かどうか、急迫かどうかなど、常に子どもと親が争いに巻き込まれる、 それによって親が子を安心して育てることが難しくなるのではないかと述べました。(複数のそうだの声)
本法案のもとで手続きの濫用、不当訴訟、リーガルハラスメントが一層広がりかねません。ところが大臣は、そうした問題は婚姻中別居の夫婦でも同じと繰り返しました。全く違います。(複数のそうだの声)
婚姻中の問題が離婚後にも持ち越され、 無期限の延長戦を強いられかねません。しかも、共同親権に応じない限り離婚しないなどと迫られる事態まで起こり得ます。こうした現実の不安に向き合っているとは言えないのではありませんか。(複数のそうだの声)
本法案は、DVや虐待のおそれがある場合は単独親権としています。しかし、過去にDVや虐待があったとしても、 今は止まっている、反省している、将来のおそれなしとして、父母に合意がなくても共同親権とされるケースがあり得ます。
被害者の声はどこまで反映されるでしょうか。証拠がないと言って過去の被害が認められない事態が十分に起こり得ます。 大臣は、話せば裁判所に通じると思うと素朴に述べられましたが、甘すぎます。(複数のそうだの声)
女のスペースおん代表理事の山崎菊乃参考人は、ご自身の痛切な経験を語りました。
「一度暴力を振る舞われてしまうと、夫婦の関係が全く変わるのです。夫の顔色を見て、怒らせないようにと振る舞う癖が私についてしまいました。人格を否定され、人間扱いされないような言動が絶えずある生活は、身体的暴力より辛く、私はいつも落ち込んでいました。子どもたちもいつもピリピリしていました。」
暴力や有形無形の支配に耐え、加害者に変化を期待しても裏切られ、どうにもならずに別居・離婚を決意し、経済的にも時間的にも多くを費やし、ようやく離婚が成立した被害者に、今度また親権者変更の請求で加害者への対応を余儀なくさせるのはあまりにも酷ではありませんか。(複数のそうだの声)
憲法学者の木村聡太参考人は、過去にDVや虐待があった場合には、被害者の同意がない限り絶対に共同親権にしてはならないという条文にすべきと提案しました。 正面から受け止め、対応すべきです。
本法案は、子の利益のため、急迫の事情がある時や、監護及び教育に関する日常の行為については単独で親権行使できることとしていますが、実際には
どこまで単独で決定できるのか、はっきりしません。
熊上参考人は、3月の院内集会で出された子どもたちの声を紹介しています。
「何かにつけて両親の許可が必要って面倒なだけ。期限に間に合わなかったら国は責任取れますか。」
「お父さんとお母さんが別居中に僕の手術が必要になった時、お父さんが嫌がらせでサインしてくれなかったと聞きました。病院にお願いしても両親のサインがないとダメだと言われて数ヶ月手術が延びた。」
「離婚時に兄の私立高校を辞めさせろと父から児童相談所に要請がありました。理由は養育費がかかるから。」

法務省は、 父母は互いに人格尊重、協力義務を負うとの規定を設けたので、一方の親権者の親権行使を妨げることは権利の濫用に当たりうると言います。しかし、それが裁判で認定されるのはずっと後になるでしょう。
むしろ、争われるのを恐れ、萎縮し、適時適切な意思決定ができなくなることが起こり得ます。婚姻中、DVや虐待を理由に子を連れて別居するケースが、子の利益のため急迫の事情がある時にあたるのかは非常に重要ですが、この点さえ明瞭ではありません。
弁護士の浜田正参考人は、日常の養育に関する決定は監護者が行い、 監護者でない側は不当に妨げてはならないものとすべきと意見を述べました。離婚後、父母の双方を親権者とする場合には、少なくとも一方を監護者に定めることを必須とすべきです。
医療現場から 現実的な懸念の声が上がっています。日本産科婦人科学会や日本小児科学会など4学会は、共同親権を導入する趣旨や理念を理解するとしつつ、父母の離婚後も両方の親権者の同意を必要とすることになれば、生命、身体の保護に必要な医療を実施することが不可能あるいは遅延することを懸念するとしています。
親権者のいかなる同意が必要であるのか判断がつかず、医療機関が訴訟リスクを恐れ、医療行為を控える事態を招くことはあってはなりません。
あるべき法改正のためには、子どもを主体とした親権の再定義が必要です。子どもの意見表明権の保証を明確にすべきです。
裁判官、調査官など大幅増員を行う家庭裁判所の体制強化が不可欠です。
親の資力等が要件となっている支援策や親の同意等が必要とされる手続きは、 法務省が昨日までに把握しただけで32項目に上ります。大臣は、関係省庁連絡会議で今後調整すると言います。しかし、本法案の下でいかなる影響が生じ得るのかは、審議の前に確認しておくべきです。(複数のそうだの声)本法案は採決の前提を欠いています。(複数のそうだの声)
木村参考人は、日本の新しい憲法、民法が重視したのは、共同行為は合意がない限り強制できないという当事者の意思を尊重する姿勢だと述べました。憲法24条2項は、離婚や婚姻、家族に関する法律の定めのあり方について、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならないと定めます。当事者間に合意のない共同を強制することは、個人の尊重を最も大切な価値とする憲法との整合性さえ問われます。(複数のそうだの声)
本院の審議では、与党も含め多くの議員から弊害を懸念する発言が相次ぎました。親子関係と家族のあり方に関する戦後民法の根本に関わる改定を国民的合意なく押し切ることは断じて許されません。(拍手)
追い詰められ、虐げられ、ひとりで苦しみ、しかし懸命に生きてきた多くの当事者が声を上げ、つながり始めました。自らと子どもの生活と命がかかっている、だから諦めるにはいかないという声がすでに全国で巻き起こっています。個人の尊重に依拠したあるべき家族法制への転換こそ求められることを強調し、討論といたします。(拍手)

議長
牧山ひろえくん。

牧山議員
立憲民主党・社民の牧山ひろえです。私は会派を代表して、ただいま議題となりました民法等の一部を改正する法律案について、賛成の立場から討論いたします。
今回の法改正の主たるテーマは、離婚後の家族法制、特に共同親権等です。
これからの議決によって、離婚後の親権のあり方が77年ぶりに見直されることになります。
法律は、社会や家庭のあり方を規定します。 80年近くアンタッチャブルだったという事実こそが、身分法の重さを裏付けています。
身分関係、特にトラブルをとり扱ったり、子どもやひとり親など、 社会的に弱い立場になりがちな対象を取り扱う際に、決して犯してはならないと思うことがあります。それは、対象を切り捨ててはいけないということです。
しかし、本法律案の策定過程では、こうした点で大きな問題がありました。
まず、史上初めて、法制審議会家族法制に関する部会で、全会一致でない議決が含まれている要綱案を策定、 提出しています。また、審議会には、DVの被害者等が当事者委員として参加できませんでした。
加えて、共同親権を取り扱ったパブリックコメントで、当事者の声が多数切り捨てられました。身分関係においてこれほど当事者の切り捨てが起こったことは記憶にありません。社会を統合すべき法律が社会を分断しようとしています。あってはならないことです。
もともと、共同親権に関しては、立場の違いがそれぞれ明確で、ここに至る以前から 賛成論、反対論の激しい対立が存在しました。にもかかわらずです。今回の改正にあたり、それなりに議論を進めていたのに、中間試案のパブリックコメントが終わるあたりから急にスピードアップして、 拙速としか評価し得ないような生煮え状態の案が作成されて国会に提出されました。
そのため、いちいちケーススタディについて質疑で確認する必要があり、そのために多大な時間が割かれましたものも事実でございます。
また、政府与党側の審議の進め方、答弁ぶりにも問題があったのではないでしょうか。
まず、制度全般の土台となるような大きな論点について対応策が不十分なまま国会提出をしており、そのために議論がその先に進まず、審議の充実を妨げました。
例えば、今回の主テーマである離婚後の共同親権には、共同の親権行使の有無により、非合意強制型共同親権と合意型共同親権の2種類があり、合意型の場合には、非合意強制型に比べてはるかに少なくとも合意時点では摩擦は小さいのですが、審議の前半においてはこの2種の違いに関心が薄く、議論が整理しづらかった状況があります。
また、DVや虐待のおそれの際には単独親権という方向性が打ち出されており、方向性は正しいのですが、果たして家庭裁判所がDVや虐待の事実ないしおそれを裁判所が正確に判定できるのかという1番大きな疑問点が解消されていません。
また、市民社会の歴史の長い諸外国では、社会的現象が時期的に先行して発起する傾向があるので、海外の事象や傾向を研究すれば、より円滑に新制度の導入ができると思われるのに、積極的に取り組んでいる様子が見えません。例えば、重要事項の決定権にしても、子が適時適切な親権行使を受けられることが重要で、家裁がオーバーフローのため適時の要件を満たさない場合、制度自体の前提が崩壊するのですが、当局にそれに関するシビアな認識はないようです。
法施行に向けた準備にせよ、準備の前提となる実施時のイメージ、スケール感などに全く具体性がなく、法が成立したら調査を始めるの一点張りで、国民の代表として政府提案の良否を判断しなければならない国会審議の前提が満たされていません。
この傾向は、近似の政府与党の議会運営によく見られるものですが、今回はそろい踏みといった印象です。
これらの問題点に取り組むにあたり、衆議院審議時にさかのぼり、私たちの立ち位置を説明させていただきます。
子どもたちの命と未来に直結するこれだけの重要法案が、国会における各党の勢力図という現実を前にした時、多くの問題点を抱えたまま、原案のまま成立することになる。それでいいのか。
私たちは、非常に苦慮した上ではありますが、衆議院での審議の後半、11項目に及ぶ修正項目を与野党に提案し、協議の結果、合意に達しました。
合意した修正案は、我々の案を全て反映したものとは言えませんが、修正項目のエッセンスが最低限盛り込まれたものであり、原案のまま運用されることによって生じる被害を少しでも軽減できると判断しました。
衆議院での採決に際しては、私たちはまず筋を通し、この考えを明らかにしつつ、委員会での採決にあたり、私たち自身が提案した修正案には賛成、そして、もともと多くの議員が多大な懸念を持っていることを踏まえ、政府原案には反対をするに至りました。
衆議院での可決後、参議院に送られてくる修正案が溶け込んだ修正民主改正案ということになります。同一の法案には政党会派として同じ対応するのが責任政党としての1つの考えなので、我が党の立場としては、参議院でも賛成することといたしました。
ただし、 質疑でもお分かりのように、私たちはこの政府案に諸手を挙げて賛成しているわけでは全くありません。元々の私達の修正内容は含まれない政府原案に対する評価は、衆議院の委員会採決で原案に反対したことに示されるように、極めて悪いものになっております。
また、国会議員、そして国政政党として、法案を少しでもいいものにする努力をするのは当然ですし、義務でもあります。 また、筋論に関しても、交渉の相手方、すなわち修正協議を行うよう与党側にも働きかけを継続していきました。
提案内容としては、衆議院での審議時に作成した修正11項目が関係分野を幅広くカバーしており、かつ分かりやすくもあったのですが本則の修正に至らなかったので、当院では本則の修正を目指したものです。
ですが、 与党の反応は極めて厳しく、すでに衆議院で修正協議済みということを理由に全く応じることはありませんでした。この点は残念と言わざるを得ません。
この与党の頑なな態度に当方も方針を変換し、 附帯決議を充実するための方針に切り替えたというのが参議院における修正協議の経緯で、この場で明らかにさせていただきたいと思います。
このような環境下であることも踏まえ、参議院では衆議院での議論を踏まえた真摯な審議を行ってきました。
審議時間について、参議院の質疑時間は衆議院の6、7がけであるのが常識とされていますが、衆議院の対政府質疑が15時間台であるのに対し、参議院の標準換算では18時間以上となり、衆議院の審議時間を参議院の審議時間が上回る審議でした。改正法案の疑問点や問題点が数多く議論できました。
ご尽力いただいて、与野党の皆様には感謝します。また、法務省、最高裁が今後、国会審議内容を活かすために最大限の努力を尽くすことなどが附帯決議に盛り込まれたことも賛成の理由として挙げられます。
先ほどもお話ししたように、今回の法案の内容や審議の進め方には大きな問題があります。子どもたちの笑顔を守るため、柔軟性を保ちつつ、しっかりと今回成立した新制度に改善の意欲を持って関わり続けることが私たちの責務だと強く決意を申し上げ、賛成討論とさせていただきます。


維新と国民民主の賛成討論は文字起こしをしませんが、討論の内容に「偽装DV」や「連れ去り」といった言葉が使われておりましたので、あわせてご報告いたします。

以上
誤字脱字がありましたらすみません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?