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『カーネーション』第2週「運命を開く」

7)奈津は何を言ってもすげなく「何にも」で返し、糸子は三角に夢中になっている。大好きなはずのお裁縫の時間は、「好きすぎるっちゅうのも困ったもんで」、学校で習うことなどとっくに超越してしまっている。女学校というのは宿題だの何だのと制約も多いところで、糸子は「早う大人になりたい」と思う。謡の教室のエピソードで「学費がないこと」を示し、相変わらず集金が嫌いな善作は糸子を遠くまで集金にやる。そこでついに糸子はミシンと運命の出会いを果たす。「何するもんかもわからんうちから」糸子の目はミシンに釘付けになる。

8)糸子は桝谷パッチ店で雨の日も風の日もミシンを見る。そんな時、家でアッパッパ禁止令が出される。理由は、神宮寺さんの息子さんが結婚式になんと燕尾服を着ることになったからで、「洋服は敵」となった善作にとってはアッパッパも宿敵の仲間入りなのである。けれど糸子にはアッパッパがなくてもミシンがある。「桝谷パッチ店、ごっつい店やな。なかなかないで、こんな店」という糸子のつぶやきが可笑しい。パッチ屋で手伝いをするうちに、糸子は働く楽しさに目覚める。「働くっちゅうのはなんておもろいことなんでしょうか。」と思い、「一個働いたら周りが一個喜ぶ。周りが喜んだら一個大人になる。」と考える糸子は、大人になる喜びに満ちている。

9)来る日も来る日もパッチ屋に通っていた糸子はついに大将からスカウトされる。第一声が「せやけどええのん?うち女やで」というところが、これまでの日々をひとまとめにしていいて切ない。「俺も学校やめたろかな」と言う勘助を糸子は威嚇する。「いじめられたらいつでも仕返ししたる」と請け合う糸子はまだ勘助より強い気でいる。奈津が安岡のおばちゃんに髪を結ってもらい、糸子に「あんたとうちとは女の値打ちが違うさかい」と言う。さりげなく「女であること」が物語に散りばめられている。そんな中、松坂のおっちゃんがやってきて、お父ちゃんは逃げる。

10)お母ちゃんの駆け落ちの件がはっきりと語られる。糸子たちが「ガリガリに痩せてへんか」を見にきた松坂のおっちゃんは、いらんことしいの近所のおっちゃんのおかげでパッチ屋のことを知る。松坂のおっちゃんは真面目に「お父ちゃんらかばうために嘘ついてるやろ」と長女の健気さを見抜いた発言をするのだが、お母ちゃんはすかさず「糸子はそない健気な子やありません」と返し、おっちゃんは「それもそやな」とあっさり引き下がる。女学校をやめたいと言って糸子は善作に殴られる。その顔を心配してかりんとうを勧める女学校の友だちに、一度は断りながら「やっぱしちょうだい」と言って袋の方を取り、帰り道も食べる糸子はどこまでもたくましい。一回言えたら二回言える、二回言えたら三回言える。「乗り越える」というのはこういうことだ。
 お父ちゃんは神宮寺さんのために一世一代の大勝負、と張り切るが、かけ売りができないと言われて八方塞がりとなり、時代に飲まれそうな善作の前に、機嫌よく時代の波に乗ろうとしている木之元のおっちゃんが現れる。

11)借金を断られたものの、簪をもらったので呑気に喜ぶ千代さんが、それを投げ捨てられたら、途端に、「私を寄越すのが気に入らんのです」と言うべきことを最後まで言う。男と男の話、と格好をつけてもやはり糸子を連れていってしまう小心者の善作は、松坂のおじいちゃんに「糸子ー、と善作くん」扱いされ、小物呼ばわりされ、小さい呉服屋はあかんと言われ、千代や娘らはわしが面倒見たると言われ、それをおばあちゃんに「楽しなりそう」と言われ、善作も行き止まりになってしまう。そこで糸子は試しに「桝谷パッチ店で働きたい」と言ってみせるのだが、善作はもう怒りもしない。かつては糸子と同様大工方になりたかったけれど、男であっても「根性が足りず」になれなかった善作の切なさもつゆ知らず「お腹の虫」で片づける千代と糸子であった。

12)ビリヤードから鞍替えして電気で盛り上がる木之元のおっちゃんと、神宮寺さんに頭を下げに行き、辞めるんなら早いうち、と言われる善作は、時代に乗ることに関してきっぱり明暗を分ける。そして糸子は、勘助に絡んでいた悪童に立ち向かい、小原糸子じゃ!」と威勢よく名乗るのだが、男の力には敵わず、勘助におぶわれて帰る。だんじりも引かれへん、ドレスも着られへん、勘助にも負けた、と糸子は悔し涙を流す。そして千代さんは本当にお腹の虫の薬を買ってくる。そんなある日、善作はついに桝谷パッチ店で働くことを認める。勉強や、と何度言われても聞き耳を持たず、全身で喜ぶ糸子を家中が嬉しそうに見つめる。そしてまただんじりの日が来る。晴れ晴れとした顔で大工方の泰蔵兄ちゃんを見つめる糸子、糸子にとってのだんじりは「ミシン、ちゅうんやでー」。

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