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玖磨問わず語り 第15話 ミンさんの贈り物 その3

 

Twitterヤムヤム

前にもミンちゃんと同じようなことがあったんやね。
わーは、無理やりは絶対イヤや!
ドド、優しいなぁ。 
ほいでも、ナンリさん、ああ見えても反省することもあるんや。

通院しない日々

ヤムヤムさんはハッキリしとるだすな。
オラ、ときどきドドさんの恩恵を受けていると思うことがあるだすよ。
ドドさんが身を挺して、ナンリさんに見せてくれたことが、今ナンリさんのオラたちへの態度につながっとるような、そんなふうに感じるんだす。
たぶんここに来た猫さんたちは、みんな同じ輪の中にはいるっていうんだすか。血はつながってなくても、ここで新たなつながりができるんだすな、きっと。
そして、ナンリさんがようゆうとるアレ、バトンをつなぐ? バトンリレー?だすか。アレだすよ、ドドさんのバトンを、ミンさんが受け取ってまた次に渡す、それを繰り返しているように、オラ、思うんだすよ。



さて、話を戻すだす。
ミンさんの通院はありませんでしたが、桜舎に次々に荷物が届き始めたんだすよ。
「ネット通販で取り寄せた高カロリーの流動食、いろいろあるわよ、ミンちゃん、どれがいい?」
病んでもミンさんはやっぱり食べ物に敏感だした。ミンさんが選んだものをナンリさん、さっそく小皿に入れたんだす。
「これは霊験あらたかな那智の滝のお皿、ミンちゃんの力になってください~」
ミンさんは最初の一口をペロリと舐めると、瞳がキラリン。
次の瞬間、お皿はきれいになっとっただすよ。
「オーイエース、ビンゴ! イエス、イエス」
ナンリさん、大喜びだす。
やっぱりミンさんは新しもん好きだすなぁ。


 
 
食べ物に続いて、除菌消臭剤やカット綿も届いただす。
「清潔にして、毎日快適に過ごそうね、ミンちゃん」
ヤムヤムさんは、まだお若いから分からんと思うだすが……。
今はなにもせんでツヤツヤピカピカだすが、からだが弱ると、毛にツヤがなくなって、やがて毛が固まったり、さらには匂ったりするようになるだす。
元氣なときは当たり前に毛づくろいしとるだすが、不調になると毛づくろいをする氣もなくなってしまうもんだす。
今回ナンリさんは点滴と強制給餌ではなく、ミンさんのからだを清潔快適に保つサポートをすることにしたんだすな。
これはミンさんのためにも、桜舎のみんなにも大事なことだした。

  
「前にちびちゃんが付けてた波動調整ペンダントを付けてみよか。どれ、どれ。あら、かわいい。ミンちゃんはなんでも似合うわ」
勾玉の形をしたペンダントを首につけたミンさんは、こんな特別扱いがちょっと誇らしげだした。

 
ミンさん、トイレに入ると、トイレの中で長い間、じっとしていることもあっただす。
そのまま眠ってしまうようなこともあって、そんなときナンリさんは見て見ぬ振りをしてただす。
「ミンちゃん、ペットシーツを敷いたから、トイレ以外どこで用を足してもオッケーよ~」
毎日のように新しい試みがあっただす。

でも、流動食だけのミンさんは、日に日に痩せていったんだす。
1日中うつらうつらして、夢と現実の境に住んでいるかのようなミンさんだした。

 

痛み分けの術

 
ある朝、いつもの時間にナンリさんはベッドに横になったままだした。
「なんかからだから力が入らない。みんな、ごめん、おなかすいたよね、今、ごはん用意するから……」
ベッドから起き上がるのがいかにもしんどそうだした。
ぼーっとしたまま、オラたちのごはんを出すと、ナンリさんはベッドに倒れこんで昏々と眠り続けたんだす。
ミンさんもまた同じように眠ったままだした。
 
そして、その日の夕方近く、ようやく目覚めたナンリさん。
「今日ワタシ、ミンちゃんにシンクロしてたみたい。
それで、やっとわかったのよ。
今日ね、自分が氣持ちが悪くなったら、食べ物の匂いを嗅ぐのがキツクて、台所にいるのさえ堪らなかったの。
なのにワタシはずっと、ミンちゃんにごはんのお皿を突き付けてた。ずっと拷問してたようなもんだわ。ミンちゃん、ホントごめんなさい」

ナンリさんはげっそりした顔ながら、どうやら自分の直観を確信しているようだした。

「食べないという選択肢もあったんだよね。
食べないほうが、からだがラクなことがある。
あ、そっか、このことを私に分からせるために、ミンちゃん、ワタシとシンクロしたのかも? ミンちゃん『痛み分けの術』とか?」


 
ナンリさんはこの日以降、ミンさんに用意した食事をごはん台の上に置くだけになったんだす。
「ミンちゃんが食べたいときに食べたらいいからね」

左:ズズさん、ミンさんはズズさんといっしょが好き

続く 

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