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執念のワカメハンター 糸島ショローの今日もお散歩日和


採る氣マンマン

長靴を履き、お買物カゴ(直前にバケツは止めた)を持って福吉海岸に向かう。長靴だと歩きにくい。いや、待て、ひょっとしたら、コレ、歩きにくい長靴なのか? ま、いっか。
お買物カゴは、和歌山時代の買い出しに使っていたもので、糸島に来てからも引き続き車に積んでいる。野菜などを買うときに重宝する。
ってことで、ワタシは今日もワカメ採る氣マンマンなのであった。
そう決意したのは、乾燥ワカメがいい具合に干しあがっているせいだ。
乾燥すると十分の一くらい(たぶん)の嵩になる。この量なら保存可能だ。
この際今後ワカメは買わない生活に切り替えよー。
こんな風にすぐ調子に乗るタチはもう一生変わらないと思う。
いいんだ、いいんだ、ワタシャ、こうして生きてきたんだから。

さて、海岸に着いてみると、浜辺にミチヨさん(スジョン先生)の姿があった。
「こんにちはー、今日は採る氣マンマンスタイルで来ました~」
「ふふふ、スゴイですねぇ」
ミチヨさん、今日のスタイルは、黒のシャツに白いパーカーを羽織って、生成りのリネンスカートだ。いつもフェミニーンなスジョン先生。かたやワタシはジーンズにグレイの長袖スエット、首にタオル、両手にグローブ、長靴履きの、どう見てもオッサン作業員風。いいんだ、いいんだ、今さらマダムにはなれないもん。

昨日拾ったシーグラス

遠いワカメの森


さて、ところがである、波打ち際にあるはずのワカメがない!
昨日と打って変わった福吉海岸、オーマイガー……。
「ウソ、ワカメ、どこに消えちゃったの~。昨日はあんなにあったのにぃ」
「今日はもうないですね」
「だれかが採り尽したとかじゃないですよね?」
「ええ、そういうことではないと思います」

買い物カゴは無駄になるのか?
アニャ、そんなことにはさせるまじ。
「浜辺になければ、昨日見たワカメの森を攻めようと思います。せっかく長靴だし」
「そうですね、行ってみましょうか」

ふたたび、ところがなんである。
アレレ、ワカメの森、なぜか昨日より遠くになってるじゃん。
なんで?
おまけに長靴で海に入ってみると、ワカメの森はなだらかに砂浜から急にガクンと落ち込んだ部分にあることが分かった。
だからワカメが浜辺に流れ着けずに、あそこで森を形成しているわけね。
それは分かった。
しかし、そんなことが分かっても、肝心のワカメが採れんことには意味ないじゃん。
波が押し寄せる度、長靴の中に海水が入りつつあった。
うむむ~、すぐそこに見えるのに採れないとは。
なんとかならないか?

エクスガリバーゲット


松林の方に目を転じると、半ば砂に埋まった竹竿が
「オイラはいらないかい?」
とワタシを呼んでいる(ように見えた)。
そうだ、アレをマジックハンドにしてワカメを採れるかも。
バシャバシャと波を蹴って、その竹竿に向かうショロー。
ただでさえ砂浜を走るのはキツイところに、海水が入り込んだ長靴。
うげぇー、き、きつか~。
しかし、砂から竹竿を抜き取り、手に持った瞬間、わかった。
この竹竿こそ、ワカメハンターのエクスガリバーだと。
いやもう、ワカメ採りにはこの竹竿しかありましぇん、という持ち具合、軽さ、扱いやすさ。
「いいものがありましたよ~(聖剣をゲットしました~)」
浜辺からワタシの行動を見ていたミチヨさん、竹竿を見て大きく笑った。

竹ちゃんエクスガリバー


さっそく竹ちゃんエクスガリバーでワカメの森に挑むワタシ。
最初のワカメが難なく採れた。
「ミチヨさん、採れましたよ~、すみませんがカゴに入れていただけますか」
「うまい、うまい」
ワタシと竹ちゃんエクスガリバーはすぐにワカメハントのコツを会得した。
何が何でもワカメを持ち帰るぞというショローの執念である。
みるみるうちにワカメでカゴがいっぱいになった。

落穂拾いの農婦スカート


ワタシの助手役をしていたミチヨさんのスカートが濡れている。
「スカート、濡れちゃってごめんなさい」
「いいの、いいの。この下にズボン履いてるから大丈夫。ほら、絵画の『落穂拾い』なんかで見る農婦もスカート履いてるでしょ。農作業にスカート?と思うけど、あれもスカートの下にズボン履いているんですって」
ほっほー、ミチヨさん、なんか知的です~。
やっぱりスジョン先生と呼びたい、とこころのなかで呟く。
「もういいですね。これ以上は重くて運べません」
「ホントによく採りましたねぇ」

帰路につくスジョン先生

長靴のなかは海水でぐっしょりだったが、満足感。
「帰って、乾燥ワカメの仕込みをしなくては」
「その竹竿、どこかに隠しておいたほうがいいでしょう」
「あ、そうですね、ここに隠して置きますね。そのうち浜辺用品置き場ができそうです」
「ふふふ。私は今日の午前中、お茶用にツキミソウの花を摘んで干したんです。もうカラカラで、小さくなってますよ」
「ツキミソウ茶ってイブニングプリムローズって言うんですよね。手作り、素敵」
「あ、コレがキヌガイ。アサリより平べったいでしょう?この辺で採れるんですよ。9月には桜貝でいっぱいになるし」
「わぁ、楽しみ~。10月中旬に引っ越してきたので、それ以前の福吉海岸を知らないんです」
「この海岸はいろいろあって、ホントに飽きないですよ」
「ヒトが少ないですしね」
「ここは駐車場がないから人が来ないんです」
なるほど、そういうことか、ストンと腑に落ちた。

それにしても本日の教訓は「いつまでもあると思うなハマワカメ」なのである。

どっちゃりこん

乾燥ワカメ工場

ワカメハンター3日目の収穫はけっこう重かった。
来年は一輪車が要るかも?
そして、大鍋で茹でること4回。
大量なので干し切れない。
お、干しネットを持ってきていたっけ、アレを使おう。
なんとかぎゅうぎゅうに干して、一応の仕込み作業完了である。

干しネットがあってよかった。


毎食、ワカメの味噌汁、ワカメ酢のものを食べている。
こんなに生ワカメ食べたの人生初、おかげで体調もバッチリ。
砂浜で動いて、インナーマッスルも鍛えてるからですね。
今年はもう浜辺のワカメ拾いは終わりかもしれないが、ミチヨさんについていけば、次なる獲物も必ずあるはずだ。
ワクワク、ワクワク。

続く




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