10/13 愛蔵版『摩利と新吾 完全版』に浸る秋
おはようございます。
2019年河出書房新社から出た木原敏江先生の『摩利と新吾 完全版』愛蔵版全5巻、何度読み返しても「くぅ~、この世界観たまらんぜよ」となる生涯の愛読書。
月刊誌「LaLa」に『摩利と新吾』の連載が始まった1977年(~1984)、ワタシは19歳。
少女漫画全盛期真っ只中、萩尾望都、竹宮恵子、池田理代子、大島弓子、一条ゆかり、大和和紀、青池保子などなど星の数ほど女流漫画家家が活躍したなかで、ワタシは木原敏江作品がとにかく好きでした。
特にこの『新吾と摩利』は格別で、白泉社からコミックになったときに、買い、その後小学館だったと思うけど文庫化されたときにも買い、5年前の愛蔵版も買い、連載時の雑誌を含めると同じ作品を4回も買っておるのです。
この作品は、木原先生が北杜夫の『どくとるマンボウ青春期』を読み、旧制高等学校を舞台にしたものを描きたいと考えたもの。明治という時代の男ばっかりの寮生活が舞台です。
摩利の母はドイツ人で、摩利がその外見から日本でどのような差別を受けていたか、なんてことも書かれているんですが、骨子は幼馴染で育った摩利と新吾の生涯分かちがたい関係性です。摩利の新吾への想いがメインに描かれている(ように思う)。しかし、周囲の人間関係がとてもとても重要なわけです。と、時代ですね、ちょうどドナルド・キーンの『明治天皇』を読んだばかりなので、いっそうこの時代の空氣感が伝わって来ました。
漫画家さんって絵と物語を作りだすんですから超天才ですよね。
木原作品はこの作品に限らず主人公以外のキャラがユニーク。
今回、また読み直して、新たな氣づきがありました。
ワタシは主人公の摩利と新吾より、志乃さんファンだわ、と。
志乃さんは摩利と新吾の先輩で踊りの家元、学校にも着流し姿で、常に美女を侍らせ、酸いも甘いも知ってるかなり大人な存在。サドっぽく振舞っているがお茶目な部分もあり、実は実は今回分かったんですが義姉を一途に思い続けたがゆえに結婚を先延ばしにしてきたという人物。
やはり先輩の夢殿さんは摩利にぞっこんながら、したたかに政略結婚もする器用さを持ち合わせている。
ちなみに夢殿さんの政略結婚の相手の名が「秀子」、キャー、ワタシの名前、使ってもらえた~、と夜中に小踊りしたショローです。
志乃先輩は関東大震災で義姉の娘をかばって亡くなります。このシーン、すっかり忘れていたんですが、今回「おいおいおんおん」泣きました。そういうジブンにビックリです。
志乃先輩、かっこよかった==。
美しく生きたなぁ、と。
もうひとりのお氣に入りは、こちらはずっと昔から変わらずに好きなキャラで「頭文字」に出てくる青太。この子はなんと16歳で急逝しちゃうので、ちょっとしか登場しないのに深く深くいつまでもこころに残る。
「おてんとうさま、ありがとうごぇました~」というセリフに号泣。
自然の中に溶けて行った少年です。
もうひとりは新選組を描いた『天まであがれ』の土方歳三の恋人だった芙蓉がおばあさんになって登場している。誇り高い摩利が珍しく、この老婦人になついて、新吾への心情を思わず吐露するシーン。
「どんなにばかな思いでも思い続けることで本物になるんですよ」
このセリフもぐっと来ます。
このセリフは摩利と新吾が同時刻に戦死する場面でもう一度使われる。
くぅ~、泣かせるわ、今回もやられました。
涙は清浄機能を持っていますから、ときどき泣くのはよかことです。
さいわいにして泣く材料がないときは『摩利と新吾』を読み返す。
ワタシの大事な引き出しです。
木原先生、素晴らしい作品をありがとうございます。
では、今日もご機嫌元氣に参りましょう。