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今日の夏子さん 2023.10.13.


星空の下

昨日の日中はお外リクエストがなかった。
食べなくなって5日目、歩く体力もなくなったのだろう。

ところが夜12時過ぎ、突如として「外に出せ」と言う。
パジャマのまま、夏子を抱いて庭に出た。
お月様はなかったが、満天振るような星空である、天の川がクッキリ見える。
この際、ゆっくり流れ星でもみてやろうと、ワタシはデッキに腰かけた。
しかし、夏子はスタスタと家の横に回り、道路に向かう。
おっとー、まっちくれ~。
周囲は寝静まり、しんと静まり返っている。
防犯用の砂利を踏む音がびっくりするほど響いた。

夏子はタンタンと階段を降り、スンスンと歩を進める。
右でも左でもなく、正面の道だ。
やむなく後を付いていく。
街灯の下、ワタシの影が異様に大きく見える。
道路側の夜空は街灯のせいで、星が見えにくい。
「なっちゃん、庭に戻ろうよ」
彼女は排水溝の前で立ち止まっていた。
そのまま地べたにうずくまった。
そうだよね、疲れたでしょう。
しばらくすると、からだが冷えてきた。
「なっちゃん、帰るよ」
綿あめのようになった夏子をそっと抱きかかえ、家に戻った。

夜の散歩も体験したかったのだろうか。
いろんな経験をさせてくれるものである。

離れた場所から夏子を観察するタオ

プライベートキャット返上か?

さて、家に戻ってから、夏子はいったんは寝室で眠った。
ワタシの腕の中にすっぽりと入りこむ、いつものように。

3時過ぎ、ちぃちぃの異様な鳴き声で目が覚めた。
どうした?
布団のどこにも夏子の姿がなかった。部屋にも。
急いでちぃちぃが鳴いている方に向かう。
げ、げ、げ。
おりゃ、ちぃちぃが吐き出した。
そして、リクライニングチェアの近くに夏子がうずくまっていた。
あらら~、こっちに来てたの?
「ちぃちぃ、教えてくれたの? ありがとね」
ちぃちぃ、実は夏子の次に意思疎通が図れるオトコなので、こうしたときワタシに異変を伝えてくれる。
まぁ、吐くほど心配しなくてもいいけどね。

3メンズが19歳を見守る図

とても自然な雰囲氣ではないか。
いきり立つ氣力が抜けた夏子は、年相応のおばぁにゃん。
これもまた、いいんぢゃないでしょうか、うふふ。

大丈夫そうなので、ワタシはひとり寝床に戻った。
しばらくすると、カツンカツンと爪音を立てて夏子が布団に入ってきた。
「夜中にずいぶん活動的ですわね」
「ふふん、それがなにか?」といった顔をした夏子は寝る態勢をしっかり整えてから目を閉じた。

夏子がワタシのもとに来たときの様子は下記

えんどう豆の上に寝たお姫さま


アンデルセンの童話に『えんどう豆の上にねたお姫様』というのがある。
あらすじはこうだ。

ある王子様が結婚したいとお姫様を探していたが、なかなか相手が見つからない。そんなある日、ずぶ濡れになった乙女を城に停めることになった。
「わたしはほんとうのお姫様です」
それを確かめるために、王子様はこっそりえんどう豆を1粒置いた上に20枚の敷布団、20枚の羽根布団を敷いたベッドを用意させた。
翌朝、王子は乙女に尋ねる。
「よく眠れましたか」
「なにかがからだに当たって、あざだらけになってしまいました」
これを聞いた王子さまは、この乙女と結婚しました、とさ。

この話は、なぜかワタシの幼いこころに突き刺さった。
夏子はこのお姫様を思い起こさせる。
生まれながらの氣品と威厳、そして繊細さ……。
元ご家族のA男さんが夏子にメロメロだったのもうなずける。

えんどう豆なぞ入れないが、せめてばぁやは毎日リネンを洗濯して、清潔を保とうぢゃないの。
眠れる森の夏子姫。
今日も夏子姫がご機嫌、快適でいられますように。

続く

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