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「猫びより」の夏子さん



連載「まぁるい虹」登場回数12回

雑誌「猫びより」に、2013年から「まぁるい虹」というタイトルで、猫と人の死生観をテーマにした連載をさせていただいている。2023年10月15日にあちら側にジャンプした夏子の登場回数は12回。現時点で61回の連載のなかでの12回はダントツである。夏子の最期を書くにあたり、全連載を読み返してみた。

2.猫は天からの贈り物 2013年9月

Aさんの急逝で残された猫チャパ(8歳)が夏子と改名して1年。私の懐に夏子がすっぽりと入っている写真を見た後見人のKさん「Aと同じことをしていてびっくり」。いつの日か夏子をAさんにお返しする日まで、どうかご機嫌元氣に暮らしてほしいもの。

29.巡り会う猫たち 2018年3月号

ちぃちぃ(雄・9歳)が東京・千駄ヶ谷のマンションから和歌山の「猫楠舎」に引っ越してくることになった。ちぃちぃと夏子(13歳)は数年ぶりに再会する形となる。彼らのために「なにかをする」のではなく、彼らと「なにをしたいか」。『ゲド戦記』の引用……「本当に力といえるもので、持つに値するものは、何かを獲得する力ではなく、受け入れる力だ」

32.こころ揺さぶられて 2018年9月号

私のもとに来て6年目の夏子(14歳)が風邪をひき、往復3時間かけての通院となった。診察自体は予想した範囲のものだったが、車中夏子のことだけに集中した時間が、私と夏子にとって何よりの宝物となった。

43.宇宙のリズム 2020年11月号

コロナによる自粛生活、「停止と抑制が人間を熟成させる」という言葉に勇氣を貰う日々。夏子(16歳)の聴覚がなくなったことに氣づく。しかし、彼女はそれを受け入れて淡々と生きる。今、夏子のそばにいられることも必然。

44.受け継がれるもの 2021年9月号

知らぬ間に外に出た夏子(16歳)が外猫と初バトルをし、数年前からぐらついていた犬歯が抜け、前脚を捻挫した。以降、2年前に亡くなったモンが乗り移ったかのように担力を増した夏子、血のつながりはなくとも猫の森の中で受け継がれるものがあるらしい。

46.新たな死生観の予感 2021年1月号

16歳夏子のてんかん発作を機に、彼女との残り時間が有限であることを意識する。仏教伝来以前の日本には「死」という概念はなかったという。猫のように「今ここ」に生きることを、現代人は今こそ学ぶときではないか。

49.ニュートラルを探る 2021年7月号

コロナで自宅時間が増えた影響はヒトと猫にも及んでいる。他猫との共同生活を卒業した夏子は、ひとり母屋で暮らすようになり、私との間に毎晩交わされる儀式が確立した。両者のからだが反応し合い、了解点を感知する。理解することが重要なのではなく、感知することが大切なのだ。

51.ゆっくり猫時間 2021年11月号

コロナ禍で、ゆっくりと猫たちと過ごす時間が流れる。星野道夫と宮沢賢治の言葉がじんわりとこころに沁みてくる。煩わしい世俗から身を置き、透明な風が吹き渡る宇宙に浸りたくて、星野の写真集を眺め、賢治の作品を読むのだ。読書するそばには必ず夏子がいる。

54.避難体験を経て考えたこと 2022年5月号

年明け早々トンガで起こった地震による津波警報で、猫たちと一晩蔵に避難した。天袋に逃げ込んだ新入りのヤムヤム以外の5匹を蔵に移動させる。キャリーケースのなかで不安げに鳴く猫たちとは一線を画した最年長の夏子。彼女は自由に蔵の中を探検し、水を飲み、トイレを使っていた。これぞ夏子の矜持。

56.次のステージへ 2022年9月号

あることをきっかけに和歌山の「猫楠舎」を出て、新天地を目指す決心をする。夏子のてんかん発作も後押しとなり、移住決意は確固たるものとなる。いつもここぞというときに、背中を押してくれるのが夏子という猫。

58.猫連れ大移動 2023年1月号

和歌山は那智勝浦から福岡の糸島まで約870キロ、愛車に猫6匹を乗せての大移動。その途中、最年長夏子はキャリーケースから出て助手席に座り、行く手を見つめていた。

61.夏子とシンクロする 2023年秋号

排泄困難になった夏子。かたや私は口の中に水泡ができ、かつて体験した猫たちとのことを思い出し、夏子の体調ともシンクロしているのでは、と考える。逆もまた眞なり、私がご機嫌元氣でいることが夏子にシンクロするはず。数日後夏子の復活によって、ことの確信を得たワタシ。

13回目の登場夏子

夏子との11年間が、このような形で「猫びより」に連載されていることに改めて感謝する。今、次号の原稿を書き始めるにあたって、これまでの連載を読み返し、夏子によって氣づかされたことの多さに少々動揺してしまった。
彼女は偉大なメンターだったのだ。
夏子の次なるステージに至る過程を、一度にまとめようとしても到底無理だ。この際、焦らずポツリポツリ、ゆっくり熟成させながら書いていこう。

※近々、夏子写真館をアップ予定。



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