さる

ロボット人間と動物人間の話(未来の仕事論)

昔はこの世界に動物しかいなかった。
たくさんの時が流れ、いつしか動物は道具を使える「動物人間」になった。

「動物人間」は感情を大事にする。
眠いときは寝る、食べたいときは食べる。
道具を使えることを除けば、動物人間は動物と大差なかった。

時が経ち、動物人間の中から金貸しをするものが現れた。
そのルールを知った一部の動物人間はたくさんの食べ物や時間を得るために頭を使った。
彼らは「ロボット人間」になった。

ロボット人間は現在よりも未来を意識する。
そんな彼らは動物人間よりもたくさんのものを所有するようになった。
しかし、同時にたくさんの不安を抱えることになった。

ロボット人間はかつての動物人間をうらやましく思うようになった。
けれど、ロボット人間は動物人間には戻れなかった。
ロボット人間は「ロボット」になってしまった。

ロボットが増えた世界ではロボットがロボットを扱うようになった。
不要なロボットは新しいロボットに交換された。新しいロボットもすぐに別の新しいロボットに交換された。

彼らは無目的に再生産を繰り返す巨大な工場になっていた。

他方で動物人間は目の前のことに夢中で世界の変化にすら気づかず必死に生きていた。動物人間は気づけば動物になっていた。

この世界から人間はいなくなり、動物だけの世界に戻っていった。