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秘密

+完全とは言わなくても記憶を取り戻したので、内容を記憶に沿ったものに書き正しました。


たまたま流れてきた動画に触発されて、BIGMAMAの秘密をウォークマンで聴いた。

いつでも羽ばたいて行ける気でいた。それには、1匙程度の勇気のみで大丈夫だと思っていた。
大倉忠義の手から零れ落ちた自分と過ごした欠片は、大倉忠義の未来に溶け込めるだろうと考えていた。でも、実際は逆だった。私の手から零れ落ちたほぼ全ての記憶に、ずっと大倉忠義は記憶にいたらしい。「一生結婚しないで1人で生きていく」そう断言する位には。

漸く取り戻した彼やその時期に合った出来事に関する記憶を曲を聴きながら当てはめていった。

忠義くんとの大切な記憶だったはずなのに、よりによって私の背中に生えていた記憶という羽根を自分で毟りとっていた。理由は単純だった。そうでもしないと、大倉忠義という1人の人間との未来を諦められなかったから。忠義くんとその時期に合った出来事に関する記憶に鍵をかけることだった。

何重にもかけた鍵は、いつのまにか錆びかけていた。
その時に聴いていたらしい曲も再生していたらしいMVにも鍵をかけまくっていた。

BIGMAMAのライブに行く前、肩に私のバンドタオルをかけ直してくれた人がいる。「そそっかしいな」と一言、ぽそりと落とされた言葉と優しい手にほわほわした気持ちになった。ライブ会場のエレベーター前で、私に駆け寄ってくる人を手で静止して守ってくれた人がいる。その時、記憶を失っていた私は訳が分からなかった。
でも、分かっていた。あの優しい手とあの優しい声と私を守ろうとしてくれるのは、忠義くんしかいない。
BIGMAMAのライブは正直部分的にしか覚えていない。
あの時、駆け寄ってきた人に恐怖を覚えた。訳が分からなかったし、何かに巻き込まれていると思った。
ただ、そのライブで優しくタオルをかけてくれて、私を守ってくれる人に会いたいと思った。話したいと思った。
自分にとって嫌な記憶も良い記憶も、いつか取り戻さなくちゃいけない記憶なのだと察した。

とある動画を見て、ふと気づいた。Tシャツに緑で隠された部分には、私の知っているデザインがあるはずだし、その姿を知っているし会っている。それなのに、記憶がない私は一切気付くこともなく日々過ごしていた。

「もう既に会っているのに、気付かないの?」
そんな声がぽんっと投げかけられても、首を傾げるしかない。
だって、あんなに優しくて温かい手の人は、大倉忠義しか知らないから。



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